2つの展示で見る、建築家の思考。

文:川上典李子

建築家・田根剛(1979年生まれ)が拠点とするパリのアトリエは、どこか発掘現場のように思える。リサーチの過程で出合い、収集した古今東西の膨大な資料が壁一面を埋め尽くしている。 「その場所にしかない記憶を掘り起こすことから始める」のが田根の建築手法だ。「場所とは唯一のもの。空間とは無限。時間とは連続性。記憶とは意味。そしてこれらの中央に位置するのが建築」。田根はそう考え、探究を続ける。   同世代の建築家ふたりとエストニア国立博物館の国際設計競技を勝ちとったのは、26歳の時。10年後の2016年に竣工すると世界が注目した。新国立競技場基本構想国際デザイン競技に提案した「古墳スタジアム」...

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