ピエール-ジャケ・ドロー生誕300周年、精緻な装飾が圧巻の記念モデル

  • 文:笠木恵司

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カゴの中の小鳥がピヨピヨとさえずりながら、あちこちを見ながら羽ばたく。あるいは人形の手がサラサラと文字を書き、横顔のデッサンも行う。機械仕掛けにもかかわらず、まるで生きているかのように滑らかで複雑な動作をするオートマタ(からくり人形)によって、18世紀に輝かしい名声を博したのが、ピエール-ジャケ・ドロー(1721〜1790年)だ。ゼンマイを動力として、歯車とカムなどの組み合わせで精密な動きを再現する高度な技巧は、懐中時計や置き時計でも発揮。ヨーロッパ全土はもちろん、中国の皇室に初めて納入された時計ブランドであり、現在でも故宮博物館(紫禁城)に作品が所蔵されている。

ピエール-ジャケ・ドローは今年で生誕300周年を迎えたことから、これを記念した新作が発表されたが、中でも「バード・リピーター(THE BIRD REPEATER)“生誕300周年記念モデル”」が彼の類い稀な偉業とメゾンの個性を直接的に象徴している。ダイヤルには美しいさえずりで知られるコマドリのオスとメスのレリーフを配置。オフセンターの時分表示の右側は、ジャケ・ドローが生まれた農場を再現。左側はラ・ショー・ド・フォンの渓谷を流れるロンド川が描かれている。

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直径47㎜のケースをキャンバスとして、ジャケ・ドローが生まれたスイスのラ・ショー・ド・フォンの景色や植物、生き物などが立体的に描かれている。彫刻や彩色はすべてハンドクラフト。手巻き、ケースは18Kレッドゴールド、世界限定8本。¥62,766,000(税込み)

それだけでなく、このモデルは複雑機構の中で最も精巧とされるミニッツ・リピーターを搭載。ケースの左側にあるレバーを押し下げると、美しい2つの音色の組み合わせで、時間、15分、分を教えてくれる。この時に、コマドリのメスは頭を下げて雛鳥に餌を与え、オスは卵の孵化を注意深く見つめながら羽を広げて喜びを表現。そして卵が割れて、新しい生命が顔を出す。「バード・リピーター(THE BIRD REAPEATER)」はメゾン初の試みとして2012年に製作されたが、今回の記念モデルは格段に進化。複雑なメカニズムを組み上げる時計技術に、アトリエ・オブ・アート(LES ATELIERS D’ART)で受け継がれる高度な装飾工芸が融合。3世紀にもわたる歴史が彩る、ジャケ・ドローの真髄が惜しみなく注ぎ込まれているのである。

子細に眺めれば、赤い木の実やヒイラギの葉、そしてトンボやバッタも見られる。ジャケ・ドローが有する多彩な職人技術を1本の時計に集結させた、まさにピエール-ジャケ・ドロー生誕300周年にふさわしい特別モデルといえるだろう。そして、このオートマタとアトリエ・オブ・アートのエッセンスは、この特別モデルに限らず、他の記念モデルを始めとして、すべてのモデルのバックボーンになっているのである。

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ケースバックはシースルー。6時位置よりやや左側に見えるハンマーがリングを叩くことで、時間、15分、分を順に告知する。ブリッジにはコート・ド・ジュネーブ、奥に見えるプレートにはペルラージュと呼ばれる伝統的な装飾彫りが施されている。

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オートマタの技巧とアトリエ・オブ・アートの装飾が「グラン・セコンド」にも集約

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両端が「ピエール-ジャケ・ドロー生誕300周年記念モデル」メゾンでは初のケース径41㎜を採用した「グラン・セコンド ムーン」。中央はファンタジーアートの巨匠、ジョン・ハウとコラボレーションした世界限定18本の特別モデル「プティ・ウール ミニット ドラゴン」。

ジャケ・ドローを代表するレギュラーモデルは、通常は小さく配置される秒表示(スモールセコンド)を逆に大きくした「グラン・セコンド」。ピエール・ジャケ・ドローが懐中時計で製作しており、8の字を描く独特のスタイルは、3世紀をまたぐメゾンのアイコンといえるだろう。

このコレクションのバリエーションとして、秒表示の中に月齢表示を加えた「グラン・セコンド ムーン」がラインアップされているが、ピエール-ジャケ・ドロー生誕300周年記念として、アイボリーカラーとマットブラックの特別モデルが登場した。同モデル初のケース径41㎜を採用したことが共通の特徴。これまで39㎜と43㎜の2種類だったが、現代的で男女を問わず愛用できる41㎜径はかつてなかったという。

アイボリーカラーのモデルは、ジャケ・ドローへのオマージュとして、メゾンの伝統的な“高温焼成”エナメルダイヤルを採用。奥ゆきを感じさせる上品な象牙色に、アラビア数字の時分計がよく似合う。青い夜空に浮かぶムーンフェィズの月もリアルなイメージで彫刻されており、印象的だ。秒表示の内側のゴールドの枠にはポインターが指し示す日付表示もある。8の字のデザインに時間、分、秒、日付、そして月齢表示が合理的にまとめられている他、時分はローマ数字、秒表示にアラビア数字を使用するなど、高い視認性も含めて高度なデザイン力が感じられる。

マットブラックのモデルは、時分表示にアラビア数字もローマ数字もない。そのかわりに、立体的なアプライドのバーインデックスをセット。これはコレクション初の試みという。艶なしの漆黒を背景に、レッドゴールドの煌めきが美しく映えるラグジュアリーなコンビネーションだ。

これらはアトリエ・オブ・アートの装飾技術の賜といえるが、オートマタによる技術的なこだわりも継承されている。一般的なムーンフェイズは59歯のディスクを使用しているが、これを135歯に増加した「メカニズム135」を搭載。実際の月の公転周期に近いため、122年に一度しか修正を必要としない。人間の一生を上回る高精度なのである。

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「グラン・セコンド ムーン アイボリーエナメル」。高貴な雰囲気が魅力。ムーンフェイズのブルーの夜空がアクセント。ムーブメントはヒゲゼンマイとアンクルの先端がシリコン製の「2660QL4」を搭載。耐磁性が高く、68時間のロングパワーリザーブ。自動巻き、18Kレッドゴールド製ケース、直径41㎜。¥3,454,000(税込)

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「グラン・セコンド ムーン マットブラック」コレクションでは初となるアプライドのバーインデックスを採用。漆黒のダイヤルにレッドゴールドが絶妙にコンビネーション。秒表示も簡略化された一方で、日付表示のアラビア数字は継承。視認性にも配慮されていることがわかる。ケース素材、ムーブメントなどのスペックはアイボリーエナメルと同じ。¥3,333,000(税込)

生誕300周年記念モデルではないが、2021年の特別限定モデルとして「プティ・ウール ミニット“ドラゴン”(PETITE HEURE MINUTE “DRAGON”)も登場した。ピーター・ジャクソン監督の『ロード・オブ・ザ・リング』と『ホビット』3部作でイラストレーター&コンセプチュアル・アーティストとして活躍してきたジョン・ハウとパートナーシップ契約を締結。彼が描いたダイナミックなドラゴンをダークブルーカラーの“高温焼成”エナメルで展開している。「プティ・ウール ミニット」は秒表示(グラン・セコンド)がないためダイヤル面が広く、これまでもイラストレーションを配置してきた。今回は永遠の復活、罪と贖罪を体現するといわれるドラゴンをアレンジ。ジョン・ハウの独特の世界観とジャケ・ドローのスタイルがアーティスティックに融合している。

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舌だけが赤く彩色されたドラゴンが光輝くパールを爪で掴んでいる。このパールは、持つ者の幸福、富、英知、知識とつながっているといわれる。ケースバックから見える自動巻きのローターにもドラゴンのウロコをエングレービング。自動巻き、ケースは18Kレッドゴールド、ケース径41㎜、世界限定18本。¥4,411,000(税込)

なお、ジャケ・ドローでは「ピエール-ジャケ・ドロー生誕300周年記念フェア」を2021年7月1日から8月1日まで、東京・銀座の「ジャケ・ドロー ブティック銀座」で開催する。オートマタを搭載した腕時計や各種の「グラン・セコンド」など、ラ・ショー・ド・フォン(スイス)の本社にある「アトリエ・オブ・アート」が受け継いできた装飾技術を駆使したコレクションも展示。記念モデルの「グラン・セコンド ムーン マットブラック」が国内初展示されるなど、稀少モデルを間近に見ることができる(ラインアップはこちら)。問い合わせは下記まで。

ジャケ・ドロー ブティック銀座

東京都中央区銀座7-9-8 ニコラス・G・ハイエックセンター4F
TEL:03-6254-7288
営業時間:11時〜20時(月〜土)、11時〜19時(日・祝)
www.jaquet-droz.com

ピエール-ジャケ・ドロー生誕300周年、精緻な装飾が圧巻の記念モデル

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