1950年代に「世界で最も過酷」と呼ばれた公道レースがあった。アメリカとメキシコの国境付近からスタートしてグアテマラまで中米を縦断。5日間で山岳地帯を含む約3000キロを走破するため、毎年死亡事故が発生。このため僅か5回で中止となった。「カレラ・パナメリカーナ・メキシコ」。この伝説的なレースの名称を継承するタグ・ホイヤーの傑作クロノグラフが「タグ・ホイヤー カレラ」だ。さまざまなバリエーションに発展してきたが、今年はタグ・ホイヤーのブランド創立160周年。これを記念して、初代モデルを彷彿とさせるエレガントな新作が登場した。
1963年に誕生した「ホイヤー カレラ」は、高精度なクロノグラフというだけでなく、革新的なデザインを導入。そのひとつがダイヤル周縁のフランジ(見返し)に施された1/5秒単位の目盛りだ。当時は風防にプラスチックを使用しており、この接合部を補強するためにダイヤル周縁にテンションリングを嵌めたのだが、そこに細かな目盛りをプリント。このため相対的にダイヤル面が大きくなり、鋭角にカットされたバーインデックスと合わせて、視認性に優れたシャープでクリーンな顔つきになった。
もうひとつの特長は、長く立体的にデザインされたラグだ。ベルトの付け根に向けてすっきりと収斂したラインは、丸いダイヤルと美しく一体化しており、機能重視のモデルにありがちな武骨さがまったく感じられない。
今回の新作は、これらのデザインコードを継承しつつも、細部を徹底的にブラッシュアップ。とりわけリューズは、当時は手巻きの操作性を考慮して大型だったが、これを細身のプッシュボタンと調和するよう小型化するなど、ディテールを現代的なセンスで造形している。
搭載ムーブメントも、最新の自社製キャリバー「ホイヤー02」。垂直クラッチなので針飛びの怖れがなく、コラムホイールによる軽快な押し心地を楽しめる。約80時間というロングパワーリザーブが、初代モデルから半世紀以上を経た技術革新を象徴している。
ダイヤルがシルバーとディープアンスラサイトの2モデルは、ブラウンアリゲーター・ストラップ。ブラックとブルーダイヤルの2モデルには、H型コマが印象的なブレスレットをコンビネーションした合計4タイプ。サーキットから生まれた本格派のレーシング・クロノグラフだが、スーツにも違和感なくジャストフィットする。ビジネスマンが身に着ければ、アクティブでお洒落なタフガイを印象づけられる、モダンでスタイリッシュな腕時計といえるだろう。
問い合わせ先/LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー TEL:03-5635-7054