18世紀のフランスを舞台に『燃ゆる女の肖像』が描く、 女たちの秘められた愛と連帯。

文:山崎まどか(コラムニスト)

【Penが選んだ、今月の観るべき1本】 18世紀、フランスのブルターニュにある孤島。画家のマリアンヌと伯爵令嬢のエロイーズの関係は、「観察者」と「見られていることを知らない者」として始まる。エロイーズは決められた結婚相手に送る肖像を描かれることを拒否していた。だからマリアンヌは職業を隠して彼女に近づく。しかし、エロイーズがマリアンヌに肖像を描くことを許可した時、ふたりの関係は大きく変わる。画家とミューズの物語だったら、一方的に相手を見る者と見られる者の間柄でしかない。だが、エロイーズはマリアンヌに、自分もまた彼女を見て観察しているのだと言う。ふたりの視線はぶつかり、一本の水平線と...

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