役所広司の名演技に引き込まれ胸かきむしる傑作『すばらしき世界』。

文:斉藤博昭

【Penが選んだ、今月の観るべき1本】 映画のタイトルは、物語やテーマを単刀直入に表現するものが圧倒的に多い。しかしタイトルが皮肉めいていたり、想像力を刺激したりして、実際に作品を観て予想を裏切られるケースも稀にある。そうした作品に傑作が多いのも事実で、この『すばらしき世界』は明らかに後者に属するだろう。 主人公の三上正夫は、14歳で少年院に入って以降、犯罪を繰り返し、殺人の罪で13年の刑期を終えたばかり。身元引受人の弁護士夫婦に温かく迎え入れられるも、新たな仕事を見つけるのは一苦労で、更生への道は険しい。自由を手に入れたはずの彼にとって現実は「すばらしい世界」と真逆。三上を受...

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