執念がなしえた描写か!? 凄味さえ漂う吉村芳生の鉛筆画を東京初の回顧展で目撃せよ。

文:はろるど

画家、吉村芳生(1950〜2013年)。「描く」ことに対して執念を感じる作家です。たとえば新聞の上に自画像を描いたシリーズ。なんと新聞の活字もすべて描いています! 『ジーンズ』は、布目まで丹念に描いた鉛筆画。「うまい!」と唸ってしまいますが、単にジーンズを熟視して描いたわけではありません。まず、ジーンズを撮影した写真を引き伸ばして2.5mm四方のマス目を書き、1マスずつ鉛筆で写し描くという手のかかるプロセスを経ているのです。吉村は「自分の手を、目を、ただ機械のように動かす」と語りました。自画像も花畑の絵も、多くは写真を拡大・転写した上で方眼を書き、1マスごとに埋めるようにして描いていま...

続きを読む