腕時計は道具である以上、使い込むほどに傷や汚れが付くのは、もはや宿命だ。であれば逆転の発想で、エイジングを積極的に楽しむという選択肢もある。ブロンズケースとレザーストラップは、その最良の組み合わせといえる。
そもそも10年ほど前にブロンズケースがひっそりとメジャーデビューした時には、訝しむ声も多かった。貴金属でもスチールでもない、ましてや当時注目が集まっていたチタンやセラミックのような尖った個性を放つ先端素材でもない。青銅自体はオールド・マテリアルであり、なにより酸化による変色を避けられないからだ。
つまりは経年変化するのだが、それをポジティブに捉える人々が現れた。穿き古すほどに馴染むデニムのように、自分だけの一本に“育って”いくのが愛おしいと思われるようになったのだ。しかもブロンズは船具に使われてきたように、塩分にめっぽう強く、海水や汗への耐性が高い。そして今年、オメガが発表したのは、金を配合した「ブロンズゴールド」。緑青は吹かず、変化がゆっくりと進む。
革ストラップとのコンビの観点でいえば、動物皮革も経年変化でふたつとない味わいが出てくる。夏場や海ではタブーと思われがちだが、その汗や潮ですら“深み”を増すのにひと役買う。ブロンズ×味革ストラップはまさにヴィンテージの美学なのだ。
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