“日本一美しい星空”をダイヤルに表現したセイコー140周年モデル

  • 文:笠木恵司

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セイコー独自開発のムーブメント「スプリングドライブ」は長野県塩尻市にある「信州 時の匠工房」で製作。同じ信州の阿智村(長野県下伊那郡)は“日本一美しい星空”に認定されている。この2つを融合したセイコー創業140周年記念限定モデル。ダイヤルに美しい夜空と、ケースとベゼルに星の煌めきを再現している。

深いブルーのダイヤルにはラメのような輝きがちりばめられ、ベゼルからケースには手作業による繊細な彫り模様が広がる。セイコーは2021年で創業140周年。これを記念した「グランドセイコー」の特別限定モデルが発表されたが、思わず見惚れてしまうほど美しく仕上がっている。

セイコー創業者の服部金太郎は「常に時代の一歩先を行く」を信条としており、「グランドセイコー」も最高峰の腕時計を目指して革新と進化を続けてきた。機械式とクオーツを融合したスプリングドライブは、この信条を具現化したセイコー独自開発のムーブメントであり、ゼンマイを動力源としながら日差1秒以内という高精度を誇る。長野県塩尻市の「信州 時の匠工房」が製造拠点であることから、この独創的なムーブメントを搭載するだけでなく、地域性にも着目。同じ信州で“日本一美しい星空”と評される阿智村の夜空をダイヤルとケースで表現している。

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ケースはプラチナ製。夜空に広がる星々の輝きを熟練の職人が丁寧に手彫りしている。

ダイヤルは、凹凸のある下地にメッキや塗装を何層も重ねており、腕の傾きによって細かな煌めきが繊細に変化する。シャープな多面カットが施された植え込みのバーインデックスも立体感が高く、さまざまな角度からの光を逃さず反射するため視認性が高い。このインデックスと時分針は14Kホワイトゴールド製。6時位置のSDマーク(Special Dial=金無垢のインデックスを採用したダイヤル)はその証だ。

ダイヤルだけでなく、プラチナ製のベゼルからケースにも星の瞬きをイメージした彫り模様を施していることが、この記念モデルの際だった特徴といえる。セイコーお得意のザラツ研磨によって歪みのない曲面に磨き上げられた後で、熟練職人がていねいな手作業によって放射状に細かな刻みを入れており、銀河の星々が放つ輝きを感じさせる。

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スプリングドライブ「キャリバー 9R02」を搭載。左下の18Kイエローゴールドプレートには「Micro Artist」と刻まれているが、購入者の希望に合わせて任意の文字にカスタマイズも可能。
ムーブメントは手巻きのスプリングドライブ「キャリバー 9R02」。現行の「グランドセイコー」搭載のスプリングドライブでは最薄の4.02㎜で、ケース厚も1㎝を切る9.8㎜。ただし、ひとつの香箱の中に薄く長い2本のゼンマイを並列に重ねる「デュアル・スプリング・バレル」と、エネルギーを有効利用する「トルクリターンシステム」によって約84時間(約3日半)のロングパワーを実現。シースルーバックから見られるブリッジも、輪郭や穴の周辺は光を反射する鏡面磨き、平面全体には筋目仕上げと手をかけている。受け石の人工ルビーの赤とテンパーブルー(青焼き)のネジが絶妙な彩り。ゼンマイが見える香箱に造形された桔梗(塩尻の市の花)がセイコーのウィットといえるだろう。

ラグジュアリーだが、スリムなケースと洗練されたデザインが上質な品格を感じさせる。貴石などを使うことなく、職人技によって抑制された華やかさが演出されているので、大切にしたい時間を飾るにふさわしいマスターピースではないだろうか。
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凹凸のあるダイヤル下地にメッキなどを何層も重ね塗りすることで、ラメのような煌めきを作り出している。手巻き、プラチナ、ケース径38.5㎜、ケース厚9.8㎜、日常生活用防水(3気圧)、世界限定50本。グランドセイコー「マスターピースコレクション セイコー創業140周年記念限定モデル」¥8,800,000(税込、2021年8月6日発売)

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