マダガスカル
マダガスカルの海上に、巨大なバオバブを思わせる建築が姿を現す──。そんな未来を思わせるコンセプトデザイン「Baobab Waterfall(バオバブ・ウォーターフォール)」が話題を集めている。
ルーマニア・ブカレストを拠点とする建築デザイナー、アハマド・エグテサドが、海洋建築をテーマとするジャック・ルジェリー財団(Jacques Rougerie Foundation)の国際コンペティションに向けて発表した構想である。建設計画ではなくデザイン提案であるものの、再生可能エネルギーの創出と社会課題の解決を一体的に描いたアイデアとして、複数のメディアで紹介された。
海に浮かぶ「バオバブ」がエネルギーを生み出す
計画のモチーフとなったのは、「生命の木」とも呼ばれるマダガスカル原産のバオバブである。幹に大量の水を蓄え、過酷な環境でも生き抜くその姿は、島の自然や人々の暮らしを象徴する存在でもある。エグテサドは、太い幹と大きく枝を広げる樹冠に着想を得て、その姿を巨大な海上建築として表現した。
構想では、リング状の構造体の内部へ海水を流し込み、滝のように落下させる。これにより海中に設けた発電用タービンを回し、再生可能エネルギーを生み出す。発電施設でありながらランドマークとしても機能する景観を生み出すというアイデアだ。
この大胆な発想の背景には、マダガスカルが抱える深刻な電力不足がある。豊かな自然資源に恵まれながら、多くの地域では依然として電力へのアクセスが限られ、経済発展や生活基盤の整備が大きな課題となっている。
発電だけで終わらない、社会を見据えたデザイン
「Baobab Waterfall」が特徴的なのは、発電施設だけにとどまらない点である。内部を更生支援を目的とした施設(刑務所)として利用することを想定している。
中央の「幹」にあたる部分には、多層階の温室や教育用スペースを配置している。入所者が農作物を育て、生産物を販売するなど、社会復帰に必要な知識や技能を身につける場とする計画だ。
Image courtesy of Ahmad Eghtesad海中にはドーム状の空間も設けられ、海洋環境とのつながりを感じられる構成も盛り込まれている。
建築デザインとビジュアライゼーションを専門とし、国際的な建築コンペティションに積極的に参加しているエグテサド。このコンセプトでは、「エネルギー不足が経済的困難や犯罪率の上昇につながり、それが矯正施設の過密化を招く」という社会課題に対し、建築デザインを通して一つの解決の方向性を提案している。建築を単なる器ではなく、エネルギー、生産、教育、人々の社会復帰を支える基盤として位置づけている点が、この構想の核といえる。
建築が描く未来への提案
この構想はさらに未来も見据えている。犯罪率の低下など社会状況の改善が進んだ将来には、更生支援施設としての役割を終え、エコリゾートやグリーンエネルギー拠点へ転用する構想も盛り込まれている。用途を固定せず、社会の変化に応じて姿を変えることも考慮したデザインである。
更生施設からツーリストハブへと用途を変えることが可能。Image courtesy of Ahmad Eghtesad
もちろん、「Baobab Waterfall」は実現を前提としたプロジェクトではなく、コンペティションに向けたコンセプトデザインである。しかし、発電施設を地域の象徴とし、さらに教育や更生、将来的な観光までを視野に入れたこの構想は、建築が社会課題に果たし得る役割を考える一つの試みとして注目される。








