ナポリの老舗「マリネッラ」のショップ店長に、ネクタイ選びの神髄を聞きました。

  • 写真:森山将人(mili)
  • スタイリング:河又雅俊
  • 文:小暮昌宏

Share:

  • Line

ナポリに生まれ、世界を代表するネクタイブランドとなった「マリネッラ」。東京ミッドタウンと丸の内にあるふたつのショップの店長から、「マリネッラ」流のネクタイの上手な選び方、スーツやジャケットとの洒落た合わせ方を指南していただきました。

母国イタリアはもちろん、ケネディやクリントンなどアメリカの大統領や英国のチャールズ皇太子にも愛用された「マリネッラ」のネクタイ。1994年のナポリサミットでは、各国首脳にそれぞれ6本のネクタイが贈られました。

イタリア・ナポリのヴィットリア広場に「マリネッラ」が創業されたのは1914年。創業者は、エウジェニオ・マリネッラ。店と同時にネクタイを縫製する工房も開いた彼は、当時イタリアで空前のブームとなっていた英国製品を輸入するためロンドンへ視察に出かけ、その後多くの製品を輸入。ナポリで唯一、英国製品が手に入る店となりました。また、パリからシャツの仕立て職人を招き、自社でシャツの生産も開始。ネクタイと並ぶ「マリネッラ」の主力商品になりました。

そのシャツ職人から習得した技術を発展して出来上がったのが、オリジナルの「セッテピエゲ=7つ折り」のネクタイです。シルクの生地を文字通り7回内側に折って仕立てる手法で、生地も通常の倍使います。職人的な縫製で仕立てられたネクタイはソフトで美しく、しかも結びやすい。いまでも「マリネッラ」のアイコン的なネクタイとして日本でも高い人気です。

ナポリの「マリネッラ」は20平方メートルほどの小さな店ですが、朝6時30分にオープンすると紳士淑女がすぐに集まってくるような店で、3代目のマウリッツィオ・マリネッラがいまでも朝から店頭に立ちます。東京・六本木の「マリネッラ ナポリ 東京ミッドタウン」は海外初の専門店として2007年にオープン、「マリネッラ ナポリ 丸の内」は日本2号店として2014年9月にオープンしました。どちらもナポリ本店と同じ商品と雰囲気が満喫できるショップです。

イタリアの正統派スタイルを堪能できる、ネイビーの小紋タイ

「マリネッラ ナポリ 東京ミッドタウン」店長の小林正弘さん。手に持つのは20オンスのシルクを使った「セッテピエゲ」。小紋柄はナポリの守護聖人の祝日を記念し復刻させたものです。¥39,960

まず訪れたのが、東京・六本木の「マリネッラ ナポリ 東京ミッドタウン」。イタリア以外では初の「マリネッラ」専門店として2007年にオープンしたショップです。開店からちょうど10年、顧客も多く、年2回はマウリッツィオ・マリネッラが来日し、珍しい生地などで好みのネクタイが仕立てられる受注会を開催しています。

「マリネッラにとって、ネクタイとは相手へのリスペクト(尊敬)と、個人のパーソナリティや個性を表現するものです」

こう語るのは「マリネッラ ナポリ 東京ミッドタウン」店長の小林正弘さん。小林さんは、ネクタイは絵画で言えば絵を引き立たせる額縁のような役割を担っていると話します。

シャツ¥41,040、ネクタイ¥32,400/ともにE.マリネッラ(マリネッラ ナポリ 東京ミッドタウン TEL:03-5413-7651) スーツ¥383,400/イザイア(イザイア ナポリ 東京ミッドタウン店 TEL:03-6447-0624) チーフはスタイリスト私物

そんな小林さんが選んでくれたのが、「マリネッラ」で特に人気の高いネイビーの小紋柄ネクタイです。

「ネイビーのネクタイを中心にして、クラシックでエレガントなコーディネートを考えました。イタリアでも紳士がよく着用するグレーのスーツに、ナポリではチェレステブルーと呼ばれる淡いブルーのシャツを。ナポリ本店でいちばん好まれる、白でも濃いブルーでもない水色のブルーです。この組み合わせにネイビーの小紋タイを合わせました」

このような着こなしはビジネスでも使えますし、ちょっとした夜のパーティなどでも着こなせる、とても汎用性の高い組み合わせです。「フォーマルにも通じる洗練された雰囲気と、ナポリらしいほどよいヌケ感もある、人気のスタイルです」と小林さんは解説してくれました。

「マリネッラ」のアイコン的なネイビーの小紋柄ネクタイ。左から4本は¥39,960、それ以外は¥32,400

小林店長が薦めてくれたネイビーの小紋柄ネクタイは「マリネッラ」の顔とも言われるもので、日本でも人気があります。同じネイビーの小紋でも、色や柄で多くのバリエーションが展開されています。

「生地はすべて英国製のシルクを使っています。それをナポリの自社工房で仕立てることを創業から頑なに守り続けています。おもに36オンスのヘビーオンスシルクを用い、ほとんどがプリント生地を使っています。小紋柄についてはマリネッラだけのためにつくられたものです」

よく「マリネッラ」のネクタイは締めやすいと言われますが、36オンスのヘビーオンスシルクは復元力も高く、結んだ時に立体感、ドレープ感が美しく出ます。「芯地」もオリジナルで製作しており、ヘビーなシルクと芯地があいまって、締めやすく仕上がっているのです。また、ハンドメイドの適度なテンションも締めやすさの一因だと小林店長は話します。この店で人気なのは9〜9.5cmのクラシックなタイプのネクタイで、ネイビー以外にもオーソドックスな色合いのネクタイが揃っています。

クラシックさとモダンさを表現したインテリア。3代目オーナーが「新しいマリネッラを表現したい」と、このようなデザインに。

「ミッドタウンのこの店は、海外初の専門店としてオープンしましたので、その期待に応えるために、なるべくナポリのスタンス、考え方をダイレクトにお客様に伝えたいという思いが込められています。年2回受注会を行うことで、オーナーが発信することとお客様の間の橋渡しになりたいと思います。受注会は現在、年2回、3月と10月に開催しています。ナポリの本店にいるかのような気分を味わえる店にしたいと思います」

小林店長は、このような大きさの場所を選んだのは本店と似たような雰囲気であったからだと話します。デザインのコンセプトは、モダンとクラシックの融合。ウッディな什器にメタル素材を使ったアーチ状の設え、天井から吊るされたアンティーク調のシャンデリア、壁に掲げられたブルボン家の紋章など、まさに伝統と現代が共存するイタリア流のショップです。

●マリネッラ ナポリ 東京ミッドタウン
東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア1F
営業時間:11時~21時 TEL:03-5413-7651
www.marinellatokyo.jp/midtown

白タイもカラフルタイも、洗練さが薫るのがナポリ流。

「マリネッラ ナポリ 丸の内」店長の外島大輔さん。白と薄いブルーのネクタイは、3つ折りでナローなタイプ。各¥25,920

続いて日本における2号店である「マリネッラ ナポリ 丸の内」に。東京ミッドタウンより売り場面積が広く、アウターやニットなどウエア類も充実しています。クラシックなタイプのネクタイが主流を占める東京ミッドタウンに対して、同じ小紋のネクタイでもカラフルなものが人気だと店長の外島大輔さんは話します。

「生地は東京ミッドタウンと同じ、36オンスのヘビーオンスのシルクですが、ベーシックな3つ折りのタイプが人気なんです。8〜8.5cmの細身のネクタイもありまして、東京ミッドタウンとは約1cm幅が違います。生地や縫製はそのままに、デザイン的にアップデイトしたものがこれです。シャープな感じに見えますのでジャケパンスタイルに好相性で、丸の内の人気商品です」

白からピンク、オレンジ、パープルなど、カラーバリエーションが豊富に揃うのも丸の内の特徴です。36オンスのヘビーオンスのシルクながら、8〜8.5cmの幅で胸元を軽やかに彩ります。各¥25,920

外島店長によれば、丸の内は東京ミッドタウンに比べて顧客の年齢層も若い傾向にあると話します。

「丸の内という場所柄、近隣のオフィスワーカーの人たちが多く来店しますし、若い女性の方がプレゼント用に買われるケースも多いと思います。そうなると定番の9〜9.5cmでは女性には少し重く感じてしまうこともあり、8〜8.5cmのやや細身のネクタイを選ばれることが多いのです。スタイル全体が細身のシルエットになっていますからね」

それは色の傾向にもよく表れていて、イタリアの鮮やかな色彩を連想させるオレンジ、パープル、ピンクなど、カラフルな色合いのネクタイが丸の内では人気です。裏地を省いた軽やかなネクタイまで揃っていて、ジャケパンスタイルからカジュアルな装いまで幅広く合わせられそうです。

シャツ¥41,040、タイ¥25,920/ともにE.マリネッラ(マリネッラ ナポリ 丸の内 TEL:03-3217-2871) ジャケット¥405,000、パンツ¥54,000/ともにイザイア(イザイア ナポリ 東京ミッドタウン店 TEL:03-6447-0624) メガネはスタイリスト私物

マリネッラのネクタイは他者に対するホスピタリティとキャラクターを表現したものですが、丸の内の外島さんがお薦めするのは、後者のキャラクター、つまり身に着ける人のパーソナリティにポイントを置いたネクタイであり、スタイリングです。

「ナポリの本店でいちばんの人気はネイビーですが、次に人気なのが実は白のネクタイです。ナポリではネイビーのジャケットに、白いシャツと白のタイを合わせます。これがナポリでは“クラシック”な組み合わせなんです。ほかのブランドでは白のネクタイというとフォーマル用しかないことが多く、小紋柄も珍しいので、日本でも白の小紋タイを目指して来店される方もいらっしゃいます」

ナポリ流のやや明るめのジャケットに白で統一したVゾーンが、清潔さとエレガンスを感じさせます。ナポリからのリアルな情報ですから、ぜひ見習いたいものです。

東京ミッドタウンと同じく、クラシックとモダンを融合したインテリア。広々とした面積で、天井も高い。

「マリネッラ ナポリ 丸の内」の特徴は、外の通りに面しているため路面店のような佇まいをもつことと、面積が広く、天井が高いので、ゆったりとした雰囲気でショッピングを楽しめることです。

「この店はアクセサリーも充実しています。シルクの生地でつくったグラスケースはそのままポケットチーフになるので人気があります。他にも名刺入れなど、気軽に購入できるアイテムが多いですね。地方からいらっしゃる人がお土産に買われていくこともありますし、日本のこの店でしか買えない限定のものを求める海外からのお客様には、復刻させた昔の20オンスの生地を使ったアニバーサリーモデルなどをお見せすると喜ばれますね」

「マリネッラ」の知名度は海外でも相当なものですが、日本ならではのものを探しているこだわった人も多いことがわかります。

●マリネッラ ナポリ 丸の内
東京都千代田区丸の内2-6-1 丸の内ブリックスクエア1F
営業時間:11時〜20時 TEL:03-3217-2871
www.marinellatokyo.jp/marunouchi

ネクタイだけではなく、ウエアや小物類もナポリ仕込み。

「マリネッラ ナポリ 東京ミッドタウン」がオープンした時からの人気バッグ。「ソットブラッチョ」というモデル名で、意味は「脇の下」。イタリアの役人が抱えているバッグがヒントで、彼らは書類を出した後、畳んで脇に抱えるので、このネーミングに。各¥56,160

日本にある「マリネッラ ナポリ」のふたつのショップは、ナポリにある本店同様、ネクタイを中心に品揃えしていますが、他にも見逃すことができないアイテムがたくさん並んでいます。ネクタイは自社工房で生産していますが、その他の商品でも、イタリアの職人仕事を得意とする工房に発注してつくらせているものや、3代目であるマウリッツィオ・マリネッラと親交のあるブランドと特別にコラボレーションしてつくられたものなどが並んでいます。ナポリ本店で販売されているものもあり、これらのアイテムからもナポリやイタリアらしさが漂います。他のショップでは手に入らないものがほとんどで、ネクタイと並んで日本でもとても人気が高い製品です。

マウリッツィオ・マリネッラと親交の深いアウターブランド「シーラップ」とコラボしたダウンウエア。右はナイロン素材、左は「ロロ・ピアーナ」のウール素材を採用。裏地は「マリネッラ」のオリジナルの小紋柄が使われています。各¥162,000
イタリアのナポリで150年以上の歴史をもつ「マリオ・タラリコ」の傘。ハンドルから先端まで一本の木でつくられています。ハンドルは木の表情がそのまま活かされたデザイン。3代目のオーナーはマウリッツィオと親交が深いそうです。各¥68,040

ナポリにある「マリネッラ」の本店は、名品の誉れ高いネクタイを求めて世界中からお洒落な顧客が集う名店中の名店です。その名店と同じ品揃えと雰囲気が日本にいながらにして楽しめるのが、「マリネッラ ナポリ 東京ミッドタウン」と「マリネッラ ナポリ 丸の内」の2店です。小林店長、外島店長をはじめ、スタッフはナポリ流、「マリネッラ」流のネクタイの選び方と着こなしのテクニックを熟知した人ばかりです。本場の空気を満喫できるこの2店にぜひ足を運んで、その魅力に触れてください。

●問い合わせ先
マリネッラ ナポリ 東京ミッドタウン TEL:03-5413-7651
マリネッラ ナポリ 丸の内 TEL:03-3217-2871
www.marinellatokyo.jp

ナポリの老舗「マリネッラ」のショップ店長に、ネクタイ選びの神髄を聞きました。

  • 写真:森山将人(mili)
  • スタイリング:河又雅俊
  • 文:小暮昌宏

Share:

  • Line

Hot Keywords