細田 守「“時代の気持ち”を、分かち合える作品をつくる」【創造の挑戦者たち#116】

  • 文:加藤一陽
  • 写真:野村佐紀子
Share:
細田 守●1967年、富山県生まれ。91年に現・東映アニメーションへ入社。99年『劇場版デジモンアドベンチャー』で監督デビューし、2005年独立。代表作に『時をかける少女』『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』などがある。

細田守がフリーランスのアニメ映画監督として初めて手掛けた『時をかける少女』の公開20周年を記念し、彼の原点を巡る展覧会『細田守の原点/展』が開催中だ。初期3作の原画など300点以上が展示されるこの企画展について、細田は「中3でつくった8㎜の作品もある。それこそ〝中二病〟的な感覚の作品で、恥ずかしさもある」と笑った。

『時をかける少女』以前にも細田は、『劇場版デジモンアドベンチャー』をはじめ、数々の作品を監督してきたが、それらは東映アニメーション所属クリエイターとしての仕事。『時をかける少女』は自身の思いが制作の動機となった。

---fadeinPager---

2.jpg

「初めて自分で企画して、マッドハウスの丸山正雄さんに提案したら、『すごくいい』と言っていただけて制作が実現したんです。ただ、最初の上映は6館。予算的にフィルムも14本のみでした。とても制作費を回収できる規模ではなく、最後の映画になると思っていました。このフィルムが全国を回り、1年間のロングランになったことで『サマーウォーズ』をつくることができたんです」

---fadeinPager---

3.jpg

細田にとって原点と言える『時をかける少女』は筒井康隆の小説が原作で、1983年に大林宣彦監督が原田知世を主演に起用し映画化してヒット。以降、何度も映像化された。細田はフリー監督としてのデビュー戦にして、大ネタに取り組んだわけだ。彼にとっての〝原点〟をさらに掘り下げると、2002年に演出を担当したアニメ『おジャ魔女どれみ』の「どれみと魔女をやめた魔女」という回にまで遡るという。人間と魔女の時間スケールの違いにまつわる物語が美しく描かれたこの回は、シリーズ屈指の人気を誇る。

---fadeinPager---

若者たちが肯定感を感じ、未来を感じられる作品を

4.202606260070_3.jpg

 「その回に登場する佐倉未来というキャラの声優を原田知世さんにお願いしたんです。そうしたら、時間を巡る物語に原田さんを起用するって、『時をかける少女』をつくりたかったのでは?と人に言われて。意識していたわけではありませんが、言われてみると、そうなのかもしれないと腑に落ちた。『時をかける少女』を企画するきっかけのひとつですよね」 

---fadeinPager---

2.202606260130_2.jpg

細田は続く『サマーウォーズ』で初めて原作を書き下ろすと、その3年後に公開の『おおかみこどもの雨と雪』では脚本にも挑戦。最初の3作品で、原作、脚本を自ら手掛けるスタイルを確立した。

「僕の制作の出発点は既にある原作ではなく、まずは企画。企画を立てる際は、つくる意味や価値を見つけなければなりません。そのため、いまがどんな時代で、日頃人々がなにを思いながら生きていて……などを常に想像する。そして、そんな〝時代の気持ち〟をみんなで共有できるように原作や脚本に落とし込む。それが僕のオリジナリティなのかもしれません」

---fadeinPager---

1.202606260156_3.jpg

〝時代の気持ち〟を捉えて作中に忍ばせる。その作風は、『時をかける少女』から一貫している。

 「僕の『時をかける少女』の舞台は現代。制作当時は世の中に元気がなく、『この時代における未来や希望ってなんだろう』と探っていました。そんなある日、目の前の階段をポロシャツ姿の女子高生がバーっと駆け下りていって。女子高生が走っているだけなのですが、その瞬間、『これは未来だ』『現代では、女の子が走っていること自体が希望なんだ』と感じたんです。この時代に元気だったのが女の子しかいないことの裏返しだとも思うんですけど。だから主人公の真琴は、やたらと走る。大林監督の映画の主人公の芳山和子は、もっとおしとやかでしたけどね」

---fadeinPager---

3.202606260267_2.jpg

インタビュー中に気付かされたのは、細田の口から何度も“未来”という言葉が発せられていること。これまでも彼の作品やキャラの名に“未来”というワードが多いことを尋ねると、細田は「そうですね」と静かに語った。

「若者を全肯定したいんですよね。それってイコール、未来ってこと。僕の作品はその意味ですべて同じ文脈上にある。SNSが若者を蝕んだり、AIが社会を変化させていることが話題になりますが、若者にはそういうものをうまく利用しながら、よりよく生きてほしい。そんな肯定感を、作品を通して感じてもらいたいんです」と優しく微笑んだ。

---fadeinPager---

WORKS
展覧会『細田守の原点/展』

4.jpg

CREATIVE MUSEUM TOKYOで8月31日まで開催中の、細田の創造の原点を巡る企画展。初期代表作の絵コンテ、監督修正、原画などの資料から中学時代に制作したアニメ作品まで、300を超える貴重な展示を見ることができる。

---fadeinPager---

映画『時をかける少女』 

2b4248532468de2efc3ad05b9bc59faf0fcf123c.jpg©「時をかける少女」製作委員会2006© 2009 SUMMERWARS FILM PARTNERS

筒井康隆の名作SF小説を原作に、細田がフリーの監督として初めて企画から取り組んだ2006年公開の長編作。国民的なアニメ映画監督と呼ばれるまでに話題作をつくり続けていく細田の、まさに“原点”となった作品。

---fadeinPager---

映画『サマーウォーズ』

6.jpg©2009 SUMMERWARS FILM PARTNERS

高校生・健二が先輩・夏希の実家の大家族とともに仮想空間「OZ」で起こった事件に立ち向かう姿を描いたSF作。細田が原作を手掛けたオリジナル作で、監督としての人気を決定づけるほどの大ヒットを記録。2009年公開。