箏アーティスト・LEOインタビュー|「箏」によって、古典と現代を行き来する23歳【創造の挑戦者たち#54】

  • 文:岩崎香央理
  • ヘア&メイク:YOKO SAKANO

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「箏」によって、古典と現代を行き来する23歳/LEO(箏アーティスト)

文:岩崎香央理 ヘア&メイク:YOKO SAKANO
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LEO

箏アーティスト

1998年、神奈川県生まれ。9歳で箏を始め、箏曲家の沢井一恵に師事。数々のコンクールを制覇し、2017年にアルバム『玲央1st』でデビューと同時に東京藝術大学音楽学部邦楽科に入学。現在は沢井箏曲院講師として箏の継承・発展に寄与するとともに、読売日本交響楽団などオーケストラとの共演も行う。「情熱大陸」「題名のない音楽会」などテレビ番組にも出演。

現代箏曲界きっての若手実力派であるLEOの新作、『In A Landscape』が発売された。バッハとダウランドに始まり、箏曲の父・八橋検校、のちの電子音楽にも影響を与えたドビュッシーなどの巨匠をカバー。さらには、ドビュッシーから影響を受けたミニマル・ミュージックのスティーヴ・ライヒ、ジョン・ケージに坂本龍一、藤倉大まで、現代音楽へと続くエポック・メイキングな音楽家の歴史を、箏の音でつなぐ意欲作へと仕上がっている。

選曲はもちろん、箏で演奏するための編曲作業の多くも自らが手がけた。演奏面でも、絃の数や音色の違う箏を多重録音したり、バンド編成を試みたりと、表現の可能性を果敢に広げている。

「クラシックを箏で弾くことに対して、僕は新しい挑戦をしているという意識がある」と語るLEO。東京藝術大学音楽学部で邦楽を学び、現代箏曲専攻の一期生として箏曲界を背負って立つとともに、モードブランドの服をさらりと着こなすスタイリッシュな箏アーティストとして、古典と現代とを自由に行き来している。

「現代音楽を演奏するにしても、古典の知識がないと最新を表現できない。伝統的な楽器の“伝統”の部分というのはその楽器の本質だと思っていて、そこを理解しないで新しいことをやっても、箏の演奏としては成功しないと思うんです。僕にとって、新しいことをやるというのは根本を見つめ直すのと同意。歴史を掘り下げるほどに、その分、新しい場所を開拓する力を得るような感じです」

9歳の時にインターナショナルスクールで箏と出合い、14歳で全国小中学生箏曲コンクールのグランプリを受賞。邦楽界の登竜門、くまもと全国邦楽コンクールの最優秀賞を史上最年少の16歳で受賞した。まさに奏者としての王道を歩み続けてきたLEOだが、箏という楽器に100%の信頼を抱けない時期が長かったという。

「和楽器の中でも箏は、器用ではあるけど、実は器用貧乏じゃないのかと思っていて。尺八や三味線のように、一音を聴けば誰にでもわかる音ではない。それをコンプレックスにも感じていました」

強烈な音のキャラクターが立たないことへの戸惑いを自信に変えたのが、坂本龍一の「1919」をピアノ、チェロ、箏のトリオでカバーしたこと。ミニマルでざらりとした原曲の緊張感はそのままに、LEOの箏によって、曲の風景が有機的に広がって聴こえる。

「他の楽器と比べて特徴のない音が、逆にいいのかもしれないと思ったんです。箏の器用さとはつまり、どんな楽器とやっても馴染むということ。尺八の音はそれだけで際立つけれど、箏の場合、技術次第で際立たせることもできれば、後ろに回ってピアノやチェロとブレンドさせることもできる。「1919」はまさにそんなコラボレーション。箏が対等に洋楽器と共存し、三位一体でひとつの建造物がつくれるレベルになりました。この作品を通して、いままで挑戦してきた経験値と、箏の可能性とに気づくことができました」

僕の出すよい音を探すより、楽器が最も輝く音を探す

自分の音楽性という芯をもった上で、ジャンルをクロスオーバーしていきたいと話す彼。その主軸となる“LEOらしさ”とはなにかと尋ねると、「箏という楽器そのもの」だと力強く答える。

「箏は生き物みたいに寿命があるし、それぞれに表情が違う。しばらく弾かないでいると機嫌を損ねたように鳴ってくれないし、人と対峙するように向き合って練習します。僕の音楽は、僕が出すよい音を探すというより、僕が所持するこの楽器が最も輝く音ってどんなだろうと考え、その音がいちばんよく鳴る音楽を探すこと」

いわば楽器をプロデュースするように、コンプレックスさえも強みにして、「箏ほど僕が愛せる楽器は他にない」と言い切るLEO。ソロからオーケストラまで、あらゆる編成で箏の魅力的な楽曲を増やすのが、いまの夢だという。作曲にも挑み、現代箏曲の開拓へ自らの手で舵を取る彼から目が離せない。


※Pen 2021年8月号 No.519(6月28日発売)より転載

 

『In A Landscape』

卓越した演奏と緻密なアレンジで箏とクラシック、現代音楽を融合。箏の新たな音世界を拓く最新の4thアルバム。バッハ「パルティータ」、ダウランド「涙のパヴァーヌ」、八橋検校「みだれ」など全9曲。藤倉大による新曲も収録。COCQ-85523 日本コロムビア ¥3,300(税込)

YouTubeチャンネル「LEO」

オリジナルからカバーまで演奏映像を公開。クラシックやジャズのスタンダード、ロック、ジブリまで、スタイリッシュな空間で奏でるパフォーマンスは伝統楽器・箏のイメージを一新する。伊藤ハルトシ(チェロ)、角野隼斗(ピアノ)とのセッション「1919」は必見。

LEOリサイタル

音響のよさに定評がある紀尾井ホールにて10月22日に開催予定。「新しいレパートリーで箏の可能性を広げたい」と2年前から構想を練ったものだという。藤倉大による箏協奏曲の室内楽版を世界で初めて演奏する他、気鋭の作曲家たちによる新作や自作曲も披露する。

箏アーティスト・LEOインタビュー|「箏」によって、古典と現代を行き来する23歳【創造の挑戦者たち#54】

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