最高峰の技術を結集した「オニツカタイガー」は、スニーカーの表情の違いを一足ずつ楽しめます。

  • 写真・取材動画:森山将人(mili)(p1〜4)、モデル動画:TISCH(UM) スタイリスト :小林新(UM)
  • ヘア:KENSHIN(Signo) 動画:AIRI KIKUTA
  • 文:佐野慎悟 (p1〜4)

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鳥取県の自社工場で行われている、最新設備と職人技が織りなす独自の靴づくり。世界で愛される「ニッポンメイド」は、このように生まれているのです。

縫製作業により出来上がったアッパーを、木型に被せて成型する吊り込み機。やわらかく繊細な素材を使う場合は、この工程も手作業で行います。

いまオニツカタイガーのスニーカーは、履き心地のよさ、自然な表情、日本ならではのクラフトマンシップなど、その品質の高さから、世界の主要都市で極めて高い評価を得ています。しかし、これらオニツカタイガーの一つひとつの魅力は、実はブランド側が直接訴求した結果として広がった評価ではありません。あくまで手にしたユーザーが主観的に感じとり、自然に広がった共通認識であるということは特筆しておくべきでしょう。ここでは日本製にこだわったオニツカタイガーの「ニッポンメイド」シリーズが生まれる工程を追いながら、世界へと羽ばたいたその"メッセージ"の出どころを探ります。

世界に挑戦するための、最新鋭の設備と技術。

オニツカタイガーストライプをアッパーに取り付ける縫製作業。平面での作業ですが、当然立体になることを想定しながら針を進めます。

まず訪れたのは、鳥取県の境港市。アシックス国内唯一のシューズ生産拠点として、高付加価値モデルを中心に生産している山陰アシックス工業です。1969年に設立され、2016年に大規模な増改築が行われたこの工場では、効率化された最新の設備のもと、メイド・イン・ジャパンの高品質なシューズが数多く製作され、ここから世界へと送り出されています。

最初に目にしたのは、裁断されたレザーパーツを、「メキシコ66デラックス」のアッパーの形につなぎ合わせる縫製作業。30年以上のキャリアをもつ熟練の職人が、時間をかけて縫い上げていきます。厚みのある革の縫製には高い技術が必要とされ、パーツが重なり合う段差の部分には細心の注意が必要です。縫い上げられたアッパーは、次に〝吊り込み〞の作業で木型へと被せられます。スニーカーのデザインや素材の特性によっては、吊り込みを機械で行う場合と、手作業で行う場合の両方があります。木型の底面に吊り込まれたレザーはソール部分とののりしろになりますが、ここでは接着強度を高めるために、手作業による〝バフがけ(研磨)〞で表面の凹凸が綺麗にならされていくのです。その後ソールがしっかりと圧着されて、スニーカーの形が完成します。

各パーツを縫い合わせた後、出来上がったアッパーにシューレースを取り付けて吊り込み工程へ。木型はこの工場に約20型あります。
手作業によるバフがけで表面が平らになったアッパーの底面に、専用の接着剤を均一に塗布する作業。ここにソールが圧着されます。
吊り込み作業とバフがけの後、専用の接着剤でアッパーに取り付けられたソールは、真空圧着機で上下左右からしっかりと圧着されます。
ていねいにエンボス加工が施されていく、シュータン部に取り付けるブランドロゴ。スニーカーのアイデンティティとなる、重要なパーツです。

このように一足のスニーカーがつくられる背景には、多くの職人による細かい手仕事があります。しかもここでは野球、陸上、レスリングなど、日本が世界に誇るトップアスリート用シューズと同じ製造ラインで、日本製にこだわった「ニッポンメイド」のスニーカーが生産されているのです。すなわち、メジャーリーガーやオリンピックのメダリストが履くシューズを手がけている熟練の職人が、同様の技術と設備を使ってスニーカーをつくり上げています。

しかし、これがすべてではありません。この後、場所を移して行われる最後の仕上げこそが、オニツカタイガーが誇るスニーカーに魂を与える、最も重要な工程と言っても過言ではないのです。

最後の"味付け"は、東大阪の小さな町工場が手がける。

一足ずつ洗いの加工を施された後、乾燥のために工場内で一昼夜吊るし干しにされる、「ニッポンメイド」の「メキシコ66デラックス」。

境港の山陰アシックス工業でつくられた「ニッポンメイド」のスニーカーは、最後の仕上げのために大阪府東大阪市にある加工工場へと送られます。「ニッポンメイド」の立ち上げから、製品加工の全般を引き受けているのが、ここ佐川工芸。〝昔ながらの町工場〞という呼び名がしっくりとくる工場の佇まいは、世界のファッションシーンで注目されているスニーカーのイメージとは、一見すると随分とかけ離れています。しかしこの小さな町工場こそが、「ニッポンメイド」の魅力を特徴づける重要な役割を担っているのです。

洗いの加工は、約45℃のお湯と水溶性のオイルを混ぜた浴槽の中で行われます。オイルは革の油分を保つために加えられます。
スニーカーには一足ずつナンバリングが施されます。佐川工芸ではこのペアごとに加工を施し、左右で同じ表情に仕上げます。
山陰アシックス工業でシュータンに取り付けられるロゴに、手作業で色付けを施す佐川工芸の職人。

「鳥取の工場でできた下地に、いろんな味付けをするのがうちの役割です」と、佐川工芸代表の佐川勝さんは語ります。1972年に操業を開始した佐川工芸は、これまで革製品やアパレルなどの幅広い分野で、特殊な製品加工の数々を手がけてきました。その豊富な経験のなかで蓄積された、染め、色付け、洗いなどの伝統技術が、「ニッポンメイド」にはふんだんに取り入れられているのです。

「私が子どもの頃は、買ったばかりのまっさらな運動靴がなんだか恥ずかしくて、自分でわざと汚していました。無表情な新品の靴よりも、ちょっとこなれていたほうがカッコいいんです」と佐川さん。

日本の職人の手で一足ずつ加工が施され、味わい深い個性が与えられたメイド・イン・ジャパンのスニーカー。手仕事の温かみという原点的な魅力の前では、言葉や文化の垣根は意味をなさないのかもしれません。

和の美意識が叶えた、表情豊かな風合いとデザイン

左:ネイビーレザーの上にシルバーの箔を施し、洗い加工の後に一部の箔を落とし、下地のネイビーを表面に。「メキシコ66デラックス シルバー×ネイビー」¥28,080 右:洗い加工により若干縮んだレザーは、履き込むごとに自分の足型に沿ってぴったりと馴染んでいく。「メキシコ66デラックスホワイト×ブルー」¥22,680/ともにオニツカタイガー
左:製品洗い加工を施し、スエードの表面に独特なムラ感を表現。アーカイブを、匠の技で再構築。「ファブレニッポンロー ルイボスティー×ブラック」¥27,000 右:ゴールド革の上に黒のペイントを施し、一部のペイントをぬぐい落とした色みのレイヤー感が特徴的。「メキシコ66デラックスエスエイチ ブラック」¥28,080/ともにオニツカタイガー

ひとつのデザインを生み出すために、「ニッポン メイド」のデザインチームは幾度となく職人たちのもとを訪れます。彼らがもつ多彩な表現方法をうまく引き出し、それをモダンなプロダクトへと昇華することが、「ニッポンメイド」独自のプロセスなのです。この実験的な取り組みが、日本の伝統技術を未来へとつないでいきます。

最高峰の技術を結集した「オニツカタイガー」は、スニーカーの表情の違いを一足ずつ楽しめます。

  • 写真・取材動画:森山将人(mili)(p1〜4)、モデル動画:TISCH(UM) スタイリスト :小林新(UM)
  • ヘア:KENSHIN(Signo) 動画:AIRI KIKUTA
  • 文:佐野慎悟 (p1〜4)

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