建築家・谷尻誠が語る、建築設計と「目」の関係

  • 写真:齋藤誠一
  • 文:高野智宏

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無数の線と数字が精緻に書き込まれた設計図であれ、詳細な建築物の3Dデータが表示されたパソコンのディスプレイであれ、設計士が目を凝らすその対象は、アナログとデジタルの違いはあっても、目を酷使することに変わりはない。
「いまは図面を見るよりも、パソコンやタブレットで見てそのまま修正することが多いですね。確かに、作業が長時間にわたると目の疲れを感じます」
谷尻さんの目の疲れを癒やす方法はもちろん目薬、ではなく睡眠のようだ。
「目薬は花粉症なので痒みを感じた時に使っています(笑)。目が疲れたなと感じたら、その日は早めに就寝して目の疲労回復を心がけています」
そんな谷尻さんに、建築家の視点による視覚の重要性、そして、クリアな視覚がクリエイティビティにもたらす影響について語ってもらった。

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心がけているのは、ものの本質を捉える〝目が利く〟こと

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谷尻 誠(たにじり・まこと)/建築家・起業家●1974年、広島県生まれ。建築事務所勤務を経て、2000年に「SUPPOSE DESIGN OFFICE」設立。広島と東京を拠点に公共施設や複合施設、住宅にインテリアなど国内外にて多数のプロジェクトに携わる。母校である穴吹デザイン専門学校特任講師、広島女学院大学客員教授、大阪芸術大学准教授を兼務。著書に『CHANGE 未来を変える、これからの働き方』、『谷尻誠の建築的思考法』などがある。

長年にわたり存在し続ける建築物には、機能以上に佇まいの美しさが求められる。そして、これを創造する建築家にもたぐいまれな審美眼と表現力が必要だ。
「『目が利く』という言葉がありますが、それはものの本質を見極めることだと思うのです。たとえば建築なら地面から頂上まで直線が走っているなど、見た瞬間に伝わる要素に人は美しさを感じとるもの。僕もそこを意識して設計しているし、僕自身、常に目が利く状態でものを見るよう心がけています」
常に目が利く状態でいるためには、それこそ目の疲労は厳禁だ。
「あらゆるカタチを最初に認識し判断するのは視覚ですから、見るという行為がいかに重要かを再認識しています。僕の仕事もある意味、判断の連続で物事が進んでいくので、疲労した目では正確な判断は下せないと思っています」

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今年着工予定の公園と体育館の模型。「野球場跡地なので、市民に親しまれてきたその歴史を感じてもらえるよう、スコアボードなど野球場の雰囲気を感じられるよう設計しました」と、谷尻さんはその意図を語る。

谷尻さんは40代後半にして視力もよく老眼の兆しもない〝健眼〟の持ち主だ。
「視力が関係するかはわかりませんが、目の純度が高いというのか、目の前の仕事に集中していても自然と左右からの情報が入ってくるのです(笑)」
それが集中の妨げになるかと思いきや谷尻さんの場合はその逆。それどころか、目に飛び込んでくる情報を待っているふしもあると言う。
「自分の中に蓄積された情報には限りがある。でも、予期せずそこに自分の中にはない情報や考え方が入ってくることで化学反応が起こり、新たな発想やクリエイションが生まれることもあるのです。そういう意味ではインプットされる視覚情報は多いほうがいいと思し、そうしたあらゆる情報の融合が、これまでにない新たなアイデアを生み出すきっかけになると思うのです」

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今年2月、自然環境での宿泊施設の企画開発から、運営、販売、賃貸業を手がける「DAICHI」をスタート。谷尻さんを中心に造園家やプロサウナーなどユニークなメンバーが参画。その展開に期待が寄せられている。

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スタッフからiPadに送られてきた設計図に、修正点を書き入れる谷尻さん。「チェックバックには、使用する場所を選ばないiPadを利用しています。ただ、長時間ディスプレイを見続けていると目に疲労を感じますね」

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谷尻さんの〝目の保養〟になっていること、それはーー。

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ロート製薬「Vロートプレミアム」のさし心地を確認する谷尻さん。「スッキリして気持ちいいです」と感想を述べながらも、「目薬のデザインもしてみたいですね!」と、頭は仕事モードに。

「目薬を使うのは、花粉症で目が痒い時だけ」という谷尻さんに、ロート製薬のプレミアムな目薬「Vロートプレミアム」を試してもらった。
「あぁ、スッキリしてとても気持ちいいです。疲れた目を優しく癒やしてくれるような優しいさし心地ですね。これから疲れた時に使いたいです」
さまざまなプロジェクトへの展開で多忙を極める谷尻さんが、英気を養う時間、それは、ほぼ毎週行うキャンプであり、そこで入るサウナだという。
「自然の造形や移ろいを体感していると、それを人工物である建築の設計プロセスへ織り込めないかなど、結局は仕事のことを考えていますね(笑)。でも、サウナだけは別。サウナで身体を温めたあと川でクールダウンし、チェアで外気浴しているとなにも考えずボーっとできる。すると不思議なことにどんどん視界がクリアになっていく。サウナが目の保養になっているのかもしれません」

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谷尻さんが常に持ち歩くのが、iPadと愛機「ライカM10-R」。「いまは多くの仕事をiPadで完結できますからね。また、インスタへ投稿する画像もこのM10で撮影したものです。ライカ特有の表現がいいんです」

谷尻さんは建築設計以外にも〝社食+社会の食堂〟「社食堂」やコーヒースタンド「BIRD BATH & KIOSK」の運営や、前述のとおり趣味であるキャンプ事業を手がける「CAMP.TECTS」など多彩な事業を展開する起業家でもある。
ロート製薬も1899年(明治32年)創業と、実に120年以上の歴史をもつ老舗製薬企業にして、目薬や主力のスキンケア製品の他にも、農業に畜産、飲食業に再生医療と「薬に頼らない製薬会社」へと進化の歩みを進めている。
「設計に限らずいい仕事のためには健康な身体が必要だし、健康な身体をつくるのは食が重要と『社食堂』を始めたし、その先には農業への関心もある。すべてがつながって派生しているんです。ロートさんも老舗の大企業にして、薬の先にある各種の事業へと挑戦を続ける姿勢には共感を覚えます」

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「これまで社会は利便性や効率を求めて物事をセグメントしていく方向にありましたが、これからは違う。もっとさまざまな要素が混ざり合った、混沌とした中から新しいなにかが生まれてくるような気がしています」

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代々木上原駅より徒歩約7分。井の頭通りに面したビルの半地下に「社食堂」はある。「社員+社会の食堂」をコンセプトに、自社の社員のみならず社会の健康をデザインすることを軸に考えられている。

1964年、ロート目薬誕生から半世紀の節目にふさわしい商品として誕生した「Vシリーズ」。2016年、蓄積する目の疲れに本気で悩む人に向けて発売したのが「Vロートプレミアム」だ。基準内*最多となる実に12種類もの有効成分を配合し、ピント合わせ疲れ、乾きやブルーライトダメージなどによる疲れなど、現代人が抱える目のトラブルにアプローチする目薬だ。そんな目薬にちなみ、谷尻さんが「最高の作品」を創造するために心がけていることを聞いた。
「妥協しないことですね。ものづくりには『できない』と感じる時が多々ありますが、その際に『どうやったらできるのか』と考える人と、できない理由を並べる人にわかれるのです。でも、さらなる進化や革新は妥協せず不可能を可能にしたからこそ、生まれたもの。僕も常に妥協しないことを心がけていますし、ロートの目薬も研究者の方のそうした意識で進化を遂げてきたのでしょう」

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基準内*最多となる12種類の有効成分を配合。現代人の疲れ目にアプローチする。Vロートプレミアム(第2類医薬品)内容量:15ml、¥1,650(希望小売価格) *基準内とは厚生労働省が承認事務の効率化を図るために定めた医薬品の範囲。

●問い合わせ先/ロート製薬お客さま安心サポートデスク
TEL:03-5442-6020(東京) 06-6758-1230(大阪) 

https://www.rohto.co.jp/