読んで観て、いまこそ三国志にどっぷり浸ろう

  • 文:Pen編集部
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三国志は魅力ある物語ゆえ、小説、マンガ、映画とさまざまに表されてきた。初めての人はぜひ、愛読していた人は改めて、その魅惑の扉を開けてみよう。

BOOK〜

『三国志演義』

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羅貫中 著 井波律子 訳 講談社学術文庫 全4巻 各¥1,976

群雄割拠の躍動が伝わってくる、「演義」の手にとりやすい現代語訳。

中国の白話(口語)長編小説という分野で最高峰に位置付けられる『三国志演義』。本邦現代語訳としては長らく小川環樹訳と立間祥介訳が親しまれていたが、両訳ともいまだ文語調が残り、若い層には難しくなってきた。そこで刊行されたのが、非常にこなれて段違いに読みやすくなった井波律子訳のちくま文庫版で、本書はそれに加筆訂正と新たな解説を加えたもの。

『正史 三国志』

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陳寿 著 裴松之 注 今鷹真・小南一郎・井波律子 訳 ちくま学芸文庫 全8巻 各¥1,620

すべてはここに始まる。原点に迫るなら「正史」を読むべし。

晋王朝公認の歴史書として成立した陳寿(ちんじゅ)著の『三国志』。歴史観としては後漢から魏、魏から晋への継承を正統とする。南北朝時代の裴松之(はいしょうし)により陳寿の採用しなかった異説や伝承を取り入れた詳細な注が付いて、現在のかたちに。日本では唯一の現代語訳で、過去に筑摩世界古典文学全集の一部として刊行された書籍の文庫版。人名索引が充実。

『曹操 魏の曹一族』

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陳舜臣 著 中公文庫 上・下巻 各¥700

冷徹なまでの合理主義者を、あえて主人公に据えた意欲作。

三国志を題材にしたものとしては五斗米道と仏教に光を当て、曹操を肯定的に描写した『秘本三国志』や、王道とも言える『諸葛孔明』を著した陳舜臣が、改めて曹操とその一族を主役に据えた作品。群雄が覇を競う乱世に新しい秩序を打ち立てようとし、梟雄(きょうゆう)とも呼ばれ、よくも悪くも捉えられてきた男の生涯を描く。

『英雄三国志』

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柴田錬三郎 著 集英社文庫 全6巻 各¥864

講談を聞いているかのような、特有の軽妙な乗りが魅力。

「柴錬」の愛称で呼ばれた彼の作品は『眠狂四郎』のようなニヒリズムとエロティシズムからなるものだけではなく、『真田十勇士』のような冒険活劇、さらには本書のような講談調の読み物にまでおよんでいた。諸葛亮が主役と言ってもよいほどその天才ぶりが強調され、他の重要人物の影が霞んでしまうほど。エンタメ要素を追求した作品と言える。

『三国志』

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吉川英治 著 講談社文庫 新装版 全5巻 各¥1,188

横山マンガの原作になった、歴史小説の大家による名作。

基本的には『三国志演義』に沿いながら、方術・妖術の類は極力避けるよう工夫を施し、随所に作家ならではの鋭い考察が加えられた。歴史小説の王道として仕上げられ、日本での小説の三国志としては最も多くの読者を獲得。三国志のイメージを決定づけた作品だ。横山光輝のマンガもこの作品を原作としており、時代を超えて読まれ続ける不朽の名作。

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〜COMIC〜

『三国志』

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横山光輝 著 潮出版社 新書版全60巻 各¥453 ©光プロ╱潮出版社

巨匠のペンタッチが静かな感動を呼ぶ、コミック界の金字塔。

『鉄人28号』や『ジャイアントロボ』『仮面の忍者赤影』などでも知られる漫画界の巨匠が手がけた長編マンガ。吉川英治の『三国志』を踏襲している。昨今のマンガに比べると吹き出しがどれも短いので、意外と短時間で読破できる。表紙の画を見るだけで三国志の世界に浸れる、日本のコミック界の金字塔的存在だ。

『蒼天航路』

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李學仁 原作 王欣太 漫画 講談社漫画文庫 全18巻 各¥832

ソフトに描き出された、諸葛亮を中心とした人間模様。

歴史を題材にした作品を多く手がける作者が、諸葛亮を中心に描く。劉備との出会いである「三顧の礼」よりはるか前、諸葛亮の幼き日から話は始まる。本来は出番の遅い人物を前倒しで登場させ、大いに活躍させるなどしているが、全体としては演義と齟齬(そご)のない内容に仕上げている。

『諸葛孔明 時の地平線』

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諏訪 緑 著 小学館文庫 全8巻 各¥689

ソフトに描き出された、諸葛亮を中心とした人間模様。

歴史を題材にした作品を多く手がける作者が、諸葛亮を中心に描く。劉備との出会いである「三顧の礼」よりはるか前、諸葛亮の幼き日から話は始まる。本来は出番の遅い人物を前倒しで登場させ、大いに活躍させるなどしているが、全体としては演義と齟齬(そご)のない内容に仕上げている。

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〜MOVIE〜

『三国志 Three Kingdoms』

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監督/ガオ・シーシー 出演/チェン・ジェンビンほか 公開/2010年 販売/エスピーオー 全9巻(Blu-ray3枚組) 各¥5,460(OPSB-S103~S111)

製作に6年の歳月を費やした、「三国志」ドラマの決定版。

中国で放映が始まるや、視聴率ランキングを独走し続けた大河ドラマ。プロジェクト発足から脚本完成までに4年、撮影と編集に2年の歳月を費やし、総製作費は25億円という巨額が投じられた超大作。個々の人物描写もていねいに描かれているので、どこから見ても楽しめるように仕上がっている。

『RED CLIFF』 Part Ⅰ・Ⅱ

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監督/ジョン・ウー 出演/トニー・レオンほか 公開/2008年、2009年 販売/エイベックス・ピクチャーズ Part Ⅰ・Ⅱ/Blu-ray 各¥5,076(AVXF-29158、AVXF-29325)©2008, Three Kingdoms, Limited. All rights reserved.

製作費100億円のアクション・アドベンチャー超大作。

『男たちの挽歌』や『フェイス/オフ』などを手がけたジョン・ウー監督が『M:I-2』×『パイレーツ・オブ・カリビアン』のチームと組んだ三国志映画の大作。諸葛亮役に金城武、周瑜役にトニー・レオンなど豪華キャストを迎え、歌舞伎俳優の中村獅童も参加。赤壁の戦いの前日譚を描いたパートⅠと、戦いそのものを描いたパートⅡの2巻から成る。

『人形劇 三国志 全集』

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販売/NHKエンタープライズ 全5巻 各巻DVD3~4枚(23558AA~23562AA) 価格/¥8,100~¥10,800

生命を吹き込められた人形劇のDVDが、待望の再リリース!

『人形歴史スペクタクル 平家物語』と並ぶ人形美術家・川本喜八郎の長編代表作。NHK総合テレビで1982年10月から84年3月まで放映。立間祥介訳の『三国志演義』をもとに「桃園の誓い」から諸葛亮の最期までを描く。人形の素晴らしさはもちろん声優には谷隼人や森本レオ、主題曲は細野晴臣を起用するなど、同局が力を込めた作品。懐かしむファンも多く、このほどDVDが再リリースされた。

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※この記事はPen2019年8/1号「わかる、三国志。」特集よりPen編集部が再編集した記事です。