温泉地での滞在を記憶したアートを展示中。金沢の気鋭ギャラリー「YAMADART」

  • 文:Pen編集部
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そもそも実用品として生み出された工芸品がいまや “KOGEI”として世界的に評価され、若者たちが地下鉄やビルの壁面に描いたグラフィティに起源を持つストリートアートもギャラリーや美術館で鑑賞されている。時代とともに、あらゆるものが当初の成り立ちとは異なる価値を纏うものだが、石川県金沢市で2026年3月にオープンしたギャラリー「YAMADART」は、そのような越境性に着目して作品を展示する。

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アーティストKINJOの新作が数多く展示されているYAMADART。彩色した上に黒で塗り潰すことが多いKINJOだが、今回はあえて色を残したものも並ぶ。

開廊後3回目となるYAMADARTの展覧会『Still Warm』では、ストリートカルチャーを背景に持つアーティスト、KINJOの新たな試みを目にすることができる。KINJOは東京生まれ、沖縄にルーツを持つ。身の回りにあったアメリカ由来の視覚文化や日用品など、異なる場所から流入してきたイメージを、個人的な記憶や経験を通して捉え直してきた。絵画や立体作品に繰り返し現れる"目"も、そうした制作のなかで長く扱われてきたモチーフのひとつである。そのきっかけについてKINJOは次のように話す。

「“目”は、幼い頃から意識していた他者の視線をきっかけに描き始めたモチーフです。描くことと消すことを反復することで輪郭や意味が曖昧になり、次第に個人的な経験から切り離されたイメージとして扱うようになりました」

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KINJOの代表的なモチーフである“目”を反復的に描き、消す。その過程で輪郭を薄く、曖昧に見せている。

アクリルやスプレー、油彩など、それぞれ異なる性質を持つ素材を作品に応じて使い分けてきたKINJO。本展では、乾燥に時間を要する油彩を用いた作品も多く発表している。湿度や気温、光といった周囲の環境に触れながらゆっくりと乾き、わずかに状態を変えていく作品。その変化に流れる時間も、今回の展示を構成するひとつの要素となっている。

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油絵の具を手にしたのは5年ぶりだというKINJO。乾燥するのに1週間以上かかる作品もある。

また、YAMADARTは石川県加賀市の渓谷に位置する温泉地、山中温泉の老舗旅館「花紫」が運営するギャラリーだ。古くから旅館には、土地の文化や自然に触れながら制作を行う営みが存在する。YAMADARTではそのような歴史を踏まえ、アーティストが山中温泉に滞在することで生まれる、新たな表現を試みている。

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制作手法を固めずにキャンパスと対峙してつくり上げた数々の作品。展覧会は11月末まで開催されているのでじっくりと目にしてほしい。

今回招かれたKINJOも山中温泉に2週間以上滞在しながら制作を実施。現地の短い日照時間や、人の気配がない路地のムードなど山中温泉で得た身体的な感覚を、描く・消す・覆うという行為を通して作品へと落とし込んだ。滞在した時間や制作の痕跡が、作品の内側に留まり続けている。

『Still Warm』

開催期間:9月12日〜11月29日
開催場所:石川県金沢市香林坊2-12-35 YAMADART
開館時間:12時〜17時(金、土、日)
※月〜木はアポイント制
無料
www.instagram.com/yamadart_japan