思い悩む時、小説にそれをどう書くかと考える。

文:今泉愛子

20歳で小説家としてデビューした金原ひとみは、翌年に芥川賞を受賞し、一躍、時の人となった。その後、結婚や出産、パリへの移住、そして帰国と、人生や環境が大きく変化する中で、15年以上ずっと小説を書き続けてきた。 最新長編の『アタラクシア』は、6人の男女の語りがリレー形式で進む。パリで知り合った料理人の瑛人(えいと)と、不倫中の由依(ゆい)。由依の夫で作家の桂(けい)。自身も不倫をしているが、不倫に罪悪感をもたない由依に厳しい目を向ける友人の真奈美……。それぞれが矛盾を抱え、人に言えない過去をもつ。 「いまは欲望が簡単に叶う時代だから、瞬間の欲望を満たしやすいんです。だけど長期的な関係...

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