自らの手で世界をリセットする、現代のパイドパイパーの新譜。

文:森 一起

聖と性、少女とファムファタール、天使とマグダラのマリア。ビョークはそのミッシングリンクを、自在に往来するパイドパイパーだ。今アルバムでは、その存在をアピールするが如く、フルートを掲げている。しかし、そこからまず聞こえてくるのはいくつもの鳥たちの声だ。 彼岸で囁くR2D2、あるいはテクノのようにさえずるべネズエラの鳥たち。それは、彼女が持っている70年代ベネズエラのアナログレコードからサンプリングされた。ビョークが所持する湖畔の小屋に訪れるオオハムという美しく大きな鳥たちも、アルバムに参加している。その声は、時にはリアルに、時にはレコードからのスクラッチで天衣無縫に音楽に忍び寄り、70...

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