マッツ・グスタフソンの美しき水彩画と、世界的巨匠たちの銀塩写真が出合う。

  • 写真・文:中島良平
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手前は、イタリア版『ELLE』誌の依頼で、ロメオ・ジリのドレスを描いた作品『ROMEO GIGLI ELLE ITALIA』(1988年)。その隣にはジャン=フランソワ・ルパージュがドレスの女性を写した作品が並び、写真作品とマッツ・グスタフソンの水彩作品がバランスよく配置されている。展示されている写真作品は、すべてツァイト・フォト コレクションより。

ニューヨークを拠点に活動するスウェーデン出身のアーティスト、マッツ・グスタフソン。1980年代より数多く手がけてきたファッション・イラストを中心に、淡い色づかいが美しい水彩やインク・ドローイング作品と、マン・レイやエドワード・ウェストン、植田正治といった写真家のオリジナル・プリントをあわせて展示する企画展が恵比寿のMA2ギャラリーでスタートした。

水と絵具を操り、ときには放置することで滲みの効果を生み出し、背景に溶け込むような絶妙なシルエットを描き出すのがグスタフソンの水彩画の真骨頂だ。それぞれのファッションブランドが持つスタイルをイメージに昇華したビジュアルは、鑑賞者の想像力を存分に広げる描写力に裏づけられている。2012年に自然をモチーフとする水彩作品を集めて同ギャラリーで展示を行ったグスタフソンは、次のように語っていた。

「ファッション作品でも自然がモチーフの作品でも、私は同じ方法で制作に取り組む。可能な限りモチーフを“蒸留”し、いろいろな要素を削ぎ落として対象の本質に近づこうと試みる。ディテールを再現するのではなく、シェイプとライン、テクスチャーを見極め、できるだけ抽象化するんだ。同じテーマを繰り返し描いているのは、その手法を追究したいと思っているからだ」


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右手にはマッツ・グスタフソンのヌードのドローイングとエドワード・ウェストンの写真作品が、左手には木の水彩画と植田正治の作品が並ぶ。オーナーの松原さんが写真作品とグスタフソンの組み合わせを提案し、そこにレスポンスがあって新たな提案がされるなど、リモートでのコミュニケーションを重ねることで展示構成は決まった。

MA2ギャラリーのオーナーである松原昌美さんは、グスタフソンの描写力は時代を超えて人々を魅了すると確信しており、それを証明するために、巨匠写真家たちが撮影した名作のオリジナル・プリントと並べる展示を企画した。後ろ姿の女性のシンプルなラインがエドワード・ウェストンの写真とシンクロし、ケルテスが画家の家を撮影した『モンドリアンの家』にグスタフソンが描いた女性像の気配が融け込んでいく。淡く繊細なペインティングやドローイングと、ヴィンテージのモノクロ写真の化学反応を会場で体験してほしい。

左:マッツ・グスタフソン『ROMEO GIGLI VOGUE ITALIA』1989/90年 右:アンドレ・ケルテス『モンドリアンの家で』1926年

左:マッツ・グスタフソン『RED DRESS VOGUE CHINA』2012年 右:セシル・ビートン 無題

マッツ・グスタフソン『Comme des Garçons VOGUE ITALIA』1996年 木炭の濃淡によって表現されたシルエットには、モチーフのエッセンスを抽出したいというグスタフソンの思いが映し出されている。

マッツ・グスタフソン/植田正治、マン・レイ、アンドレ・ケルテス、ウィン・バロック、セシル・ビートン、ブラッサイほか
開催期間:2020年11月6日(金)〜12月5日(土)
開催場所:MA2ギャラリー
東京都渋谷区恵比寿3-3-8
TEL:03-3444-1133
開廊時間:12時〜19時
休廊日:日、月、祝
入場料無料
http://www.ma2gallery.com/