没後24年。ダイアナ妃が愛した腕時計「タンク フランセーズ」はメーガン妃のもとへ

  • 文:遠藤和呼

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1996年9月にワシントンのホワイトハウスを訪問したダイアナ妃。濃紺のスーツにイエローゴールドの「タンク フランセーズ」がよく似合う。左手薬指のサファイヤリングは、現在はキャサリン妃が継承。ヒラリー・クリントン氏との朝食の席で。photo:Gettyimages

「イギリスのバラ」と称えられたダイアナ妃。1981年にチャールズ皇太子と結婚して世界に知られる存在となり、2人の王子を出産。しかし、長い別居生活を経て96年に離婚、その翌年の8月31日に交通事故で逝去と、36年という短くも波乱万丈な生涯だったが、その一方で華やかで洗練されたファッションで多くの人を魅了した。ドレスやアクセサリーに比べると注目されることは少なかったが、実は腕時計にも強いこだわりがあったようだ。

婚約時代にチャールズ皇太子がパテック フィリップのゴールドのラウンドケースモデルをプレゼント。チャールズが出場するポロ競技の試合中に、ダイアナが自分のパテックと、皇太子のパテックという2本を左手首に着けている写真が残っているが、これは勝利を祈るダイアナが考えたものだったという。

この腕時計を好んでいたようで、別居後も時折り着用していたが、90年代半ばになると、カルティエ「タンク」を愛用するようになった。

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「タンク フランセーズ」は1996年1月の SIHH(ジュネーブサロン)で発表された。洗練されたシルエットのメタルブレスレットが特徴。ダイアナ妃はスーツに合わせることが多かったようだ。

ダイアナ妃が所有していた「タンク」は2本あり、1本はイエローゴールドケースにブラックアリゲーター・ストラップの「タンク ルイ カルティエ」、そしてもう1本はイエローゴールドのケース&ブレスレットの「タンク フランセーズ」だ。「タンク」はカルティエの角形ロングセラーで複数のコレクションが展開されているが、「タンク ルイ カルティエ」は1922年に登場したオリジナルを忠実に継承。「タンク フランセーズ」は1996年に登場した比較的新しいコレクションであり、メタルブレスレットとケースのフォルムが途切れることなく続く優美なデザインが特徴。ブレスレットも手をかけた仕上がりで、全体的に丸みを帯びた優しいスタイルになっている。ダイアナ妃は発売後間もなく入手したらしく、公務の際にも度々着用したお気に入りだった。

腕時計選びにはその人のライフスタイルや思考が表れるというが、ダイアナ妃の腕時計を見直すと、チャールズ皇太子との関係が円満だった頃は彼から贈られたパテックを愛用して、自身の生き方も彼に委ねていたのではないだろうか。そして、別居後の90年代はこれからの人生を自分の足で歩いて行こうという強い意志を持ち、それが自ら選んだカルティエ「タンク」という腕時計に表れていたのかもしれない。

ちなみに、ダイアナ妃の死後、彼女の「タンク フランセーズ」はウィリアム王子が引き取ったと伝えられており、2010年にキャサリン妃と婚約する時にヘンリー王子が持っていたサファイヤの指輪と交換。現在は、指輪はキャサリン妃が持ち、「タンク フランセーズ」は奇しくも王室を離脱したヘンリー王子の妻・メーガン妃が所有しているという。

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リニューアルされた現行品の「タンク フランセーズ」。ダイアルカラーがホワイトからアイボリーになったほか、ブレスがより滑らかになっている。クォーツ、18Kイエローゴールド、ケースサイズ25×20㎜、¥2,494,800(税込) photo: © Cartier 2019