「オム プリッセ イッセイ ミヤケ」の2026/27年秋冬のテーマは「In a New Light」。プリーツと光を起点に生まれたシリーズだ。光を巧みに扱う写真家マーク・ボスウィックが、特有の感性で、その衣服を捉えた。7月28日まで、銀座で開催中の展示にもぜひご注目を。
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光に導かれ、やわらかな陰影を見せる服
2013年にスタートした「オム プリッセ イッセイ ミヤケ」。“現代男性のための新しい日常着”をテーマに掲げ、軽くてしわにならず、洗濯もできる気軽さが男性はもとより、世界中の女性にも大人気のブランドだ。
同ブランドの2026/27年秋冬のテーマは「In a New Light」。光をプリーツに当てることで生まれた現象を起点に制作した各アイテムは、その光景を衣服のデザインとして捉え、切り取っている。現象を観察し、研究を重ねたものづくりは、手仕事とテクノロジーの両者を取り入れることによって、衣服の輪郭と質感に反映させている。日常着としてのプリーツの衣服が、光に導かれ新しい像を結ぶ。

マーク・ボスウィックは、光から生み出される自然現象や、その偶然性を慈しむ制作理念を持つ写真家だ。プリーツに光を当てることで明らかになる布の凹凸や、風に靡くことで生まれるドレープの透け感と重なり、人が着用することで浮かび上がる立体と影、対で現れる存在を彼特有の詩的な視点によって、連続性を持つ瞬間として再解釈された。
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光の中で、自ら踊り出す布
7月1日から28日、銀座の「ISSEY MIYAKE GINZA | CUBE」では、今回撮影されたマーク・ボスウィックの写真と映像を紹介する特別展が行われている。プレビューに合わせて来日したボスウィックに話を聞くことができた。
「生地が揺れ、うねり、回転し、変化していく。そのしなやかさ、躍動感、そしてそれらが一体となって形づくるイメージに、私は夢中になっていました。それは、この服の生地が“生まれながら持っているもの”“内側から生まれてくるもの”。だから撮影中、私自身あまり介入せず、生地が自然にあるがままになるようにしたんです。生地が、自らダンスを始めるように」
ISSEY MIYAKE GINZA | CUBEで開催中の展示『Mark Borthwick: Something Out of Nothing Into Everything』。その会場でマーク・ボスウィックは、撮影時の出来事を想起しながら、言葉をひとつひとつ選ぶように、ゆっくりとそう語ってくれた。
会場には、オム プリッセ イッセイ ミヤケの2026/27秋冬のコンセプトである「In a New Light」を主題に撮り下ろした写真と映像、また、写真とマークの手描きの詩をプリントした冊子が並ぶ。外から見えるウィンドウは、マークの日常の作業場をイメージしたもので、マークが愛する植物などとともに、写真が壁面にリズミカルに貼られている。
それらは瑞々しい発見に満ちている。木の葉のあいだからこぼれ落ちる光は、写真の中でプリズムのような線を描き、モデルを連続して捉えた写真群は、光が瞬間ごとに変化し、移ろっていくものであることに気づかせる。万華鏡をのぞいているように構成された映像作品では、水面に広がる波紋が、まるでプリーツのように立体的な陰影を帯び、光を受けながら絵画のような新しい風景をつくり出していた。
そういった幻想的な光景は、光とともに自然の中に無数に存在していて、きっと太古から人々はそこに視覚的な驚きや興奮を覚えてきたのかもしれない。そんなことをボスウィックに伝えつつ、「では、こうした光を捉えるとき、何を意識してレンズを向けるのですか? 光は複雑なものですか?」と尋ねると、「むしろ、私が意識するのは、光というものに対して、一歩身を引き、手放すことです」と答えた。
「光とは未知のものでコントロールできないものですから。重要なのは、一歩身を引き、光を感じるための空間を許容することです。そうすると、光は自然と私たちの中へ入ってきます。また、いまこの展示空間で映像を見ていると、その映像が私自身に何かを映し返してくれているように感じます。少し精神的な表現になりますが、私は、ずっとそうした繋がりのようなものを感じ続けていたいと思ってきました。自分というごく小さなものが、大きなものと接続できる歓び。そうしたときに、自身の存在というものが大きな共同体の中にあることを感じさせます。改めて考えると、今回のプロジェクトで、私が服のしなやかさを通して触れていたものは、その感覚だったと言えるかもしれません」
こうした感覚を呼び起こすためには、撮影場所も重要だった。今回の撮影は、ボスウィックが住むポルトガルの自宅周辺で行われた。当初はパリで撮影する想定だったが、ボスウィックがプロジェクトのための写真資料を見たとき、それがすべて屋外で撮影された、光や生命に満ちたイメージであることに気づき、「ならば、自然豊かな自宅近くで撮影をしたらどうか」と、デザインチームに提案したのだという。
「つまり『Come Home』しましょう、と。それをデザインチームが受け入れてくれたことも私にとって喜ばしいことでした」
なお、この「Come Home」には、「内に深く入り込む」「還るべき場所に戻る」の意味もあり、それもまたボスウィックの哲学に基づいたアイデアだった。
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三宅一生と子どものように笑い合った記憶
ボスウィックが自らディレクションした展示空間も、訪れるものを深い瞑想へと導くような場となった。「空間づくりについては、いつも何も考えないようにしています。人生を通して私が学んだコツのようなものはもちろんありますが、この場所から自発的に何かが生まれてくるように、空間を作りすぎないようにすることも大切なので」とボスウィック。ただその上で、今回、会場で思いを巡らし、意識したことがあるという。かつて自身が対面したデザイナー三宅一生との記憶だ。
「若いころ、一生さんの創作をとても近くで目にする機会を得ました。また、よく憶えているのは、一緒に笑い合ったことですね。子どものように。その記憶が、今回何度も思い出され、幸せな気分になりました。その頃、私が投げ込まれたヨーロッパのファッション業界は真面目で堅苦しい空気感があり、私はそこから抜け出そうとしていました。そんな時に、一枚の布のしなやかさに、身体を解放する根源的な動きを見出していた一生さんの仕事に出会い、精神的にも大きな影響を受けたのです。その記憶が、この展示を通して、再び私たちを結びつけてくれたようにも感じています」
写真家。1962年英国生まれ。官能的かつ直感的なアプローチで定型から逸脱し、ファッションとアートの境界を曖昧にした独自の表現で知られる。光漏れ、高い彩度、独特なピントのずれによって生み出される夢幻的なイメージは、ファッションフォトのあり方を大きく変えた。現在はポルトガルを拠点に活動中。
Mark Borthwick: Something Out of Nothing Into Everything
ボスウィックが独自の感性で捉えた詩的な写真群と映像作品を、自身のディレクションによる空間に展開。光を巧みに扱う彼の世界観が広がる。
会期:開催中〜7月28日
会場:ISSEY MIYAKE GINZA | CUBE
住所:東京都中央区銀座4-4-5
TEL:03-3566-5225
営業時間:11時〜20時 無休
イッセイ ミヤケ
TEL:03-5454-1705 www.isseymiyake.com
