行かなくても感じられる、特別な新しい旅体験とは?

  • 文:岩崎香央理

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奄美の海の浅瀬に定住しているウミガメ。優雅に泳いでいるように見えて人間の泳ぎでは追いつけないくらい速い。ダイバーを先導するように泳ぐその存在の優雅さに撮影陣も惹かれた。

旅をすることが難しい現在、「驚き」や「特別な体験」はどのようにして味わうべきか?映像ディレクターの和田健太郎さんとホテルプロデューサーの龍崎翔子さんに訊く。

自由に移動できない状況が続くなか、旅の達人であるおふたりにとって“特別な体験”とは?

龍崎 旅の定義ってけっこう難しくて、一般的にクルマや電車に乗って100km以上離れれば、それは旅になると思うんですけど、その境目はどこにあるんだろう?と思っていました。私は以前、毎週のように東京と京都を新幹線で往復していましたが、それが旅なのかというと、ただの移動でしかない。いま思うのは、日常のルーティンや普段の動きから逸れた冒険に出ること自体が、旅なんだろうなって。たとえば、いつもは道のこっち側を歩いて通勤するけど、今日はあちら側を歩いてみようとか。すると、ここにこんな喫茶店があったんだと、気づくことができるんですよね。

和田 僕は日本だけでも全都道府県を撮影で旅しましたが、それが逆に日常だったので、正直、行った先で既視感を感じることも多かったんです。しかし、新型コロナウイルスの蔓延で出張も減り、バイクを買ってみた。夜の東京を走ったり、普段は電車で行く場所をバイクで移動していると、よく道を間違えるんです。この道を行くとここへ出るんだとか、ずいぶん東京を再発見して、いま僕は東京を旅していると感じています。だから今回、日本にあるつの世界自然遺産をVRで撮る「日本の魅力、再発見 〜Color of Japan〜 presented by American Express」を制作し、改めて地方を体験できたことに、とても感動しましたね。

龍崎 いつもと違う選択をすると新しい出会いがありますよね。同じ道を違う乗り物で行ったり、違う関わり方で同じ目的地に行ってみたり。ちょっとしたことで世の中は非日常になる。自分の眼差しをどこに置くかによって見える世界が変わり、脳が刺激されて旅する感覚になれる。実際にやったことがあるんですけど、外国人旅行者が多い国内のホテルで、日本語がわからないふりをして英語で話し続けてみたんです。すると、かつてない対応をされたりして、脳汁が出るような特別な体験を味わえました(笑)。旅ってそもそも、未知の世界に向かって手探りしながら歩みを進める、その精神的なあり方こそが旅だと思う。VRに関連するのですが、ゲームに没入することも旅っぽくないですか?その世界にどんどん引き込まれ、次になにが起きるんだろうとワクワクしながら動くことは、旅的なプロセスだと思う。

和田 いまは誰でもスマホできれいな映像が撮れるし、いい感じの360度回り込める動画も世の中にあふれている。今回の動画では美しい景色だけを取り出して羅列するのではなく「自分が旅人として映像の中で歩き続けること」をテーマにしました。もちろん、絶景ポイントも紹介しながら。たとえば、海の中と山の上とをつなぐ動線を補完して旅人の視点にしたり。一瞬にして引き込まれる映像の力と、リアルな旅の没入感とをイメージして撮影しました。

龍崎 リアルな観光のあり方が変わり、絶景ポイントを観に行くことが旅の第一義ではなくなってきた。ネットでノートルダム大聖堂の中がどうなってるのかすら、詳しく知ることができる時代だから現地に行くことよりも、自分がその世界に入り込む感覚の方を強く求めている。旅行に行きたい気持ちって、自分の周囲の空間を着せ替えたい欲求に近い。映像に没入できるVRが、その欲求を満たしてくれるかもしれないですね。

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完成したVR動画をご覧になった感想は?

龍崎 前からこういうのがあったらいいなと思っていました。世界自然遺産って、旅のチョイスとしてシブいですよね。天候に左右されるし、装備もハードだし、自然環境に強い興味と知識がないと選ばない目的地だったりします。私もどちらかというと旅先はシティ派だったので、今回、世界自然遺産の旅というハードルをVRが低くしてくれたと思います。いままでのイメージよりも真に迫った理解ができて、次にもし現地へ行った時には、VRではこうだったけど実際のテクスチャーはこうなんだ!とか、二度楽しめそうだなって。旅の間口を広げてくれる気がしますね。

和田 ただ美しいだけじゃない、よりリアルな自然の息づかいみたいなものを感じてもらえるよう、立体的な音と映像にこだわりました。いつか行きたい旅のリハーサルというか、お試し体験として観るのもいいかもしれない。

家にいながらにしてヴァーチャルで絶景を旅し、特別な体験ができるんですね。

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都市部では弱々とまたたく北極星。光害の無い小笠原では、とても強く輝いていてこの星を指針に航海をしていた過去の人々とつながれた気がした」と和田さん。

龍崎 こうしたVRをきっかけにして実際にその場所へ足を運ぶかもしれないし、逆に、行ったことある人がこの映像を体験して、旅した時の気持ちが甦るかもしれない。二元論的ではなく、リアルとヴァーチャルは入り混じっていて、やがてひとつに融合していくものだと思うんです。

和田 自分にとってどんな景色が特別だったかを思い返すと、僕の場合、それは必ず感情とひもづいています。その時に自分が抱えていた苦労やつらさ、痛みのようなものが、美しい風景と融合して記憶に残っていたりする。決して、ただ絶景に行ったという事実だけが特別ではないんですよね。

龍崎 日常の中に非日常の扉はあって、旅はもはや、多大なお金と時間を使って行くものだけじゃない。物理的に移動ができない、いまの状況でも、自分の心と脳に栄養を与える特別な旅は可能なんだと思います。

和田健太郎●1987年、福岡県生まれ。映像ディレクター。日本大学藝術学部映画学科卒業。Nest+Visualに所属し、広告、MV、映画などを制作しながら、プロジェクションマッピングやVRなどデジタルコンテンツを幅広く手がける。おもな作品に、PUMAブランドムービー「MY PUMA」、BSフジ「つじつま」など。

龍崎翔子●1996年、京都府生まれ。ホテルプロデューサー。2015年にL&G GLOBAL BUSINESS, Inc.を設立。「HOTEL SHE, KYOTO」をはじめ4つのホテルを手がける。20年、次世代の観光人材を育成するツーリズム・アカデミー“SOMEWHERE”を設立。コロナ禍においてもホテルを舞台にしたさまざまな取り組みを行う。

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Pen Online 連動企画

日本の魅力、再発見 〜Color of Japan〜 presented by American Express

Pen Onlineにて、日本の世界自然遺産である奄美大島、屋久島、小笠原諸島、白神山地、知床の美しい自然の魅力を切り取ったスペシャルVR動画を配信中。本誌同梱の付録は、その動画が見られるスマートフォン用のゴーグル。驚きに満ちた 特別な体験を身近に感じてほしい。

問い合わせ先/AMERICAN EXPRESS www.americanexpress.com/ja-jp

※トップページに掲載している「Color of Japan」本編映像

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