車中の電話だけで物語が進む、緊張感あふれるワンシチュエーション・ムービー。

車中の電話だけで物語が進む、緊張感あふれるワンシチュエーション・ムービー。

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は6月20日に日本公開が始まったばかり。7月3日からは『チャイルド44 森に消えた子供たち』が公開されるなど、公開作が相次ぐトム・ハーディが主演。

夜、人気のない工事現場。仕事を終えた男がクルマに乗り込みます。次の瞬間、信号待ちをしていた男は逡巡の末、ウィンカーとは別の方向へハンドルを切り、高速道路を進みます。車内の男の元にはあちこちから電話が掛かり、男もあちこちへと電話を掛け、男の置かれた状況がしだいに明らかになっていきます。男の名前はアイヴァン・ロック。大手建設会社の現場監督。どうやら、妻以外の誰かがいまにも出産しようとしているようです。仕事でもトラブルらしきものが発生中。あるいは、犯罪に巻き込まれているのでしょうか……。


本作『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』は、クルマの中という1つのシチュエーションで物語が進みます。姿が登場するのはアイヴァンを演じるトム・ハーディのみ。脚本の質とハーディの演技力のおかげで、電話での会話だけなのに緊張感が途切れない86分の映画に仕上がっています。ワンシチュエーションというと、サンドラ・ブロックが宇宙空間に投げ出された『ゼロ・グラビティ』や、ライアン・レイノルズが棺に閉じ込められた『リミット』といった作品を思い浮かべる人もいるかもしれません。


監督・脚本のスティーヴン・ナイトは、映画では『堕天使のパスポート』(スティーヴン・フリアーズ監督)、『アメイジング・グレイス』(マイケル・アプテッド監督)、『イースタン・プロミス』(デーヴィッド・クローネンバーグ監督)の脚本を手がけ評価を得てきた注目の人物。最近では『マダム・マロリーと魔法のスパイス』の脚本を担当し、今後はセルゲイ・ボドロフやエドワード・ズウィックといった監督とのプロジェクトが控えています。アクション俳優にしては小柄なのに、名だたる監督から愛されるハーディの演技力を堪能する映画でもあります。相手をなだめ、悪態をつき、焦り、泣く――さまざまな感情、表情、しぐさを駆使して、アイヴァンの危機を体感させてくれるのです。(Pen編集部)

追い越していくクルマや、すれ違うクルマにも、ひょっとしたらそんな濃厚な時間が流れているかもしれない。そんなことを思わせる、しっとりした映像も素晴らしいです。

世界的なスターであるトム・ハーディがこの作品に割くことができたのはたったの2週間。撮影は、たった8日間で行われたのだとか。

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『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』

監督/スティーヴン・ナイト
出演/トム・ハーディ
2013年 イギリス・アメリカ合作映画 1時間26分
配給/アルバトロス・フィルム 
6月27日より、YEBISU GARDEN CINEMAほかにて公開。
www.onthehighway.net

車中の電話だけで物語が進む、緊張感あふれるワンシチュエーション・ムービー。