スズキが「ジムニー ノマド」をマイナーチェンジし、2026年7月1日に発売した。パーマネントデザインという言葉があるが、「まさにそれ」と思わせるモデルだ。

「形態は機能に従う」という言葉を絵に描いたようなシェイプ。機能美のひとつの極、といってもいいかもしれない。古びないデザインだ。
従来の、1.5リッターの「ジムニー・シエラ」のホイールベースを延長し、ドア数を2枚から4枚に増やしたのがジムニー・ノマド(ノマド)。
25年1月に発売して、あまりに予約が多くて4日で受注停止になった。
今回は、工場の増産体制を敷いて、再スタートともいえるもの。運転支援システムを充実させている。デザインは不変。魅力も不変。まったく古びていない。

自動車デザインにモデルチェンジという概念を持ち込んだは、かつて米国ゼネラルモーターズ(GM)のデザイン部門をひきいていたハーリー・アール(1893-1969年)。
彼は「ダイナミックエコノミー」なる概念でもって、毎年デザインを変更することで、クルマの売れ行きを伸ばせるとした。
シボレーやフォードやクライスラーといった米国車の歴史本を紐解くと、どのモデルもフルモデルチェンジを受けるまで、毎年どこかに手が入れられているのがわかる。
新しいはいい、という価値観を消費者に植え付け、買い換え需要を促進しようというアールの考え方は、あっというまに世界中に広がった。

その対極に位置するともいえるのが、クロスカントリー4WD車。トヨタ・ランドクルーザー70やメルセデス・ベンツGクラスなど、いってみれば内側からデザインしたカタチだ。
ノマドは、よりクロスカントリー型4WDの基本に忠実なつくり。ラダーフレームに、前後とも固定式のサスペンションを組み合わせている。
はしご形状なのでラダーと呼ばれるフレームは頑強。くわえて、固定式サスペンションは路面の追従性が高いため、悪路での走行性の高さが強み。

ノマドは、シエラに対して、ホイールベースを340mmも延長している。目的はもちろん後席の居住性向上にある。
いっぽうで、オフロード走行の性能はほぼ犠牲になっていない。四駆に詳しいかたなら、アプローチアングルやデパーチャーアングルという悪路走破性の指標をご存知だろう。シエラと同一だ。
唯一異なるのは、ランブブレークオーバーアングル。車体中央部の接地性の指標で、コブを越えた際、コブで車体が浮いてしまうかどうかを示すもの。ホイールベースが短いほうが有利なのだ。

副変速機も備えている。手動で、後輪駆動、4輪駆動のローギア/ハイギア(走行路で判断)を切り替える。
オフロード走行のために(本当の熟達者以外には)利便性の高いオートマチック変速機も用意されている。
ちなみに書いておくと、サーキットにしてもオフロードにしても、クラッチを切ってギアを変えてクラッチをつないで、という一連の操作で走行が不安定になるのは、普通の人のあるある。
スズキはノマドに、上級者にはマニュアル、普通に楽しみたいひとにはオートマチックと、ちゃんとふたつを用意してくれている。実際に、驚くほどよく走る。

筆者は、オートマチック車で「富士ケ嶺オフロード」のコースと、マニュアル車で一般道をドライブした。
オフロード走行は、もしノマドを買ったら、ぜひ試してもらいたい。
インストラクターがいるところもあるので、段階を踏んで習熟していけば怖くない。それどころか、病みつきになっても不思議でない。

今回は、モーグルといって、大きなコブが連続する波状路を走った。片輪が浮いてしまうようなコースだ。
通常のクルマでは、片輪が浮くとか滑るとかすると、構造上もう一方の車輪にトルクが伝達されなくなる。
オフロード(や雪道)のために、ノマドには、電子制御のリミテッドスリップディファレンシャル機構が備わる。
接地性を失った方輪が空転している状態が少しのあいだ続くと、上記の機構が働き、反対側の車輪がぐっと車体を押し出す。そこで悪路から脱出できる。
サスペンションは先述の通りリジッドなので、利点として、車体が傾いたとき、接地している車輪にしっかり駆動力がかかる。
リミテッドスリップディファレンシャルとの組合せで、走破性の高さに寄与しているのだ。

もうひとつのおどろきは、オンロードでの快適性だった。
硬いかなとか跳ねるかなとか遅いかな、とかネガティブな要素を頭のなかでいくつか挙げながら、一般道を走った。
すると、乗り心地がいい、騒音はまったく気にならない、パワーも十分(以上)。オンロードでのドライブも楽しい。

後席も、広びろとしていて、前方視界も確保されているので、密閉感がないのも高得点。座面のクッションも厚みがあって、長い時間乗っていられそうだ。
改良点は、安全性能と快適装備の向上。
デュアルセンサーブレーキサポートⅡへと”進化”した衝突被害軽減ブレーキ搭載。
自動ブレーキの作動対象をモーターサイクルや二輪車まで拡大。加えて、車線逸脱抑制機能と、後退時のパーキングセンサーを追加(AT車)。
先行車追従の「アダプティブクルーズコントロール」では、AT車には、全車速追従機能が加えられた。

ディスプレイオーディオ(オプション)をえらんだ場合。スマートフォンと連動して種々のサービスが使えたり、コールセンターのオペレーターと会話できる「スズキコネクト」が使える。
スズキ ジムニー ノマド
全長×全幅×全高:3890×1645×1725mm
ホイールベース:2590mm
最低地上高:210mm
車重:1210kg(1200kg)
1460cc 4気筒 パートタイム4輪駆動
最高出力:74kW@6000rpm
最大トルク:130Nm@4000Nm
変速機:4段オートマチック(5段マニュアル)+副変速機
乗車定員:4名
燃費:13.6(14.9)km@l(WLTC)
価格:¥2,926,000(同)
(カッコ内はマニュアル車)
www.suzuki.co.jp










