NBAが“禁じた”ナイキ「エア ジョーダン 1」は、いかにして誕生したのか?

  • 文:小暮昌弘(LOST & FOUND)
  • 写真:宇田川 淳
  • スタイリング:井藤成一
  • イラスト:東海林巨樹

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「大人の名品図鑑」スニーカー編#1

空前のスニーカーブーム。毎日のように新作が発表され、バブルと言っても過言ではない状況だ。スニーカーはもはや自分を表現する大切なツール。ファッションを超えた文化=カルチャーに近い存在だ。今回は、名品と呼ばれるスニーカーが誕生した時代背景やその特徴、アイコンとして登場する映画などについて紹介する。

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今年発売された「エア ジョーダン 1 MID」。初代「エア ジョーダン 1」をベースにミッドカットに仕上げた1足で、カラーはブラックとレッドを組み合わせた人気「ブレッド」カラー。オリジナルモデルとの違いは、シューレース周り上部の配色。この部分がブラックではなくレッドになっている。ミッドカットモデルなので、シューレースホールの数も8個。¥14,300(税込、個人所有)/ナイキ

マイケル・ジョーダン──アメリカのプロバスケットボールリーグNBAの歴史を代表する選手であり、人間離れしたプレイで“神”にも例えられた伝説の存在。1999年発行の雑誌『スポーツ・グラフィック ナンバーPLUS』には彼の引退に際して、名コラムニストのボブ・グリーンが「彼はブルズやNBAからは引退できるけれど、マイケル・ジョーダンであることは引退できないだろう」と記す。その証拠のひとつが毎試合履いたバスケットボールシューズではないだろうか。

1985年にシカゴ・ブルズへ入団した彼が初年度から履いたのが、ナイキがデザインしたシグニチャーモデルの「エア ジョーダン 1」。現在NBAワシントン・ウィザーズ所属の八村塁が履く「エア ジョーダン 35」まで35作が製作され、時折復刻される初期のモデルまで、どれも入手が困難なほどの人気だ。現在でもスニーカーブームを牽引する、名スニーカーのひとつだと断言できる。

実はマイケル・ジョーダンは高校、大学を通してコートでナイキのシューズを着用したことがなく、ナイキとの契約についても当初は乗り気ではなかった。そこで当時ナイキのクリエイティブディレクターを務めていたピーター・ムーアがデザインしたのは、ナイキのシューズの象徴的な技術である「エア」に、彼の名前が付いたモデル。当時としては画期的だったこのシューズのおかげで、ナイキはジョーダンと契約することができたとも言われる。しかし、彼が試合で履いたブラックとレッドの「エア ジョーダン 1」は、NBAからそのカラーリングが規則違反であるとみなされ、試合で履くたびに5000ドルの罰金が課されたとも聞く。

NBAが禁じたカラーリングはマニアの間では「ブレッド」カラーと呼ばれているが、その配色の「エア ジョーダン」を“狩られた=奪われた”少年を描いた映画が『キックス』(2016年)だ。ポスターに書かれた「これは、ただのスニーカーじゃないんだ!」という言葉がスニーカーマニアの気持ちを代弁する。スニーカー好きなら、絶対にチェックすべき映画だろう。

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エア ジョーダンが頻繁に登場するスパイク・リー映画

NBA好きでナイキ好きでもあるアメリカの映画監督、スパイク・リーは長編処女作『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』(85年)で主人公のひとり、マーズ・ブラックモンを自ら演じた。つばの裏側に映画の舞台である「BROOKLYN」とプリントされたキャップ、黒縁のカザールの眼鏡をかけて銀幕に登場。『スニーカーの文化史』(ニコラス・スミス著)によれば、この時マーズが履いたシューズが「エア ジョーダン 1」であった。主人公ノーラ(トレイシー・カミラ・ジョンズ)とベッドに入っても、このシューズを脱ぐことはなかった。この本には「ナイキからは無償提供はしてもらえず、リーは乏しい製作費をやりくりして、二足買わなければいけなかった」とも書かれている。しかしこの映画が縁でリーは88年に「エア ジョーダン 3」のCMに起用され、再びマーズに扮し、マイケル・ジョーダンとも共演を果たしている。

ちなみに『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』は2017年にNetflixでスパイク・リーがセルフリメイクしている。この映画でもアンソニー・モラス演じるマーズは初めて登場するシーンでブルーとオレンジ、左右色違いの「エア ジョーダン 5」を履いている。

また彼の代表作『ドゥ・ザ・ライト・シング』(89年)にも白の「エア ジョーダン 4」が登場するが、買ったばかりのシューズを踏まれてしまうという有名なシーンがあり、シューズが画面に大映しになる。スパイク・リーは相当の「エア ジョーダン」好きであり、スニーカー好きに違いない。

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アンクル部分には初期の「エア ジョーダン」のシンボルであった「ウイングマーク」が入っている。ある意味「エア ジョーダン 1」の目印。

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復刻モデルなので、シュータンには現在のジョーダンシリーズのシンボルである「ジャンプマンマーク」が採用されている。

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1994年代に復刻された「エア ジョーダン 1」。左が「ブレッド」カラーで、右がシカゴブルズのチームカラーを落とし込んだ「シカゴ」カラー。左は未使用モデルで、箱も当時のまま。(いずれも個人所有)/ナイキ

問い合わせ先/ナイキカスタマーサービス TEL:0120-6453-77

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NBAが“禁じた”ナイキ「エア ジョーダン 1」は、いかにして誕生したのか?

  • 文:小暮昌弘(LOST & FOUND)
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