DENMARK デンマーク/オーデンセ
photo:Rasmus Hjortshøjデンマーク第3の都市オーデンセに、ある企業が本社ビルを建設した。うねるような独特の屋根の形状がひときわ目を引くが、随所にこの企業の価値観を反映した機能的なデザインが取り入れられており、単なるオフィスビルを超えた建築として高い評価を受けている。
photo:Rasmus Hjortshøj波打つ独特の屋根 太陽光パネルで発電も
オーデンセは、首都コペンハーゲンから電車で約1時間のフュン島中部にあるデンマーク最古の都市の一つで、童話作家、ハンス・クリスチャン・アンデルセンの出身地として知られている。この地に本社ビルを完成させたのが、陶器鉢や園芸資材などを扱うダイマック社だ。新社屋は工業地帯と人工湖のグリショルム湖を取り囲む場所にあり、円形の建物が中庭を囲むように設計されている。
屋根は北に向かって持ち上がるようにデザインされており、北側からは近くの森のパノラマの景色を眺めることができる。屋根を南側に下げたのは、日陰を作り、室内の環境を最適化し、騒音を軽減するためでもあるという。屋根には約880枚の太陽光パネルが設置され、オンサイト発電が行われている。デザインを担当したビャルケ・インゲルス・グループ(BIG)の創設者兼クリエイティブ・ディレクターのビャルケ・インゲルスは、メビウスの輪を彷彿とさせる屋根の形はユニークなだけではなく、機能面でも独自の性能を発揮していると語っている。
photo:Rasmus Hjortshøj自社製品を取り込んだ建築 職場が素材カタログに
建物には低炭素素材が積極的に採用され、埋め込み炭素量を低減しつつ、温かみのある有機的な雰囲気を醸し出している。実はこの建物は職場であると同時に、ダイマック社が展開する天然素材商品やサービスのポートフォリオを形にした「生きたカタログ」としても機能。木材、粘土、コルク、アマモ(海藻の一種で、近年究極のサステナブル素材として注目されている)、リサイクル紙繊維など、素朴で手触りの良い素材が使用されている。ファサードは格子状の木材とガラスで構成され、2つの素材の相互作用が空間に自然光を導き入れる。デンマークでは日光を浴びられる時間が限られているため、自然光を最大限に活用するための工夫だ。床にはレンガが敷き詰められ、内部から円形劇場をイメージした中央の中庭へと続いている。在来種を植えた緑豊かな中庭は、気軽な集まり日常の社交の場として機能している。1階にはショールーム、写真スタジオ、フィットネス施設を配置。上層階にはオープンプランのワークスペース、会議室、ラウンジエリアが設けられており、スタッフやビジターの多様なニーズに対応している。
企業の価値観を象徴 サステナブル建築としても高評価
新本社は、ダイマック社の4つの価値観を視覚的に融合させたものだという。まるで永遠に動き続けているかのような建物の形状は「ダイナミックさ」を象徴。オフィス機能だけでなく、生きたショールームの役割を持つ建物内部は、「革新性」を表している。木材と金属で構成された建物の構造と見事に融合したスカンジナビア風の外観は「信頼性」をもたらし、外から内部が見通せる全面ガラス張りのファサードは、「透明性」の象徴でもあるという。この建物は、世界を代表するグリーンビルディング認証の一つとして知られているドイツ持続可能建築評議会(DGNB)のゴールド、ハート、ダイヤモンドという3つの認証を取得している。総合的なエネルギー性能、従業員の持続的幸福への配慮、建築の質が評価されており、オフィス空間の設計に新しい風を吹き込む建築となっている。
Webライター
早稲田大学第一文学部卒業。レコード会社に勤務した後に渡米し、コミュニケーション学の修士号取得。米ノースウエスト航空機内誌の編集を経て、日本航空の機内エンターテイメントの選定買付に携わる。夫の転勤で通算9年の東南アジア滞在後、帰国して世界のニュースを紹介するライターに。現在は関西の片隅で、仕事の合間にフランス語学習に奮闘中。
早稲田大学第一文学部卒業。レコード会社に勤務した後に渡米し、コミュニケーション学の修士号取得。米ノースウエスト航空機内誌の編集を経て、日本航空の機内エンターテイメントの選定買付に携わる。夫の転勤で通算9年の東南アジア滞在後、帰国して世界のニュースを紹介するライターに。現在は関西の片隅で、仕事の合間にフランス語学習に奮闘中。



