オアシス解散からの10年間、 稀代のロックスターが歩んだ道。

文:尾崎世界観 (ミュージシャン、小説家)

【Penが選んだ、今月の観るべき1本】 「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」を歌うノエルの横でつまらなそうに座り込んでいるリアムを見た時、この人が好きだと思った。これは、そのリアムがオアシスの解散後に挫折し、這い上がるまでを追った映画だ。 自分自身、別に兄弟とは不仲じゃないし、音楽で稼いだ金で甥っ子にオモチャを買ってあげるのがささやかな楽しみでもある。でも、あれの100万分の1以下だとしても、ステージ袖に向かう薄暗くて細い通路、ステージ裏に届く集まった観客の静かな気配、SEが鳴って歩き出した時の化け物に飲み込まれるような感覚、ステージ中央に向かうまでの観声とぬるい人いきれ...

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