「野生のオオカミと交流」するピアニストが奏でる、霊性と野性に満ちたメッセージのような音楽。

文:赤坂英人

現今、世界にはさまざまな個性やスタイルをもつ優れた音楽家がいる。しかし、哲学者のような知性と直感、そして野生の狼と交流できる感受性をあわせもち、現代的意匠のコンセプト・アルバムを次々と送り出すピアニストといえば、エレーヌ・グリモーをおいてほかにない。その彼女が待望のニューアルバム『メッセンジャー(使者)』をリリースした。2021年が生誕260周年にあたるヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトと、ウクライナの前衛と呼ばれた現代音楽の作曲家ヴァレンティン・シルヴェストロフの楽曲を組み合わせたアルバムで、その斬新な構成について「私はいつも予想できない組み合わせやカップリングに興味がある」と...

続きを読む