アーカイブ室に眠る、オニツカタイガーの幻の名作シューズ物語

  • 写真:加藤佳男
  • 文:小暮昌弘(LOST & FOUND) 

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日本のスポーツシューズの歴史とも言える名靴が、神戸のアシックス本社に残されている。1950〜70年代製作の靴から、ブランドの真髄を知る。

TIGER MARK BASKETBALL SHOES(タイガー印バスケットボールシューズ)

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創業の翌年に発売された、バスケットボールシューズの第一作

第一号モデルである「タイガー印バスケットボールシューズ」が発売されたのが1950年。まだ室内で履く運動靴さえも少なかった時代、「体育館でストップ&ダッシュができる専用のシューズが欲しい」と監督や選手から要望され、開発したモデルだ。当時、バスケットボールシューズの製造は最も難しいと言われた。しかし「最初に高いハードルを超えられれば、その後のハードルもどんどん超えられる」と鬼塚喜八郎はこのシューズの製造に挑んだ。

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LIMBER UPDATED TYPE(リンバー 改良品)

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オニツカタイガーストライプが初めて採用された、記念碑的モデル

オニツカタイガーはスポーツ専用シューズ以外に選手たちが広範囲に使える“トレーニングシューズ”も製造していた。「リンバー」はトレーニング用として開発されたモデルで、1960年に初代モデルが誕生。それ以降改良を重ね、66年にはメキシコライン(現在のオニツカタイガーストライプ)が初めて採用される靴となる。「リンバー」は、69年に誕生した「コルセア」、2002年の「メキシコ66」などの原型にもなった価値ある名靴として知られている。

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CORSAIR(コルセア)

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半世紀以上前に誕生し、現在でも人気を誇る歴史的な名作

1960年代後半、オニツカタイガーの靴は国際陸上競技大会で優秀な成績を収めていた。この靴に関心を示したのは、後にナイキの創業者となるフィル・ナイトと、米国陸上界の名コーチであったビル・バウワーマン。彼らの要望を受け、アメリカ市場向けの専用トレーニングシューズとして開発されたのが「コルテッツ」(後のタイガーコルセア)。写真の靴は72年の五輪大会にちなんだ「ミューニック72」というモデルで、コルセアファミリーの一足。

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LAWNSHIP 30(ローンシップ 30)

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伝説の白シューズは、グランドスラムを達成したコート夫人が愛用

1970年代、世界的なテニスブームの中、硬式テニス専用の本格的なテニスシューズとして開発されたのが「ローンシップ」。アッパーには合成皮革を採用している。年間グランドスラムを達成したオーストラリアのプロテニス選手のマーガレット・スミス・コートが履いたモデルもローンシップ・シリーズ。1973年にレザー素材の「ローンシップ 40」とメッシュ素材の「ローンシップ 15」の3型が同時に発売された。ちなみに「ローンシップ」は造語だ。

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FABRE SERIES(ファブレ シリーズ)

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アメリカのNBA選手にも愛用された、バスケットボール靴の名品

バスケットボールシューズとして初めてオニツカタイガーストライプが採用された「ファブレ シリーズ」は1973年の発売。モデル名は「速攻」を意味する「ファストブレイク」を略したものだ。常に動き回るバスケットボールだが、このモデルはソールに波形の切れ込みが入り、「ジャンプ、着地だけでなくストップ&ゴーにもすぐに対応できる」と評判を呼んだ。NBAボストン・セルティックスのデイブ・コーウェンスが履いたモデルとしても知られる。

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MONTREAL Ⅱ(モントリオール Ⅱ)

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鮮やかな色づかいが70年代風、ブランド初のジョギングシューズ

1970年代後半、米国を中心にジョギングブームが起こったが、同ブランド初のジョギングシューズがこの「モントリオール Ⅱ」だ。モデル名に「Ⅱ」が付いているのは、76年のモントリオール五輪に向けて開発されたトレーニングシューズ「モントリオール」をベースにしているから。アッパー素材にナイロンを採用し、前後のソールを巻き上げたデザイン、明るいカラーが特徴的。ジョギングを一般名称化した名靴として、多くの人の記憶に残っている。

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※この記事はPen 2020年4/15号「オニツカタイガー完全読本」特集より再編集した記事です。