既存の宿泊スタイルと一線を画した”ホームシェアリング“という旅のかたちで世界を席巻している「Airbnb(エアビーアンドビー)」を特集した『Pen+ 』。その発売を記念したトークイベントが、2019年3月30日にTSUTAYA TOKYO ROPPONGIで開催されました。

イベントにご登壇いただいたのは、建築家の永山祐子さんとAirbnb Japan執行役員の長田英知さん。永山さんには、今回の『Pen+』誌面で「Airbnbと建築」をテーマに自由に夢を膨らませたプランを展開してもらっています。お二人に、ホームシェアリングと建築の新たな可能性について語っていただきました。
Airbnbの魅力は、美しくユニークな滞在先。

イベントは、Airbnb Japanの長田さんによるAirbnbの概略とサービスの紹介から始まりました。
Airbnbの誕生は、サンフランシスコで国際会議の開催により宿泊部屋不足が深刻化したことに端を発します。アメリカの若者たちが自室にエアマットレスを置いて貸し出すことを思いつき、新しいホームシェアリングの実現に向けてビジネスを発展させていったのです。
現在は著名な建築家の設計による美しい一軒家や森の中のツリーハウスなどユニークなものまで、191カ国で600万以上の滞在先を展開。日本では様々な企業とパートナーシップを組み、地域の魅力をテーマにした体験型サービスも広がっています。

永山さんのAirbnb初体験は、アメリカ人の友人家族と行ったサンタフェへの旅。ふた家族合わせて4人の子どもを抱えており、普通のホテルだと気を使いすぎて子どもたちを自由に遊ばせられないと考えた永山さん。そこでトライしたのが、Airbnbでした。希望するエリアに、複数家族で使える大きな一軒家が見つかったそうです。
日中は遊びに出て、帰ってきたらキッチンで料理。旅先であっても、Airbnbなら普段の暮らしのように過ごせます。永山さんがAirbnbならではの醍醐味として挙げるのは、地元の人たちが通うスーパーに出かけて買い物し、自分たちで料理をつくること。「地元のスーパーには見たこともない食材もあって、子どもたちも興味津々。失敗することもあるけれど、でもそれがまた楽しいのです」と語ります。
場所と時間をシェアすることで、収益を生みだす住宅。


トークショーは「Airbnbを活用した、都市での生活のかたち」というテーマに移っていきます。永山さんは「家がお金を生む」点に注目しました。
「家を貸し出す側から見ると、Airbnbには、自分がいない時に不労収入を生んでくれるという大きなメリットがあります。東京をはじめとした都心部では地価の上昇で持ち家率が低下していますが、“場所と時間をシェアすることで収益を生む住宅”となれば、建て方や買い方が変わってくるかもしれません。都心にオンとオフ、2軒の家をもち、オフ用の1軒は別荘としてシェアするなんてこともありうるでしょう」と語る永山さん。住空間をシェアすることは、ライフスタイルそのものを大きく変える可能性があるのです。



永山さんは、今回の「Pen+」の企画で提案した建築プランについて解説をしてくれました。
「まず自分の家を貸し出すとしたら、なにをいちばん気にするかな?と考えたんです。たとえば思い出のある大事な食器や洋服などは大切にしまっておきたいけれど、タオルなら使っていただいてもいいですし」
そこで永山さんは、「その快適性の鍵は収納にアリ」と指摘します。上手く収納を使ってプライベートとパブリックの切り分けをすれば、スペースを貸し出せるのです。
「個性が消えない程度にプライベートをロックしてメリハリをつける、その匙加減が重要ですね」

では、”ホームシェアリング”という概念は、街づくりにどのような影響を与えるのでしょうか。
「Airbnbは2020年以降の東京を見据えています」と長田さん。
「駅が違えば別の街というくらい、東京は街によってずいぶん趣が異なりますが、どれほどの人が地元の文化や伝統、産業などについて知っているのでしょうか。東京に住む一人ひとりが東京の魅力を知り、それをツーリストに紹介する。その積み重ねが地域の活性化につながるのではないでしょうか」
これは、東京に限らず多くの街に当てはめることもできそうです。ツーリストたちに紹介する街をもう一度再確認する。自身が暮らしている場所について知ることで、“地元”はもっと面白くなるはず。家や街をより良くするために、シェアリングエコノミーが果たせる役割は大きい。そんなことを感じさせるイベントでした。

Pen +「暮らすように旅する、Airbnbのすべて。」
¥1,000(税別)デジタル版¥778(税別)
詳しくはこちら→www.pen-online.jp/magazine/penplus/pen_plus_airbnb
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