土地の魅力を中心に人と人とをつなげる、三重のワーケーション

  • 写真:恩田弘樹
  • 文:黒田祥平

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“お伊勢さん”の愛称で親しまれる伊勢神宮を筆頭に、無二の文化を育み、いにしえから多くの人が足を運ぶ三重県。話題のワーケーション先としても、独自の魅力を備えている。

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英虞湾に浮かぶ小島と幾重にも重なる半島を、標高140mから眺める志摩市の横山展望台。眼下に広がるリアス海岸の美しさに息を呑む。

世界各地を転々としながら執筆する小説家のように、旅をしながら仕事に取り組むという「ワーケーション」の注目度が高まっている。三重県には、訪れた地の景観や食事を楽しむだけでない、独自のスタイルやプランを提案している施設がある。その核となっているのが“人と人とのつながり”だ。

三重県南部の尾鷲(おわせ)市にある登録有形文化財建物を活用したコワーキング&シェアオフィス「シェアスペース土井見世(どいみせ)」では、訪れるゲストと住人とをマッチング。鳥羽のヴィラ「Anchor. 漁師の貸切アジト」は漁村というロケーションを活かし、漁師と気さくに交流しながら牡蠣やワカメなどの養殖現場を目の当たりにできる。そして、津市の美杉町では町全体で来訪者をもてなし、大自然の中で癒やしを与える森林セラピーを実施している。どの施設も、一期一会のつながりを重要視。新たな出会いが生まれることで、個々のもつ経験値が2倍にも3倍にもなる。こうしたワーケーションを通じて三重の町と人に魅了され、移住や二拠点生活という新しいライフスタイルを実現した人も多いそうだ。

「また会いたい、あの人に」。そう思わせてくれる温かな土地で仕事をすれば、豊かな発想を生むクリエイティブな力が得られるはず。三重でのワーケーションは心身ともにリフレッシュさせてくれるだけでなく、都市生活者に新しい気づきを与えてくれるのだ。

次頁からは、お薦めのワーケーション施設を紹介。ぜひ訪れて、魅力を体験してほしい。

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シェアスペース土井見世/尾鷲市

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豊田宙也さん(左)、木島恵子さん(右)はともに東京からの移住者。シェアスペース土井見世を運営しつつ、豊田さんは「トンガ坂文庫」という本屋を営み、木島さんは市内に点在する空き家を活用する事業に従事。尾鷲の発展に尽力している。

熊野灘が広がる港町の尾鷲市に、1931年に建築された登録有形文化財「見世土井家住宅」。アール・デコ様式と数寄屋座敷とが調和した空間は、尾鷲を代表する山林経営家であった見世土井家の暮らしをいまに伝えている。和風モダニズムなその建造物を、ワーケーションの拠点となるコワーキング&シェアオフィスとして再生。日本庭園を眺められるアットホームな雰囲気の中、落ち着いた気分で仕事に取り組める。

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大きな窓からは自然光が差し込み、緑豊かな日本庭園を眺めながら仕事ができる。作業に疲れたら縁側に移動して休憩する人が多いそう。

運営は、NPO法人おわせ暮らしサポートセンターが行っている。メンバーである木島恵子さんと豊田宙也さんは口を揃えて「行き着くところは人」と言い、ワーケーションで訪れた人に地元住民を積極的に紹介している。

「尾鷲は漁業に林業、飲食業と、あらゆる職の方々がいます。彼らと都会で働く方をつなぐことで起こる化学反応が見たくて」と木島さんが言えば、「地元の方々は人間関係が固定化しつつあるので、外から来られた人と話すのが楽しみなんです」と豊田さんも語る。過去には、型染め職人とデザイナーのユニットを近隣の居酒屋に招いた際、その店の主人がのれん制作を依頼したケースも。また、ワーケーションで足を運んだグラフィックデザイナーを飲食店につなぎ、ロゴやショップカードをつくってもらったケースもあるという。

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左:1階の大広間はコワーキングスペースとして使え、縁側から日本庭園を眺めながら仕事ができる。2階にはワークショップに対応する広々としたスペースを用意。 右:エントランス横の洋間にはゆったりとしたソファを配置。昭和ロマンの息づかいが想像力を掻き立ててくれる。

「旅先で仕事をするというワーケーション本来の目的に加え、尾鷲市にある仕事をするという新しい働き方を実現したい」と木島さん。「ハシゴ酒の文化が古くから根付き、地元の人と酒を酌み交わすことでネットワークが広がるのも尾鷲の魅力です」と豊田さん。そこにある仕事のために訪れる、その地に暮らす人々に会いに行くために戻りたくなる。都会では決して味わえない還流型の社会が、この小さな町から生まれつつあるのだ。

シェアスペース土井見世

住所:三重県尾鷲市朝日町14-2 
TEL:0597-49-0011(NPO法人おわせ暮らしサポートセンター)
営業時間:10時〜17時(シェアオフィスは24時間営業)
料金:1時間¥500、1日¥1,500〜
www.doimise.com
※宿泊は、近隣の古民家を改装した一棟貸しの民宿(1泊¥6,000〜)などを紹介可

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Anchor. 漁師の貸切アジト/鳥羽市

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「食、文化財、観光と、どれも魅力的に映りましたが、移住の決め手は、よそ者の僕を受け入れてくれた三重の方々の寛容な人柄にありました」と行野慎平さん。鳥羽に移り住んで2020年にこのヴィラを開業。現在、鳥羽市街にホテルとイベントスペースが一体化した新しい施設の立ち上げを準備中。

内宮・外宮を中心に125社から成り立つ伊勢神宮を擁し、三重を代表する観光名所として知られている伊勢志摩国立公園。風光明媚な湾の入り江に位置する「Anchor.(アンカー)漁師の貸切アジト」は、水産会社の社員寮をリノベーションした一棟貸しのヴィラだ。プロジェクターを設置した約85㎡のリビングスペースだけでなく、すべての宿泊スペースがオーシャンビュー。眼前の港で静かに響く波と船の音に耳を傾けながら、漁師町ならではのムードあふれる空間で仕事に取り組むことができる。

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パステル調の配色を基調とし、癒やしの時間を与えてくれる客室。どの部屋からも窓の向こうに海辺の景色が広がる。

ヴィラの仕掛け人は、2019年にこの町へ移住してきた行野慎平さん。バックパッカーとして世界を旅した経験から、自然を活かしたアクティビティや体験をゲストに提案している。

「都市・文化遺産・遺跡と、各国のあらゆる場所を放浪してきたのですが、特に自分の中で印象深かったのが、自然を楽しむ観光だったんです。帰国してから『日本の自然美はこんなにも素晴らしい』と再確認し、この景色を多くの人に伝えたいと考えました」と行野さん。牡蠣やワカメの養殖を体験するため漁船でクルージングしたり、夏場にウミホタルの生態を観察したり、船に乗ってフィッシングを楽しんだりと、地元の漁師と二人三脚で企画した多彩なコンテンツを用意している。普段の都会生活ではなかなか接する機会のない、現役の漁師との交流も魅力のひとつだと語る。

「漁師さんと話をすることで、ふだん口にしている海産物がつくられている工程や、山の恵みが海の恵みとなる環境のことも学べます」

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左:養殖体験では牡蠣が連なるロープを握り、イカダに乗って仲間との記念撮影が可能。行野さんと漁師さんとの笑いを交えた掛け合いも必聴。 右:夕食はエントランスで行うバーベキューが人気。釣り上げたばかりのアジを手始めに、新鮮な魚介類を炭火で焼いて味わえる。

同じ職場の仲間とともにここを訪れ、一緒に海へと繰り出す。貴重な時間を共有することで相互理解が生まれ、身近な同僚がベストパートナーになる可能性も。チームビルディングに不可欠な一体感が創出できるかもしれない。

Anchor. 漁師の貸切アジト

住所:三重県鳥羽市浦村町1558-5
料金:5名まで1泊¥60,500、1名増えるごとに¥5,500を追加(最大宿泊可能人数は29名まで。養殖体験のクルージングは2〜4名で¥15,200)
※下記サイトから予約可
https://anchorajito.com

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美杉リゾート/津市

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芝山隆史さん(左)は以前、体調を崩したのを機に美杉町を訪れ、美しい自然に惹かれて三重の市街地との二拠点生活を送っている。美杉町に生まれ育った中川雄貴さん(右)はホテルを経営する一方で、地元の名水で仕込む「火の谷ビール」と名付けたクラフトビールの醸造も行っている。

町名の通りの美しい杉林に囲まれ、透明度の高い清流が心を癒やしてくれる津市美杉町。日本の原風景がいまも残るこの地には、大型のリゾートホテルだけでなくコテージや農家民宿が点在する。これまでは個々に予約する必要があったが、そのわずらわしさを解消するため老舗ホテル「美杉リゾート」が先頭に立ち、町全体を宿泊スペースと捉えた“Inaka Tourism推進協議会”を2016年に発足。多彩な宿泊施設をワンストップで1泊ごとに選択できるようになった。

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左:築70年の古民家を改装した「慈雲庵」。いろりを囲んで酒を味わったり、縁側で寛いだりと、和の趣を肌で感じられる。 右:美杉リゾートが運営するコテージには、宿泊者だけが入れる温泉を用意。仕事で疲れた身体をリラックスさせてくれる。

協議会代表の中川雄貴さんは言う。「ゲストから直接ご要望をお聞きするので、たとえば仕事に集中したい初日はホテル、静かな時間を過ごしたい2日目は農家民宿に泊まるプランも組めます」。つまり一人ひとりの理想とするワーケーションのスタイルに沿ってプランを構築してくれるのだ。また、緑豊かなロケーションを活かした「森林セラピー」が体験できるのも、美杉町ならでは。農家民宿の「慈雲庵(じうんあん)」を営みながら、森林セラピストとしても活動する芝山隆史さんはこう語る。「森林浴で得られるリラックス効果を感じてもらいつつ、間伐されずに残っている森の現状についてもお話しします。自分自身をリセットし、町の直面する問題も考察する。企業にとってはメンタルヘルスや人材育成につながり、個人にとっては豊かな暮らしを送るためのヒントになればうれしいですね」

その他、禅体験、林業体験、語り部とともに歩く伊勢本街道の歴史巡りなどのアクティビティも実施。夜は、キッチンカーで運ばれ地元の猟師が調理するジビエ料理に舌鼓を打てる。

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鳥の鳴き声をBGMに、風に葉がゆれる緑の中を歩く森林セラピー。心拍数を適度にコントロールしゆっくり進んで健康維持を促す。

都会の喧騒から解放されて出会うのは、自然・食・文化の多方面から美杉町を愛するプロフェッショナルたち。この町は心身を健やかにしてくれるのと同時に、ワーケーションを通して普段の生活を見つめ直す機会も与えてくれる。

美杉リゾート

住所:三重県津市美杉町八知5990 
TEL:059-272-1155 
料金:1泊¥14,650〜(2名1室利用時の1名料金)森林セラピー¥3,960(4名以上で催行、1名分)
www.misugi.com

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土地のチカラを引き出し、三重の魅力を伝えていく


<志摩市>

複雑に入り組んだ海岸線をもち、市全域が伊勢志摩国立公園に指定されているSDGs未来都市・三重県志摩市。伊勢えび、あわびなどの豊かな海産物に恵まれ、古くは食材を都に献上した「御食国(みけつくに)」と呼ばれたとも。伝統的な海女漁や真珠養殖などでも知られるように、古くから人と自然が共存してきたまちである。

NEMU RESORT

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左:客室から飛び出して自然の中で仕事をすれば、いつもと違う新しい発想が生まれるかも。 右:刻々と色を変えながら、山の稜線にゆっくりと沈んでいく、感動的な夕陽が眺められる。

日没前に30分だけ現れる“マジックアワー”と呼ばれる時間を、ぜひ体験してほしい。美しい夕陽に染まる風景は、伊勢志摩ならでは。統括支配人の山本正通さんは「夜になると満天の星空が広がり、天然のプラネタリウムが堪能できます」とリコメンドする。

NEMU RESORT

住所:三重県志摩市浜島町迫子2692-3(伊勢志摩国立公園内)
TEL:0599-52-1211
料金:1泊¥9,000〜(3泊以上のワーケーションプラン) 
www.nemuresort.com

志摩スポーツコミッション

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左:コミッションでは自転車やヘルメットのレンタルだけでなく、サポートカーでの伴走もしてくれる。 右:シーカヤックなども体験可。身体を動かし、日頃のストレスを発散したい。

体験者の満足度が高いのが、英虞湾を眺めながらのサイクリングツアー。「穏やかな内海、荒々しい外海と、性質の異なる海の様子を観察するのも楽しいです。海と灯台を眺めながら海岸を散歩するだけで、心身ともにリフレッシュできます」と、スタッフの中林伸子さん。

志摩スポーツコミッション

住所:三重県志摩市阿児町鵜方2944-254
TEL:0599-44-4450
https://shima-sc.or.jp

<大台町>

人が自然と共生しながら持続可能な暮らしを目指すモデル地域として、生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)に認定されている三重県大台町。大台ケ原を水源とする宮川は、国の河川水質調査で何度も日本一に輝き、鮎やわさびなど清流の恵みをもたらしてくれる。最上流部には日本三大峡谷のひとつに数えられる秘境・大杉谷がある。

奥伊勢フォレストピア

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左:豊かな自然の中に佇む一棟貸しのコテージで、仲間と一緒にワーケーションができる。 右:温泉浴と森林浴が楽しめる露天風呂など、温浴施設も充実。心身ともに癒やしをくれる。

川を挟むようにコテージとキャンプ場をもつ広々とした施設。「有名な観光地ではありませんので、紅葉シーズンを除けば奥伊勢の大自然を独り占めできます。なかでも上流にある滝頭不動滝は落差が30mもあり、迫力ある姿が望めます」と、副社長の寺添幸男さんは語る。

奥伊勢フォレストピア

住所:三重県多気郡大台町薗993番地
TEL:0598-76-1200
料金: 1泊¥22,000〜(コテージ1棟貸切、5名まで利用可) 
https://okuiseforestpia.com

Verde大台ツーリズム

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左:宮川で水上散歩を楽しむなど、アウトドアフリークの間で人気を集めるSUPも体験可能。 右:宿泊はウッドデッキで寛げる一棟貸しのゲストハウスなど。グループでの滞在もお薦め。

大台町は名古屋や大阪から150分ほどの距離にありながら、自然のフィールドを思う存分、楽しめる町。「SUP、カヤック&カヌー、登山、サイクリングなどあらゆるアクティビティが満喫でき、訪れる人の休日を特別なものにしてくれます」と、代表の野田綾子さんは話す。

Verde大台ツーリズム

住所:三重県多気郡大台町下真手308
TEL:080-4840-7315
https://verde-odai.co.jp

三重県ワーケーションウェブサイト

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https://workation.pref.mie.lg.jp
Instagram:@mie_workation
Twitter:@mie_workation

11月19日(金)、20日(土)開催
「ワーケーション体験 in 三重県 オンライン説明会」参加者募集

三重県内でワーケーションを体験したい社会人の方を募集しています。来年2月下旬までの間で、体験エリア・日程をそれぞれアレンジしてワーケーションを体験できます。興味のある方はオンライン説明会にご参加ください。

●開催日時:2021年11月19日(金)19:00〜20:00、20日(土)11:00〜12:00
●説明会プラットフォーム:Zoom
●プログラム
・三重県ワーケーションPV放映
・「Pen」福川編集長トーク「ワーケーションの可能性」
・三重県の魅力紹介
・三重県のワーケーションスポット紹介
【19日(金)】シェアスペース土井見世 、Anchor. 漁師の貸切アジト、美杉リゾート
【20日(土)】NEMU RESORT、Verde大台ツーリズム、菰野町観光協会
・ワーケーション体験の説明(今後の進め方、取材協力費等)
・質疑応答
●参加費:無料
●参加条件:社会人(企業・団体に属している方、フリーで活動されている方など)でワーケーションに関心のある方。
●応募締め切り:2021年11月15日(月)23:59
●応募方法:必要事項をご記入のうえ、「応募する」ボタンを押してお申し込みください。

オンライン説明会(Zoom)の参加方法
※本説明会は、オンライン(Zoom)で実施されます。あらかじめZoomアプリのインストールをした上での参加を推奨します。
※インターネット環境、カメラ、マイク付のパソコンもしくはスマートフォンが必要です(パソコンでの参加推奨)。
※説明会各回前日にご登録いただいたメールアドレスに参加用URLとパスワードをお送りいたします。
※開始時間10分前になりましたら、URLにアクセス可能となります。

応募する

説明会に関する問い合わせ先/株式会社CCCメディアハウス マーケティング部
webpresent@cccmh.co.jp

問い合わせ先/三重県雇用経済部三重県営業本部担当課 TEL:059-224-2386

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