煮詰まるとシングルモルトをグラスに一杯、
”文豪コント”を挟んで文章を考えます(笑)

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    21山田ルイ53世芸人

    煮詰まるとシングルモルトをグラスに一杯、
    ”文豪コント”を挟んで文章を考えます(笑)

    各界で活躍する方々に、それぞれのオンとオフ、よい時間の過ごし方などについて聞く連載「MY Relax Time」。第21回は、お笑いコンビ「髭男爵」のツッコミ担当として知られる、芸人の山田ルイ53世さんです。ワイングラスで「ルネッサーンス!」と乾杯する貴族漫才で一世を風靡した後、俳優やナレーションの仕事を経験。2015年に自身の経験を綴った『ヒキコモリ漂流記』が話題になって以降、作家としての活動が注目されています。

    写真:殿村誠士  構成:和田達彦

    山田ルイ53世(やまだるいごじゅうさんせい)●1975年、兵庫県生まれ。本名、山田順三。地元の名門中学に進学するも、引きこもりとなる。大検合格を経て愛媛大学に進学するが、退学して上京。99年に相方のひぐち君と結成した髭男爵が2007年ごろにブレイク。著書に『ヒキコモリ漂流記』(マガジンハウス)、『一発屋芸人列伝』(新潮社)、『一発屋芸人の不本意な日常』(朝日新聞出版)。

    現在の仕事は、コンビとしてはおもに地方営業。週末に開催される企業パーティーへの出演が多いですね。ピンとしては、コメンテーターやラジオやナレーションの仕事の他、最近は書き物。常に5本ぐらい連載をもっていますが、並行して次に出す本の準備をしたり、小説の構想を練ったりしています。練ってるだけですが(笑)。小学1年生の長女には、私が髭男爵だということは隠していて、基本的に「フレキシブルに働くサラリーマン」だと思わせています。いまは、娘はライター業だと思っているかも。ただ、家に置いてあるシルクハットを見つけて、薄々気づき始めているようですが(笑)。私は20歳までひきこもったことで、以降は「人生余っちゃったな……」という感覚で生きてきました。芸人になったのも、他にやること・やれることがなかったから。この先50歳過ぎて「めでたいやないか~い」ってやっているのもアレですし、物を書く仕事は大事にしたいですね。ただ、お笑いや地方営業の仕事はAIに取って代わられなさそうなので、もちろん続けていきたいです。

    次女の出産時に妻が入院して、10日間ほどすべての家事と育児をやった時、これってすごい労働だなと実感しました。家にいる時間、多少なりとも家事をしたり、書き物をしていることを考えると、いまは完全にオフと言える日はないですね。ただ長女を公園に連れて行く時間は、自分の気晴らしにもなります。よく「趣味は何ですか」と聞かれるのですが、これがまったくない。芸人は多趣味というイメージがあるので、ないと答えると「なんてつまらない人間なんだ」と思われそうで苦痛です。また東京に住んでいると、とにかくワクワクキラキラさせようとするオプションが多すぎて閉口しますね。根本がひきこもり体質なので家にいることが多いですが、時間ができるとなにもせずにぼーっと考え事をしています。文章を書く際に「この言い回しがいいな」とか、「あのエピソード、今度ラジオで喋ろう!」とか考えていて、気づくと娘が横にいる。そんな感じです。

    たばこを吸うことは、ぼーっとした状態をつくってくれるルーティンのようなもの。23歳ごろから吸っていますが、3年前ごろから健康と子どもに気を使って加熱式たばこに切り替えました。営業や収録の仕事の前後に一服するほか、家で書き物をしている合間に吸います。原稿は家族が寝静まった深夜に書くことが多いのですが、煮詰まるとグラスにシングルモルトのウイスキーを注ぎ、たばこをくゆらせながら文豪気分に浸る(笑)。ちょいちょいこの”文豪ミニコント”を挟みつつ書くと、原稿がはかどる気がします。夕暮れ時にこれをすることもあるのですが、空が赤く染まり、そしてゆっくり暗くなっていくさまを、ウイスキーとたばこを手に眺めているとすごく贅沢している気分になります。この時間がとても好きですね。

    『一発屋芸人の不本意な日常』(朝日新聞出版)全国書店にて好評発売中 。¥1,400(税抜)

    髭男爵 山田ルイ53世のメールマガジン「貴族のメルマガ」
    https://bookstand.webdoku.jp/melma_box/page.php?k=higedanshaku


    問い合わせ先/JT
    www.jti.co.jp