料理人・吉田能のキッチンがかなえる暮らし。人との時間をつなぎ、絆を深める空間になる

  • 写真:齋藤誠一
  • 文:石井 良
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吉田 能(よしだ・たかし)●料理人 1987年、埼玉県生まれ。パリ「ドミニク・ブシェ」での修業を経て、「ピエール・ガニェール」などで経験を積む。「ドミニク・ブシェ トーキョー」グループのエグゼクティブシェフを経て、現在は白金台「CIRPAS」のシェフを務める。YouTube「George/ジョージ」でも料理の魅力を発信。

料理人として日々食に向き合う吉田能。ジョージ名義でYouTubeでも人気を博す彼の自宅兼スタジオに鎮座するのは、LIXILのシステムキッチン「リシェル」だ。アイランドスタイルのキッチンを中心に、リビングとひと続きになった空間は、彼にとって料理をつくる場所であり、友人との関係を育む場所であり、ひとりの時間を楽しむ場所でもある。仕事の厨房とは異なる「自宅のキッチン」に、プロの料理人はなにを求めたのか。そのこだわりを通じて、「愛すべき日常」のヒントを探る。

特集『たいせつなことを、重ねる暮らし』
人と集う、ひとりで過ごす、料理を楽しむ、光や緑を感じる……。自分にとってたいせつなことが、日々の時間に重なっていく。さまざまな人の住まいのこだわりを紐解きながら、愛すべき日常を育むヒントを探ります。

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プロの料理人が考える、使いやすいキッチン

吉田が自宅を建てたのは、いまから6年以上前のことだ。可能な限り窓を多く設けた、シンプルな四角い間取りの注文住宅。設計は知り合いのデザイナーに依頼し、キッチン以外の空間は提案された案をもとにすり合わせていったという。だが、彼にとって家の中心となるキッチン空間だけは、設計の初期段階から明確な条件が存在した。アイランドスタイルを採用すること、そして背面にテーブル型の冷凍冷蔵庫、コールドテーブルを置くことだ。

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造作の収納棚には、大小さまざまな鍋やフライパン、包丁、スパイスなどがずらりと並ぶ。

「アイランドがよかった理由は、作業性とビジュアル的な抜け感です。リビングやダイニングと自然に馴染む開放感って、気持ちいいですよね。コールドテーブルは、食材の保管用というより作業台。振り返るだけで作業が完結する動線にしたかったんです」

それらの条件を満たす存在としてデザイナーから提案されたのが、LIXILの「リシェル」だった。展示で実物を見た吉田は、ソリッドでシックな質感と、自身の好む黒やグレーのカラーリングが、思い描く空間の雰囲気にぴったりだと直感する。そして最大の決め手は、料理道具を飲み込む圧倒的な“収納力”だった。

「レストランのキッチンをつくる時も、十分な収納力を担保することは絶対条件です。洋食は特に調理器具が多く、フライパンや鍋、ボウルの数も異様に多い。効率面はもちろんですが、鍋が積み上がっているような状態にはしたくないので、すっきりとしたビジュアルも大事にしました」

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LIXILのシステムキッチン「リシェル」は収納が二段になっており、また引き手側が手前に倒れるため、大きな調理器具でも取り出しやすい。

実際、リシェルの背面には収納棚を設け、調理器具や調味料など、料理に応じて必要なものを使い分けている。さらにカウンター一体型にする案を見送り、リシェルの前面も収納スペースに充てた。いざ使い始めてからは、リシェルの収納力はいろいろな場面で役立っているという。

「特にシンク下の引き出しは、リシェル特有の二段構造になっているんです。サイズの違うボウルやバットなんかを効率よく取り出すことができ、助けられています。家に来たシェフたちからも『これ、めっちゃいいっすね』と評判がいいんですよ」

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使い続けることで生まれる愛着と、自分だけのキッチン

家を建てた当初、自宅のキッチンを動画撮影のスタジオとして使うことは想定していなかったという。だが、約6年の間に働き方は変わり、空間の使い方を更新してきた。環境の変化を受け入れながら、日々の使い込みによって、キッチンに対する唯一無二の愛着が湧いてきたという。

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作業スペースが広く、効率的なキッチンカウンター。セラミックトップを採用し、美しさを長く保てる。キッチン前面はすべて収納スペースとして活用している。

「キッチンは服のように頻繁に買い替えるものではありませんが、『これはここに置く』『これはこっちにしよう』とか小物のポジション調整みたいなことって、やっぱり出てくる。毎日立って料理をする場所だからこそ、そうやって使い込んでいくうちに『自分のキッチン』という感覚が生まれて、愛着がどんどん重なっているように感じます」

吉田が使うリシェルには、料理人としての合理的な選択も反映されている。洗い物のしやすさも考慮し、広めのシンクを選んだのは必然だった。職業柄、大きな魚の下処理などをすることもあり、この広いシンクが活躍してくれている。

「シンク内側のステンレスは、鏡面仕上げではなく少しマットに加工されているんですけど、その高級感や質感がいいなと思って。僕自身、黒やグレーが好きなので、自分のカラーにも合っている気がします」

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木と黒、グレーで統一されたリビングダイニング。「リシェル」のカラーは高級感のあるグレーズグレーを選び、空間に美しく溶け込ませた。

さまざまな変化に対応しながら、料理人として駆け抜けてきた約6年間。愛着のある自分だけのキッチンで過ごす時間は、吉田にとって心安まる時間でもある。

「仕事では誰かのために料理をつくっているので、いつも神経を研ぎ澄ませています。でも、自宅ではまっさらな気持ちでキッチンに立てる。動画も回さず、自分のためだけに料理をつくっている時は、自分をリセットできる大切な時間でもあるんです。さばの塩焼きと納豆とか、凝った料理じゃないですが、むしろそれがいいんですよね」

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人との時間をつなぐ、アイランドキッチンのある空間

キッチンとダイニングテーブルの距離は近く、リビング側から料理をする手元まで見えるほどだ。このオープンな構造は、空間を共有する人々との自然な交流を促す装置としても機能している。

「友人を招いたときには僕がひとりでキッチンに立つことが多いのですが、調理をしていてもリビング側に背を向けることなく、常に目線が合う状態になるので、コミュニケーションがとても取りやすい。他愛ない会話でも輪から外れないから、自然と笑顔になれる空間をつくってくれています」

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仲間が集まり活気に満ちあふれる場所でありながら、ひとりの時間もまた、静かで心地よい。

YouTubeを始めてからは、先輩や後輩の料理人を呼んで一緒にキッチンに立つ機会も増えた。プロ同士で調理が激しく立て込むような場面でも、ストレスなく作業を行えるのがアイランドキッチンの強みだ。

「仕事が絡むことも多いので、『めちゃくちゃオン』の空気になりますし、集中するあまり、先輩相手でも『塩取って!』なんて言ったりもする。それくらい作業が立て込む真剣勝負になっても、ワークスペースの周りをぐるぐると回れる回遊性と、ゆとりあるワークスペースのおかげで、大人3人でもごちゃごちゃせずに料理ができるんです。気の置けない仲間との時間から、プロ同士、緊張感のある作業まで、どんなシーンや人間関係も自然と受け止めてくれる懐の深さがありますね」

「どんな日常を過ごしたいか」という理想の暮らしを起点に住まいを仕立てていく、LIXILのコンセプト「Lifescape Design」において、キッチンを中心とした吉田の自宅は、主要テーマのひとつである“絆が深まる”暮らしを体現しているといえるだろう。家族はもちろん、友人や同業の仲間まで、誰でもオープンに受け入れるこのキッチンは、空間をともにする人との関係性を深めるハブになっている。

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キッチンは日々使うからこそこだわりたい。LIXILのキッチン「リシェル」はミニマルで洗練されたデザインで、毎日の気分を高揚させる。
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焼き物であるセラミックトップを天板として使用。熱やキズ、汚れに強く、光の移ろいによって豊かな表情を見せる。

単なる作業場ではなく、住まう人のライフスタイルを反映し、人とのつながりを育む場所へ。プロの料理人がひとりの時間を楽しみ、仲間との絆を深めるこのキッチンもまた、人生の変化に寄り添いながら「愛すべき日常」をつくりだす大切な空間にほかならない。

 

Director Maco Maco / DP Ryoga Yamada / Editor Eric D

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