シドニー/オーストラリア
オーストラリア・シドニー西部のパラマタに、新たな文化施設「パワーハウス・パラマタ(Powerhouse Parramatta)」が誕生する。
2026年11月7日に開館する同館は、ウェスタン・シドニー初の州立文化施設であり18,000㎡を超える展示・公共スペースを備える。新館の建設に加え、収蔵施設の整備などを含む総額9億1500万豪ドルのプロジェクトとして進められてきた。
建物を取り囲むのは、1300個を超えるW、X、N、A字型の鉄骨部材による外骨格だ。高さ4〜20mの部材が格子状の構造を描き、内部には柱のない大規模な展示空間を生み出している。
アート、科学、デザインが交差するミュージアム
パワーハウス・パラマタは、アート、デザイン、科学、テクノロジーを横断する「応用芸術と科学」のミュージアムである。開館時には5つの大型展覧会を開催し、3000点以上の作品や資料を紹介する。そのうち1600点以上は、パワーハウスが所蔵するコレクションから出品される。
開館記念展には、航空と宇宙をテーマにした「タスク・エターナル(Task Eternal)」、英国のアーティスト、エス・デヴリン(Es Devlin)による「エス・デヴリン:ザ・ターニング(Es Devlin: The Turning)」、先住民の視点から水や環境を考える「オーバーフロー(Overflow)」、子どもを対象とした「ザ・ダーク(The Dark)」、そしてショッピングモールという建築形式を取り上げる「ザ・モール(The Mall)」が予定されている。
「間(ま)」と余白を生かすモロー・クスノキ
建築を手がけたのは、フランスと日本にルーツを持つパリの建築設計事務所、モロー・クスノキ(Moreau Kusunoki)と、オーストラリアの建築事務所ジェントン(Genton)。構造・エンジニアリングはアラップ(Arup)が担当した。
モロー・クスノキはニコラ・モロー(Nicolas Moreau)と楠寛子(Hiroko Kusunoki)が2011年に設立。フランスと日本という異なる文化的背景を持つふたりは、空間や時間のスケールを行き来しながら、用途を限定しない「間(ま)」を設計の重要な要素としている。
モロー・クスノキの設計案は、2019年の国際デザインコンペで選ばれた。外骨格を単なる外装ではなく構造そのものとして取り入れ、外周に構造を集約することで、内部には柱のない大規模な展示空間を確保している。7つの柔軟な展示空間は透明な接続空間によって結ばれ、展示を見るためだけではなく、立ち止まったり、交流したり、休んだりできる「間」が館内に生まれている。
建物をパラマタ川の河岸からあえて後退させ、川沿いの緑地を公共空間として残すことも設計の重要な意図だ。川の形に沿って建物を湾曲させるのではなく、建築と川の間に距離をおくことで、都市と川の双方に開かれた場所を作り出した。
ウェスタン・シドニーの新たな文化拠点へ
建築、展示、そして川沿いの公共空間を一体的に計画したパワーハウス・パラマタは、単に新しいミュージアムというだけではない建築そのものを通して人と場所との関係を考えるプロジェクトでもある。
従来のミュージアムの枠組みを広げる新たな文化施設として注目が集まる。





