【岩を歩く建築】緑の巨岩を縫う道、屋上テラスへ続く計画。外壁に植物や動物の居場所をつくる

  • 文:宮田華子
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ロッテルダム/オランダ

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Image courtesy of MVRDV

オランダ・ロッテルダムで、持続可能な未来をテーマにした国際建築コンペが行われ、MVRDVの「Rotterdam ROCKS!」が選ばれた。

社会的企業Shiftが主催する「シフト・エンバシー(Shift Embassy、2032年開業予定)」の計画で、2025年1月に始まったコンペには80案が集まり、最終候補に5組が残った。2026年3月に各チームが最終案を発表し、審査と検証を経てMVRDV案が選出された。

マース川南岸に計画される新地区ウォーターカントに、環境と文化をテーマにした新たな拠点が生まれる。

 

川岸 MVRDV Rotterdam ROCKS 02_From the birds eye(1).jpg
Image courtesy of MVRDV

7つの岩を歩きながら、未来を体験する

「Rotterdam ROCKS!」は、7つの岩を積み重ねたような姿が目を引く建築だ。内部には、展示を体験するためのルートと、ホテルなどの機能につながる2つの動線を設ける。

さらに岩の側面を縫うように、一般に開かれた外部ルートが上へと伸び、展望テラスへとつながる。テラスや水、緑、展示、集いの場を巡りながら、建物そのものを歩いて体験できる構成だ。

 

外部 MVRDV Rotterdam ROCKS 06_On the public route(1).jpg
Image courtesy of MVRDV

設計を手がけるMVRDVは、1993年にロッテルダムでヴィニー・マース(Winy Maas)、ヤコブ・ファン・ライス(Jacob van Rijs)、ナタリー・デ・フリース(Nathalie de Vries)が設立した建築・都市デザイン事務所。ロッテルダムの「マルクトハル」や「デポ・ボイマンス・ファン・ベーニンゲン」など、都市の風景を変える建築を手がけてきた。今回の計画にも、建築と都市、そして人の動きを一体で考える同事務所らしさが見て取れる。

館内の中心となるのは、約5000㎡の没入型体験施設「エリジウム」だ。未来について説明するのではなく、没入型アートや物語、具体的な行動への道筋を通して、来場者自身が未来を体験することを目指す。

 

エリジウム MVRDV Rotterdam ROCKS 08 On The Floors of Elysium(1).jpg
Image courtesy of MVRDV

 

エリジウム2  MVRDV Rotterdam ROCKS 15_Entering the caves of Elysium(1).jpg
Image courtesy of MVRDV

そのほか200室のホテル、教育やビジネスイベント、地域コミュニティのためのスペース、フードコート、レストラン、展望デッキなどを備える予定だ。

 

ホテル MVRDV Rotterdam ROCKS 10_A stay at Shift rooms.jpg
Image courtesy of MVRDV

  

建築そのものを環境の実験場に

この建築で特徴的なのは、環境への配慮を設備や素材だけにとどめず、建物の形そのものに取り込もうとしている点だ。外壁には無数のくぼみや隙間を設け、土や水、植物、動物の生息場所とする。建物の上へ続くテラスは、川沿いに計画される干満のある公園を立体的に延長するように設計され、人と自然のための空間を一体化させる。

 

環境  MVRDV Rotterdam ROCKS 04_On the public deck(1).jpg
Image courtesy of MVRDV

MVRDVの共同創設者ヴィニー・マースは、設計の出発点として二酸化炭素排出量の削減だけでなく、人、樹木、植物、水、空気、動物の生息環境までを含めた空間づくりを挙げている。さらに建設そのものを「公開実験」とし、どの低炭素建設の方法が有効なのか、建設による環境への影響をどこまで抑えられるのかを検証。その成果を持続可能な建築の発展につなげる考えだ。

 

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Image courtesy of MVRDV

ウォーターカントは、3750戸の住宅をはじめ、学校、文化施設、オフィス、新駅などが計画される新地区。2026年秋には地域参加のプロセスが予定されている。

 

外観  MVRDV Rotterdam ROCKS 03_In the Tidal Park(1).jpg
Image courtesy of MVRDV

今後、設計がどのように具体化され、実際の建設を通してどのような成果が示されるのかが注目される。

宮田華子

ロンドン在住ジャーナリスト/iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授

アート・デザイン・建築記事を得意とし、さまざまな媒体に執筆。歴史や潮流を鑑み、見る人の心に届くデザインを探すのが喜び。近年は日本のラジオやテレビへの出演も。英国のパブと食、手仕事をこよなく愛し、あっという間に在英20年。

宮田華子

ロンドン在住ジャーナリスト/iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授

アート・デザイン・建築記事を得意とし、さまざまな媒体に執筆。歴史や潮流を鑑み、見る人の心に届くデザインを探すのが喜び。近年は日本のラジオやテレビへの出演も。英国のパブと食、手仕事をこよなく愛し、あっという間に在英20年。