デザイナーとしてビジネスマンとして、人生を赤裸々に語っ...
文:細谷美香

Profile : 映画ライター。コメディや青春映画から日々の生きるエネルギーをもらっている。クセが強くて愛嬌がある俳優に惹かれる傾向あり。偏愛する俳優はニコラス・ケイジです。

デザイナーとしてビジネスマンとして、人生を赤裸々に語った『ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス』

3年間におよぶ密着取材により、ヴィヴィアンの人生を紐解いていくドキュメンタリー。ⒸDogwoof

パンク・ファッションの生みの親であり、いまもなお影響を与え続けているヴィヴィアン・ウエストウッド。「デイム」の称号を授けられた、イギリス初のファッション・デザイナーである彼女のドキュメンタリーが公開されました。映画の冒頭、ショー前夜にアトリエでてきぱきと手を動かし、厳しい口調で指示を出す彼女は、80歳目前にして現役バリバリ。クルマの往来が激しい大通りを自転車で駆け抜けていくシーンは、「行くべき場所でやるべきことをやるだけ」と語る彼女の人生を象徴しているかのようです。

最初の結婚と離婚、セックス・ピストルズの仕掛け人であるマルコム・マクラーレンとの出会いと別れ。そして彼のひどい束縛とビジネスへの妨害。かつては生徒だった、25歳年下の夫・アンドレアスとの幸福な関係。そしてデザイナーとしてのものづくりの裏側まで、赤裸々に語ります。マクラーレンの裏切りによって無一文になった日々のことも、「過去の話は退屈だわ」とさっぱりとした口調で、包み隠さずに語る。そんな姿から、まさに最強のエレガンスが感じられるのです。

人生を楽しむための服をつくり続けている彼女は、揺るぎない哲学をもったビジネスマンでもあります。会社がどれだけ大きくなっても、量ではなく質にこだわり、自分の目と意志で管理する。夢物語で終わりそうな理想にあくまでもストレートに向き合うヴィヴィアンの矜持は、ファッションに興味がある人はもちろんのこと、ビジネスの世界で努力する生きるすべての人にも響くのではないでしょうか。言い訳だらけの毎日にビシッと喝を入れてくれる、刺激的なドキュメンタリーです。

監督はヴィヴィアン・ウエストウッドらと映像プロジェクトに関わってきたローナ・タッカー。ⒸDogwoof

パートナーや息子たちのほか、ケイト・モスやナオミ・キャンベルへのインタビューも。ⒸDogwoof


『ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス』

監督:ローナ・タッカー
出演:ヴィヴィアン・ウエストウッド、アンドレアス・クロンターラー、ケイト・モスほか
2018年 イギリス映画 1時間24分 
角川シネマ有楽町ほかにて公開中。
http://westwood-movie.jp