ベネツィア銀獅子賞受賞作『スパイの妻』で、黒沢清が描き出す夫婦の運命。

文:細谷美香

【Penが選んだ、今月の観るべき1本】 1940年、太平洋戦争前夜。神戸で貿易会社を営む優作は、看過できない日本の非人道的行為を知り、明るみにすべく動き出す。反逆者として疑われ、それまでと違う顔を見せる夫を妻は信じ抜こうとするが──。全体主義が押し迫る中、人はなにを信じどう生きるかという問いかけを、美しく不穏さが漂う映像に忍ばせたサスペンス。本作で黒沢清監督は、今年のベネツィア国際映画祭の銀獅子賞(監督賞)を受賞した。 現代女性の痛みを突き付ける、韓国発のベストセラー『82年生まれ、キム・ジヨン』を映画化。 ゲルハルト・リヒターの半生をモデルに、芸術家の覚醒...

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