みうらじゅんが選ぶ、井上陽水楽曲のMY BEST 3──諸行無常のせつなさが胸に染みる、涙なしには聴けない青春のナンバー

  • 文:杉本勝彦

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1位.いつのまにか少女は (シングル「夢の中へ」収録)

2位.氷の世界 (『氷の世界』収録)

3位.人生が二度あれば (『断絶』収録)


井上陽水はデビュー当時からリアルタイムで聴いてきたという、みうらじゅんさん。『陽水Ⅱ センチメンタル』の影響を受け「メランコリーじゅんちゃん」という自作の弾き語りをテープに吹き込んだほど、陽水のせつない世界にどっぷりと浸ってきた。

「陽水さんの歌は、時代とともにわかることがあるんです。歌詞がメタファーのようになっている気がして。『氷の世界』の歌 い出し部分、《窓の外ではリンゴ売り》という歌詞だって、その時代の具体的ななにかを歌っているのではなく、もっと普遍的なものを歌っている。日本でいちばんボブ・ディランに近い気がしました」

侘び寂び、そして諸行無常の仏教観すら感じるという「いつのまにか少女は」は、青春時代を呼び起こす最高のこじらせ曲。

「この曲がラストに流れた映画『放課後』。主演した女優の栗田ひろみがいまでも忘れられないくらい好きです。《君は季節が変わるみたいに 大人になった》というフレーズは、当時の童貞にとっては死ぬほどせつなかった(笑)。『人生が二度あれば』は、ようやく自分がこの歳になって、ビートルズの『When I'm Sixty-Four』に歌詞をかけているんだって気がつきましたね」

みうらじゅん●1958年、京都府生まれ。80年に武蔵野美術大学在学中に漫画家としてデビュー。以降は、イラストレーター、作家、ミュージシャンなど幅広く活躍。仏像ブームの立役者として2018年に仏教伝道文化賞沼田奨励賞受賞。

こちらの記事は、Pen 2020年5月1・15日合併号「【完全保存版】井上陽水が聴きたくて。」特集からの抜粋です。