夏になると、軽井沢へ向かう。金曜の夜に都心を抜け、関越から上信越へ。標高が上がるにつれ外気温が落ち、身体にまとわりついていた東京の時間が少しずつ遠ざかっていく。日曜の夕方、混雑が引くのを待って同じ道をまた東京へと帰る。「レンジローバー・スポーツ」はそんな夏の週末にうってつけのクルマだと思う。
都会も峠も自在にこなす、レンスポの“本領”
「レンジローバー」は、郊外と都会を往復する姿がよく似合う。自然の中にあっても、東京のど真ん中にあっても存在感が変わらない。しかもレンスポなら、着いた先のワインディングまで遊び尽くせる。この役回りは「我が意を得たり」って感じなんだな。
かつて、ジャガー製の5L V8スーパーチャージドを積んだ2代目レンスポを友人が所有していた。重い箱型ボディに強大な力を抱え、高速でアクセルを深く踏み込むには、こちらにも少しばかりの覚悟が必要だった。そこをぐっと踏み込むと、夜の関越道に奔馬を駆る騎士が現れる。
大音量のBGMとV8の咆哮が重なるなか、あふれ出すトルクに速度を乗せていく。踏み込むと、腰から上だけが一瞬遅れて置いていかれ、身体ごと夜の関越道へ放り込まれる感じ。停車していても、その佇まいは剛健なのに艶がある。いま思い返せば、あの二面性こそが醍醐味だった。古き佳き英国製SUVの荒々しさまで、あえて残しているような風情があった。
その記憶を抱えたまま最新のレンスポV8に乗ると、隔世の感に打たれる。別人なのに、血筋は疑いようがない。旧型では、V8の力をこちらが意図して引き出さなければならなかった。最新型は、その強大な力を必要なぶんだけ、何事もなかったように取り出してしまう。
追い越し車線へ出ても、加速はとことんスムーズ。速度が増しているのに、肩も視線も乱れず、景色だけが後ろへ流れていく。ブレーキは、踏んだぶんだけ2.5トン近い巨体から迷いなく速度を削ぎ落とし、ステアリングからはかつての重さも駆動系の雑味も消えている。それでいてエアサスは「我が血統」と言わんばかりに、レンジローバー譲りのたゆたう乗り味を残している。
走行モードを「ダイナミック」に入れれば、眉ひとつ動かさず足元を固め、ロールを何事もなかったようにねじ伏せる。視点が高いのに、速さはまるで腰高ではない。速度を乗せたコーナリングでも、身体を支え直す必要がない。快適なのに、峠では隙がまったくない。
上質な静けさに秘めた、V8の実力
車内に身を置けば、控えめでどこに触れても上質ですよ。モノトーンの空間にピアノブラックのパネルが艶やかに光を受けとめる。豪華さを見せびらかすのではなく、音が鳴る前の静けさまで設計されているような慎ましさがある。速さも、快適さも、上質さも、初めから自分のものだと知っているから、見せびらかす必要がない。うん、奔馬を駆った騎士は、いつしか領主になっていたんだ。
これほど力を静かに扱えるなら、その先に電動化があるのもよくわかる。先ごろ、完全電動モデルのプロトタイプが英国で初めて姿を現した。速さを誇示せず、余裕の内側に運動神経を隠し持つ。この身のこなしが電動でさらに磨かれるのは、想像に難くない。
友人の2代目はもういない。いまのV8も、いつか電気の心臓に席を譲るのだろう。日曜の夕方、軽井沢を離れて標高を下げていくと、道路の密度と外気の熱が少しずつ戻ってくる。それでもドアの内側には、まだ山の静けさが残っている。EVなら、その静けさを壊さないまま、東京まで持ち帰れるのかもしれない。
浅間の裾を縫うあの道を、次はどんなレンスポが走るのか。いつか電気の心臓を積んだ一台が、同じコーナーを新しい速度と静けさで駆け抜けていく。その日が待ち遠しいと思う一方で、いまこのV8で走れる夏がつくづく惜しくもなる。
レンジローバー スポーツ オートバイオグラフィ P530
全長×全幅×全高:4,970 × 2,005 × 1,820㎜
排気量:4,394cc
エンジン: V型8気筒 DOHC ツインターボ+48Vマイルドハイブリッド
最高出力:530PS
最大トルク:750Nm
駆動方式:AWD(4輪駆動)
車両価格:¥19,360,000
ランドローバーコール
TEL:0120-18-5568
www.rangerover.com
