2021年は「サイズの常識が切り替わった年」として記録していいようだ。レトロな復刻モデルの人気から、近年は腕時計のダウンサイジングが進んでいたが、その動きが今年は決定的になった。しかも新定番のケース径は、大方の予想よりも小さい「36㎜」だ。
象徴的なモデルがロレックスの「エクスプローラー」。従来のモデルから3㎜小さくなり、36㎜サイズの主役に躍り出た。たった3㎜と侮るなかれ。爪の長さと同様、多くの視線が行き交う手元でこの差は大きい。36㎜径のケースは、1953年に発表された初代のオリジナルサイズだが、レトロ感を想起させるというよりは、明らかに新時代の幕開けを予感させる。
タグ・ホイヤーからは人気のダイバーズ、「アクアレーサー」の新作が登場。300m防水などプロ仕様のスペックはそのままに、36㎜径も加わった。ショパールは端正でスポーティな「アルパイン イーグル」を2サイズで展開中。36㎜のスモールは男女兼用なブレス一体型の美しいデザインだ。
そう、本来スポーツウォッチといえば、たくましさの象徴であり、タフな“男の腕時計”としてオーバー40㎜が常だった。ドレスウォッチやレディス向けと見なされてきた「36㎜」でのスポーツウォッチの登場は、ジェンダーの枠組みにとらわれない新境地を切り拓くものになるだろう。