【絶対に脱獄できない】滝に囲まれた“海上刑務所”がすごい、その驚きの構想とは

  • 文:青葉やまと
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Baobab Waterfall: social renewal through architecture – aerial view | all images courtesy of Ahmad Eghtesad

熱帯の海に、巨大な円形の滝が出現。絶え間なく流れ落ちる海水の内側には、ヤシの木が茂る緑豊かな島が広がる。まるで楽園のようだが、実は刑務所として企画されたコンセプト案なのだという。

滝に囲まれた浮遊島

設計したのは建築家のアフマド・エグテサド氏。「バオバブ・ウォーターフォール」と名づけられたこの構想は、ジャック・ルジュリー財団の建築コンペに応募されたコンセプト案だ。まだ実現はしていないものの、そのユニークな外観と機能性に、複数の海外建築メディアが注目している。

舞台となるのは、アフリカ大陸の南東沖に浮かぶ島国マダガスカルの沿岸。同国は深刻なエネルギー不足に苛まれ、国民の大多数が電力を利用できていない。貧困から犯罪が広がり、刑務所は過密状態に陥っている状況だ。

そこで、海上に刑務所を新設し、その周囲を環状に流れ落ちる海水の滝で囲む。滝の水は地下深くのタービンへ送り込んで発電し、世界中から観光客を呼び込むランドマークとしても機能させる本コンセプトが飛び出した。多くの課題を、独創的な建築の力で解決しようという案だ。

イタリア建築・デザインWebマガジンのデザインブームによるとこの施設は、犯罪率が下がった暁には、エコリゾートへ転換することも可能な設計だという。サンフランシスコ沖に浮かぶアルカトラズ島のように、刑務所から観光施設へ転換した例は存在する。

バオバブの樹がヒントに

ユニークな外観は、マダガスカルを象徴する樹木のバオバブに着想を得たものだ。バオバブは巨大な幹に水を蓄え、過酷な気候を生き延びる。

本プランで円形の人工島の中央にそびえる塔は、バオバブの太い幹をかたどったもの。その周囲に張り出すキャノピーと呼ばれる屋根状の覆いや、各区画をつなぐ連結プラットフォームが、四方に広がる枝にあたる。トルコ建築技術メディアのパラメトリック・アーキテクチャーは、バオバブにヒントを得て、その特性を設計に取り入れたと紹介している。

建築CGブログのローネン・ベカーマンが伝えるように、マダガスカルでは犯罪者が増加し、矯正施設が過密状態に追い込まれている。犯罪が増えたせいで矯正が立ちゆかないという悪循環を断ち切り、受刑者一人ひとりに更生プログラムを提供することも、バオバブ・ウォーターフォールの使命の一つだ。

デザインブームによると、施設の中心をなす「幹」部分には、ガラス張りの温室が何層にも重なっている。受刑者はここで新しい農業技術を学ぶ。日光の差し込む通路沿いで作物を育て、自ら売買までを手がける。出所後に生計を立てるための実践的なスキルを、塀の中で身につけていく仕組みだ。

やがて犯罪率が下がり、社会が立ち直りはじめたとき、真価を発揮するのはモジュール式の設計だ。区画ごとに用途を入れ替えられるため、刑務所の一部キャパシティが不要になった際、施設の一部をエコリゾートへとシームレスに転換できる。両者の交流を促すことで、服役囚の更生にも効果が期待できるという。

マダガスカルを海底観察の地に

しかし、これだけでは十分な観光客を呼び込めない事態も想定される。観光客側が服役囚との交流を望むかも未知数だ。そこでバオバブ・ウォーターフォールが用意するのが、海底に据えられた巨大なガラスドームだ。

耐圧ガラスに覆われた海中観測ドームに降りれば、美しいサンゴ礁や海域を回遊する海洋生物が目の前に広がる。パラメトリック・アーキテクチャーは、マダガスカルの海洋生態系を海の内側から体験できる没入空間だと紹介している。陸上の野生動物観察で国際的な人気を誇るマダガスカルに、海底の観測拠点を新たに誕生させようという趣向だ。

2020年に始まった本コンセプトの開発は、2026年にようやく完了したという。革新的な構想を重視するジャック・ルジュリー財団のコンペへの応募作品であり、現時点ではまだ形になっていない。

それでも、バオバブの樹に着想を得た壮大な空間と海底のガラスドームからは、建築の力で社会を変えようとする試みの力強さが伝わる。

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the design draws inspiration from the form of the native baobab tree – top-down view