手をかけて育てる楽しみのある「ちょっと古いクルマ」と、歴史とともに培われた技術力によって進化した「長く愛せる新車」。どちらも甲乙付けがたい魅力があふれているのは、よりよいクルマを目指して自動車エンジニアが注いだ情熱があるからこそ。新旧2台のクルマから、その情熱を感じてください。Vol.2はホンダ・シビックRSとホンダ・フィットRSです。
軽やかに進化する、日本を代表するベーシックカー
1972年にデビューした初代ホンダ・シビックは、さまざまな意味で現代にも通じる、先進的な考え方でつくられたクルマでした。まず、ヨーロッパの合理的な考え方を取り入れた、FF(前輪駆動)のハッチバックという基本設計が斬新でした。
トヨタ・カローラや日産サニーといった当時のライバルたちは、FR(後輪駆動)の4ドアセダン。対するシビックは、軽くて室内が広くなり、荷物も積みやすいFFハッチバックというレイアウトを採用しました。FFハッチバックの範とされる初代フォルクスワーゲン・ゴルフが登場したのが74年だから、シビックがいかに時代を先取りしていたかがわかります。
初代シビックがあったから、いまのホンダの繁栄がある。
初代シビックはまた、元祖エコカーでもあります。排ガスによる大気汚染が社会問題となっていた70年、アメリカで「世界一厳しい排ガス規制」と呼ばれたマスキー法が成立しました。これを世界で最初にクリアしたのが、シビックに搭載したCVCCエンジンなのです。
そして74年、シビックに高性能版のRSというモデルが加わります。これは走って楽しいハッチバック車、いわゆる“ホットハッチ”の先がけです。
「実用的」「エコロジー」「ファン・トゥ・ドライブ」といった新しい価値観を打ち出したシビックは大ヒット、70年代以降のホンダ隆盛の礎を築きました。自動車評論の巨匠、故・徳大寺有恒はヒットの理由を「従来の権威を否定した団塊の世代が、自分たちのクルマを求めた結果、FFハッチバックのシビックに飛びついた」と分析しています。
暮らしを豊かに便利に楽しくしてくれる、「市民のためのクルマ」
このシビックの実質的な後継モデルと言えるのが、2001年に登場したフィットです。3世代目となる現在のモデルは、さまざまな点において初代シビックを継承しています。
まず、FFハッチバックという基本設計が同じです。ハイブリッド仕様のJC08モード燃費は34.0km/Lで、高度な技術で優れた環境性能を実現している点も共通しています。そして、走る楽しさを提供するRSというモデルは現代のフィットにも設定されています。
一方、70年代と現代で異なるのは、安全技術が進化したこと。最新のフィットには、レーダーとカメラで危険を察知し、自動ブレーキなどが危機を回避するように働く「Honda SENSING」が用意されています。
フィットは「人々の暮らしにぴったりの」という意味ですが、運転をする高齢者の人口がさらに増加するこれからのクルマ社会においては、こうした運転支援装置のもつ意味は、ますます大きくなるでしょう。
そういえば、シビックも「市民のためのクルマ」を願って名付けられたモデル名。やはり両者は、暮らしを豊かに、便利に、楽しくしてくれるベーシックカーであるという点においては、変わっていません。
こちらの記事は、2017年Pen10/15号「いまならどちらを選びますか? ちょっと古いクルマ、長く愛せる新車。」特集からの抜粋です。気になった方、ぜひチェックしてみてください。アマゾンで購入はこちら。
関連記事
【新旧名車を比較! Vol.1】BMW イセッタ & BMW i3
【新旧名車を比較! Vol.3】トヨタRAV4 & トヨタC-HR
【新旧名車を比較! Vol.4】ユーノス・ロードスター & マツダ・ロードスターRF