スピード化を見込んで成功! オニツカタイガーの元祖マラソンシューズとは?

  • 写真:加藤佳男
  • 文:小暮昌弘(LOST & FOUND)
Share:

オニツカタイガー創業者・鬼塚喜八郎の卓越した創造性は、生み出された靴だけでなく、会社の経営にも反映された。ここでは知られざるエピソードとともに振り返る。

マラソン・駅伝専用のシューズも開発した。

DMA-1I0A9240_影.jpg
タビ型ではマラソンのスピード化には耐えられないと靴型に変更、1953年に完成した「タイガー印マラップ」。アッパーは「ビニロン」。

バスケットボールシューズに続いて当時、鬼塚喜八郎が熱心に開発に取り組んだのが、マラソンシューズだ。当時、マラソンは日本の選手が世界に進出し始めた競技であったが、昨年のNHK大河ドラマ『いだてん』でも描かれていたように、マラソン用につくられていた靴は座敷用のタビを改良したものだった。オニツカタイガーでも最初の数年はタビをベースに試作を重ね、53年には「マラソンタビ」がデビューする。

しかし鬼塚は「これからのマラソンは、過去の持久力を競うスタイルではなく、トラック競技の延長とも言うべきスピードが重要になる」と考え、タビとは異なるシューズ型の開発をスタートさせる。そして同年に発売したのが、マラソン・駅伝専用のシューズ「タイガー印マラップ」だ。「マラップ」は、「マラソンアップシューズ」の意味で、アッパーには当時、最新素材だった「ビニロン」を採用する。これはコットンの3倍の強度をもち、さらに足蒸れまで防いでくれる機能素材だった。またかかとにはスポンジを入れ、クッション性も高めた。58年にはソールにラバースポンジを入れ、より進化した「本革レース用マラップシューズ」も発売している。

DMA-1I0A9246.jpg
ラバーを用いた「マラップ」。ソールに凹凸の意匠を入れることで、トラクションをよくし、ソールが変形してクッション性も向上。

関連記事

※この記事はPen 2020年4/15号「オニツカタイガー完全読本」特集より再編集した記事です。