【新型マセラティ・グレカーレ】なぜ“シャークノーズ”を強調? デザイン責任者が語る、新しいブランドの顔

  • 文:小川フミオ
  • 写真:Maserati
Share:

マセラティがSUV「グレカーレ」の改良を行い、2026年7月の終わりに「グレカーレ・トロフェオ」のテストドライブの機会を提供してくれた。

IMG_0098.jpeg
全長4.8mの車体に高出力のV6エンジンと4輪駆動システムを搭載するグレカーレ・トロフェオ。(写真:筆者)

マセラティといえば、100年以上の歴史をもつイタリアのスポーティカー・メーカー。海神が持つ三叉の鉾は、世界でもっとも知られたエンブレムのひとつだ。

デザインの面から興味深いのは、スポーティ性と、これまで同社が喧伝してきた官能性といった要素を、どうやって、プロダクトのなかに取り込んでいくか。その手法だ。

実際、今回フェイスリフト(フロント部分のデザイン的変更)を受けた際、「これですべてのマセラティ車に共通のイメージが出来上がった」と同社のデザイナーは語った。

NEW MASERATI GRECALE TROFEO V6(5)のコピー.jpg
SUVにもレーシングスピリットを盛り込んだとマセラティはうたう。

「新しいグレカーレのデザインについて語るとき、ふたつの基本的な要素を強調しておきたいと思います」

テストドライブした舞台となったイタリア・トリエステの会場で、マセラティ・チェントロスティーレ(デザインセンター)でヘッドオブデザインを務めるクラウス・ブッセ氏は語った。

「ひとつは、私たちはこれで“ジャーニー”を完了させたこと。MC20にはじまり、GT2ストラダーレ、MCプーラ、それにグランツーリスモとグランカブリオに連なるアイデンティティの確立です」

maserati-mc20-cielo-spyder-makes-north-american-debut-in-california-2.jpg
低い車体、ミドエンジン、2シーター、ディヒドラルドアとスポーツカーとしての魅力がたっぷりのMC20。

MC20は2020年に発表された、ミドエンジン(エンジンを後車軸の前に搭載するレイアウト)で2座のスポーツカー。近年のマセラティにとって画期的な企画だった。

「ふたつめは改良。これまでもよくできていたと自負がありますが、さらによくなったと思っています。エンジンも性能が上がったし、内容のアップグレードには特に注目していただきたい」

IMG_9712.jpeg
マセラティのヘッドオブデザインを務めるクラウス・ブッセ氏はたいへん聡明で興味ぶかい話題を提供してくれるひと。(写真:筆者)

ブッセ氏が挙げたのは、“よりスポーティになった”とする新しいデザインのステアリングホイール、ディスプレイのグラフィクス、“本当の素材を使った”という時計、そしてやはり“本当の素材を使いつつデザインを一新”したスイッチ類。

「リデザインの背景にあるのは、エモーションとモダニティ。官能性とは、イタリアのクルマですから、職人が手でモデルをつくり上げたうつくしい彫刻のようなデザインを意味しています」 

new-maserati-grecale-2.jpg
走る彫刻のような美しいエクステリアデザインを特徴とするグレカーレ。

もうひとつのモダニティはーーとブッセ氏は続ける。

「最新のテクノロジーをインテリアに使い、さまざまな機能を盛り込んだことを意味しています」

今回の新しいグレカーレでは、仕上げを語るとき、クラフツマンシップ、つまり熟練した職人技に言及される。マセラティは“イタリアのクルマ”であることを強く意識しているのだろうか。

「当然です」とブッセ氏は言う。

「そこが大変重要な点です。マセラティは(本社を置く)モデナのメーカーであり、それ以上にイタリアのメーカーであることを重要視しています」 

New Maserati Grecale_GranTurismo_GranCabrio_Media Drive_Trieste 2026  (5)のコピー.jpg
トリエステのヨットハーバーが似合う。

なぜ、イタリアをここまで意識するのか?

「イタリアのいいところは、人を惹きつける魅力にあります。世界中から、遺跡、建築、美術館、フード、ファッションといった、イタリアでしか見られないものを求めて人がやってきます」

そんな“イタリア”がグレカーレを含めたマセラティのプロダクトに見つかる。そこがデザインの核なのだそう。

IMG_0081.jpeg
ホールド性のしっかりしたバケットシートと握りの太い変形ステアリングホイールがグレカーレ・トロフェオの特徴。(写真:筆者)

「グレカーレを見てください。イタリアを代表するものに共通する要素が入っています。車体色だって、個性的な美しさがあると思います。イタリアは色彩の土地ですから」

ブッセ氏が触れているとおり、乗ればほぼ一瞬でグレカーレ独自の官能性が感じられる。

グレカーレ・トロフェオは、F1由来という技術を設計に活かした3リッターV6エンジン搭載。本国では4気筒からバッテリー駆動まで6車種あるラインナップの頂点に位置する。 

IMG_0026.jpeg
モニター画面の下に4つ並んだピアノキーが変速機のギアセレクター。(写真:筆者)

金属製のピアノキータイプとなったギアセレクターでD(ドライブ)を押し、アクセルペダルを踏み込むとーー軽く足を置いたつもりが、ぐーっと強いトルクで車体が進んでいく。

そのさきは、まことにスムーズに加速。自動車レースの最高峰であるF1由来のエンジン技術を設計に取り込んだV6エンジンと、それを活かす操縦性がたっぷり味わえる。

思いのままに加減速ができるエンジンの制御と、少し硬めで車体のロールを抑えたサスペンションの設定が、じつによいコンビネーションだ。 

NEW MASERATI GRECALE TROFEO V6(3)のコピー.jpg
フェイスリフトを受けて「シャークノーズ」デザインがより強調されるようになった。

シートはスポーツカーのように、からだをしっかり支えてくれるバケットタイプだし、多角形形状のステアリングホイールも、レースカーのような人工スエード巻きで、滑らず握っていられる。

私がドライブしたトリエステは、すぐ隣がクロアチア共和国との国境だ。かつてはアウストロ・ハンガリー帝国に属しており、港湾都市として栄えてきた。 

New Maserati Grecale_GranTurismo_GranCabrio_Media Drive_Trieste 2026  (1)のコピー.jpeg
クロアチアのワインブドウ畑を走る。

マセラティ広報部が用意してくれたドライブルートは、トリエステを出発して、クロアチアの山岳地帯を走るというもの。

戦前からあたりでは、トリエステ=オピチナ間のレースが行われていた。山を超えて内陸の都市オピチナまで、山岳地帯を駆け上がっていく。マセラティはここで3回優勝を経験している。

「トライデントのロゴの100周年であり、タルガフローリオレースで最初に優勝してから100周年でもあり、記念すべき年にふさわしいドライブを提供したいと考えました」 

IMG_9740.jpeg
メディア向け発表会場に置かれたあざやかな赤色の新グレカーレ。(写真:筆者)

マセラティを好む人たちの心に響かせるには、なにが必要か。同社の歴史を垣間みせてくれるような解説を聞くと、このブランドは自社の価値をよくわかっている、と思うのだった。

マセラティ グレカーレ トロフェオ

全長×全幅×全高:4876×2163×1660mm
ホイールベース:2901mm
車重:2027kg
2992cc V型6気筒 全輪駆動
最高出力:390kW@6500rpm
最大トルク:620Nm@3000〜5500Nm
変速機:8段オートマチック
乗車定員:5名
加速性能:0-100kph 3.8秒
最高速:285kph
燃費:8.9km@l(WLTC本国データ)
価格:未定 
www.maserati.com/jp/ja

小川フミオ

モータージャーナリスト

自動車を中心に活躍するジャーナリスト/ライター。自動車誌やグルメ誌の編集長を務めた後、フリーランスとして活動。新車の試乗記をはじめ、グルメ、ホテル、人物インタビューなど、多岐にわたるジャンルの記事を独自の視点で執筆し、雑誌やウェブメディアを中心に寄稿している。

小川フミオ

モータージャーナリスト

自動車を中心に活躍するジャーナリスト/ライター。自動車誌やグルメ誌の編集長を務めた後、フリーランスとして活動。新車の試乗記をはじめ、グルメ、ホテル、人物インタビューなど、多岐にわたるジャンルの記事を独自の視点で執筆し、雑誌やウェブメディアを中心に寄稿している。