ポケモンカード30周年コラボと『彼方との交信/BEYOND EARTH』 宇宙と交信する、キャリア最大の個展へ TRIP #32 YOSHIROTTEN

  • 文:藤村はるな
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グラフィック・空間・映像・アートピースなど、さまざまなアプローチで制作活動を行うアーティストYOSHIROTTEN。
この連載では「TRIP」と題して、古くからの友人であるNORI氏を聞き手に迎え、自身の作品、アート、音楽、妄想、プライベートなことなどを織り交ぜながら、過去から現在そしてこれからを、行ったり来たり、いろんな場所を“トリップ”しながら対談します。


世界的に盛り上がりを見せるポケモンカードゲーム30周年。そのアートワークを手がけているのが、YOSHIROTTENだ。ミュウexやミュウツーex、ピカチュウex、エネルギーカードなどのグラフィックを担当し、大きな話題を呼んだ。そんな彼が、2026年10月30日、虎ノ門ヒルズ ステーションタワー TOKYO NODEにて、自身過去最大規模となる個展『彼方との交信/BEYOND EARTH』を開催する。今回はYOSHIROTTEN本人にふたつの大きなプロジェクトが同時に動くいま、その舞台裏について単独で話を聞いた。


──ポケモンカードゲームの30周年における制作が反響を呼んでますね。

YOSHIROTTEN:実はこれ、3年半くらい前から温めていたプロジェクトなんです。拡張パックに入っている新レアリティ「FUR(フューチャリスティックレア)」のミュウexとミュウツーexのほか、記念商品「30th CELEBRATION FUTURISTIC BOX」のプロモカードとして2種類のピカチュウex、8種類ある基本エネルギーカードのグラフィックを担当しています。最終的なポケモンの表情や形はディレクションしてもらい、僕はあくまでコンセプトとアートワークという立ち位置で入っています。

──YOSHIROTTENさんらしいネオンカラーや光を感じるホログラムなどが印象的なグラフィックですが、どんなコンセプトのもと生まれたのでしょうか。

YOSHIROTTEN:ベースにしたのは、僕が長年活動のテーマにしてきた〈FUTURE NATURE〉のコンセプトです。僕らが普段見ている景色や、目の前に広がっている街並みは、いわゆる可視光線で見えている世界ですよね。でも、地球にも宇宙にも、目に見えない光がもっと無数にあって、見えない世界が広がっていると思うんです。その光でこの世界を見たときにどうなるのかと想像を膨らませたり、実際にあるデータを使って可視化したりすることで、いろんな発見があるはず。〈FUTURE NATURE〉は、そんなテーマのもとに生まれたものです。

今回のカードを手掛けるにあたって、ひとつテーマになったのが、先方からいただいた「DayとNight」というコンセプトです。ポケモンの世界にも昼と夜がありますが、その世界を新しい光を通してみたらどうなっているか。そして、そこにミュウやミュウツーなどのポケモンが現れたらどうなるかを想像しながら、カードを描きました。

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ポケモンカードゲーム30周年の節目に発表された、YOSHIROTTEN氏が手掛けたカードのイラスト。左がミュウex、右がミュウツーex
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FUR仕様で登場したピカチュウexのプロモカード。「DayとNight」というコンセプト通り、ピカチュウを2種類のカードで表現

 

──インスピレーションを得るために、したことはありますか?

YOSHIROTTEN:実際にゲームをプレイしたり、アニメを観たりするほか、イベントにも行きました。それが、制作のインスピレーションにもつながりましたね。

──サンフランシスコで行われた世界大会「ポケモンワールドチャンピオンシップス2026」にも足を運ばれたそうですね。どうでしたか?

YOSHIROTTEN:すごかったです! 街の一角が丸ごと貸し切られて、世界中から何万人という人が集まって、まさにポケモンの祭典という感じでした。決勝は少し離れたスタジアムで行われていたんですけど、床が全面LEDになっているなど、とにかく豪華でした。


あと、ゲーム自体もおもしろかった。この大会は、ゲーム部門、カードゲーム部門、『ポケモン GO』部門、『ポケモンユナイト』部門のそれぞれの世界一を決める大会なんです。僕はゲームの競技大会をちゃんと見たのは初めてだったんですけど、その熱気に圧倒されました。

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サンフランシスコで開催された大型ファンイベント「ポケモンXP」の様子

 

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・YOSHIROTTEN氏が担当したアートワークの巨大カードも展示 ©Pokémon/Nintendo/Creatures/GAME FREAK
ポケットモンスター・ポケモン・Pokémonは任天堂・クリーチャーズ・ゲームフリークの商標です。

 

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同じくサンフランシスコで開催された「ポケモンワールドチャンピオンシップス2026」

 

──10月30日から虎ノ門ヒルズの屋上で開催される〈ポケモンカードゲーム&ヨシロットンパーク〉はどんな内容なんですか?

YOSHIROTTEN:僕が作ったアートワークをいろいろ体験できる空間になっています。「FUR」カードの世界観をLEDスクリーンに映し出すほか、仕掛けはたくさんあるんですけど……、やっぱり直接来て体験してみてほしいので、ここでは言いません。どんな体験になるかは、来てみてびっくりしてください(笑)。

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〈ポケモンカードゲーム&ヨシロットンパーク〉シミュレーション画像

 

──これまでの活動と比べて、今回の反響はどう感じていますか。

YOSHIROTTEN:自分が作ったものがこんなに多くの人の手に届いたのは、多分今までで一番だと思います。それを特に実感したのが、数日前、渋谷でDJをしていたとき。おそらく秋葉原で日本版限定のカードを買いに来たアメリカ人の人が「今日、あなたがDJをやると知って、見に来ました」と声をかけてくれて。あと、インスタにも世界中からファンの人がメッセージをくれるようになりましたね。世代も地域もばらばらの人たちが、シンプルにポケモンを好きでいてくれる。その世界に混ぜてもらえたのは、素直に嬉しいです。

──続けて、10月30日から始まる個展「彼方との交信/BEYOND EARTH」についても伺えますか。今回はJAXAの全面協力のもと生まれた展覧会ですが、宇宙をテーマにした理由は?

YOSHIROTTEN:会場となる虎ノ門ヒルズの45階から、まだ何もない状態のフロアを初めて見せてもらったんです。そこで、東京の街をずっと見下ろしていたら、だんだん目線が上に上がっていって、宇宙がすごく身近に感じられて。そこから「宇宙と交信するような展覧会をやってみたい」と思いました。僕はどの展覧会でも、その場所で何が起こるかを大事にしているので、あそこが地下だったら、たぶん宇宙がテーマにはならなかったと思いますよ。

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《SUPERNOVA》

──東京では8年ぶりの大規模個展になるそうですね。

YOSHIROTTEN:今回は森ビルさんから声をかけてもらった展覧会なので、これまでの自主企画とは違う感覚があります。

――具体的な作品についても教えてください。

YOSHIROTTEN:〈RGB〉〈FUTURE NATURE〉〈SUN〉という自分の中の大きな3つのシリーズを軸にしているんですが、〈RGB〉は過去最大の144台のモニターを使ったインスタレーションに、〈SUN〉についても、高さ10メートルのフロアの中で、こちらも過去最大の7メートルサイズの作品を宙に浮かせる予定です。また、〈FUTURE NATURE〉はJAXAさんの協力で新しい展開を見せていて、ブラックホールの観測データを使った作品や、実際に1970年に人工衛星「おおすみ」を飛ばした管制卓を復活させての展示、恒星の軌道を彫刻にした作品、超新星が爆発する前のドラマを自分なりに想像して描いた作品もあります。

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会場シミュレーション風景
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日本初の人工衛星「おおすみ」でも使用された管制卓。 撮影:宮前一喜

 

あと、TOKYO NODEのギャラリーには60メートルほどの広さの部屋があるのですが、その空間は仕切りを作らず、窓も開放した状態で展示する予定です。天気や時間帯によって表情がずっと変わり続ける展示になるはずだし、多分TOKYO NODEとしても初めての空間の使い方になるんじゃないかな……。そのほかにも用意してある仕掛けもあるので、そこはぜひ楽しみにしてほしいです!

──展覧会以外のスペースも充実しているみたいですね。

YOSHIROTTEN:平日は13時、休日は10時から17時までは先ほどのポケモンのパーク、17時半から22時までは無料開放の〈ビヨンドアースガーデン〉という、アンビエントアートのような空間に変わります。

あと、同じ期間、J-WAVEで深夜に〈アンビエントラジオ〉というラジオ番組もやります。作品のことだけじゃなく、音楽を通していろんなことを伝えられたらと思っています。会場には〈ミュージックバー宇宙〉というレコードバーもつくっていますね。開催日はまだ検討中ですが、誰かがDJをしに来て宇宙っぽいレコードをかけてくれる予定です。レセプションの日には海外からミュージシャンを2人呼んでセッションもします。

──会期中はめちゃくちゃ忙しいですね! 

YOSHIROTTEN:はい、フル稼働します! あと、物販もいろいろ面白いことを考えていて……。まず、BEATINKというUKと東京にあるレコード会社とのコラボレーションで1000枚限定で、僕が選曲したコンピレーションのアナログレコードが出ます。なんとブライアン・イーノの初のアナログ化音源のほか、WARP RecordsやDominoなどのレーベルから展覧会のイメージに合わせた楽曲を選曲しています。OPN(Oneohtrix Point Never)やララージと言った僕の好きなミュージシャンからオリジナル音源まで展覧会を音として持ち帰るような面白い内容になっていると思います。

そのほか、特殊仕様に加工したKM5のCDプレーヤーや、Tシャツ、ポストカード、音の塗り絵ができるノート、〈宇宙百景〉という作品をトレーディングカード風にしたものなども用意しています。あと〈BEYOND EARTH MAGAZINE〉というフリーペーパーを3万部つくっています。理論物理学者の野村泰紀教授との対談や、宇宙移住計画を進めている会社の方、JAXAの研究者へのインタビューなど、展覧会の外側からもこのテーマを楽しんでもらえれば、と。

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〈km5 - Instant Disc Audio Cp2 YOSHIROTTEN Model〉シミュレーション画像
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フリーペーパー〈BEYOND EARTH MAGAZINE〉

──最後に、この展覧会をどんな気持ちで迎えていますか。

YOSHIROTTEN:ポケモンカードのプロジェクトもそうですけど、今回の個展もこれまでやってきたことの延長線上にあるものです。ただ、宇宙という視点を通すことで、いつもと違う距離感で自分の作品を見てもらえるんじゃないかなと思っていて。直前まで言えないこともたくさんあるし、実際に現地でしか体感できないことも多いので、ぜひ足を運んでもらえたらうれしいですね!

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『ヨシロットン展 彼方との交信/BEYOND EARTH』

会期:2026年10月30日(金)〜2027年1月11日(月・祝)
会場:東京都港区虎ノ門2-6-2虎ノ門ヒルズステーションタワー45階・49階 TOKYO NODE GALLERY A/B/C、SKY GARDEN & POOL(虎ノ門ヒルズ ステーションタワー45階・49階)
開館時間:13:00〜22:00(月〜金)、10:00〜22:00(土)、10:00〜20:00(日、祝)
※入館は閉館の30分前まで
一般料金:¥2,200(月〜金)、2,500(土、日、祝)
https://www.tokyonode.jp/events/yoshirotten/index.html

 
アーティストYOSHIROTTENの「TRIP」 
連載記事一覧

 

YOSHIROTTEN

グラフィックアーティスト、アートディレクター

1983年生まれ。デジタルと身体性、都市のユースカルチャーと自然世界など、領域を往来するアーティスト。2015年にクリエイティブスタジオ「YAR」を設立。銀色の太陽を描いた365枚のデジタルイメージを軸に、さまざまな媒体で表現した「SUN」シリーズを発表し話題に。24年秋に鹿児島県霧島アートの森にて自身初となる美術館での個展が決定。


Official Site / YAR

YOSHIROTTEN

グラフィックアーティスト、アートディレクター

1983年生まれ。デジタルと身体性、都市のユースカルチャーと自然世界など、領域を往来するアーティスト。2015年にクリエイティブスタジオ「YAR」を設立。銀色の太陽を描いた365枚のデジタルイメージを軸に、さまざまな媒体で表現した「SUN」シリーズを発表し話題に。24年秋に鹿児島県霧島アートの森にて自身初となる美術館での個展が決定。


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