イギリスのフレグランスブランド、ペンハリガンから、2016年に登場したフレグランスコレクションが「ポートレート」だ。誕生から10周年を迎えたいま、その魅力を全3回にわたって紐解いてみたい。
時は1870年。伝統や遺産、帝国、肖像画がもてはやされた時代に、ウィリアム・ペンハリガンによって創設された英国のフレグランスハウスが、ペンハリガンだ。その歩みは、ロンドンで最も有名な高級テーラーが集まるエリアのすぐ近くに構えた理髪店から始まった。当時は身嗜みを整えることは非常に重要であり、イギリス紳士に欠かせない嗜みとされていたのだ。その後、「英国王室御用達」の称号を与えられるほど、トータルグルーマーとしての実績と数々の素晴らしい香りは、高い評価を受けている。
このペンハリガンから、2016年に登場したフレグランスコレクションが「ポートレート」だ。保守的でありながら、ユーモアにあふれ、挑発的なイギリス人のスピリットにオマージュを捧げるコレクションとなっている。
ユニークなのが、日本で展開している11種類のコレクションは、それぞれが物語の登場人物をイメージして調香されていることだ。誕生から10周年を迎えたいま、物語やおもな登場人物を改めて紹介する。
物語の舞台は、ゆるやかな丘が広がるイギリスの田園地帯に立つ大邸宅。主人のジョージ卿とその家族が暮らすこの場所には、目に見えないなにかが隠されている。イギリスの上流階級において大切にしている礼儀作法の裏側には、どんな真実が隠されているのだろうか?
それぞれの香りから、その人物像やさまざまな物語を想像することは、思いのほか楽しい。
物語の登場人物に秘められた真実とは?
「ザ トラジェディ オブ ロード ジョージ オードパルファム」/75mL ¥48,950
たとえば、「ザ トラジェディ オブ ロード ジョージ オードパルファム」。このフレグランスの舞台は、ビジネスランチがウィスキーに浸る夜へと変貌を遂げる場所、メイフェア。
この街によく馴染んでいるジョージ卿は、ため息と、物語と、決して空になることのないグラスを手に、サロンを渡り歩く。自らの秘密は守られていると確信しているが、実際はそうではない。彼の妻、ブランシュ夫人はいつだってすべてを知っている。彼の通った跡には、ラム、シェービングソープ、そしてトンカビーンの香りがたゆたう。豊潤で洗練された、そして、ほんの少しの疑念を孕んだ香りだ。
「ザ リベンジ オブ レディ ブランシュ オードパルファム」の舞台は、ケンジントン。非の打ちどころのない庭園と評判。この両方をベルベットのような手つきで固く守っているのが、ブランシュ夫人だ。
ケンジントンは彼女にふさわしい場所である。洗練され、落ち着き払い、そのゲストリストと同じくらい入念に繕われた「表の顔」が並んでいる。もちろん、彼女は不在にしていることも多い。高級ホテルのほうが、より確かな「秘密」を守ってくれるからだ。彼女の香りは、まさに彼女の本質を映し出す。スイセン、パウダリーなオリス、そしてヒヤシンスによる、陶酔感のあるグリーンフローラルの香り。抗いがたく、そして、危険な香りだ。
「 ザ コヴェテッド デュシェス ローズ オードパルファム」/75mL ¥48,950「ザ コヴェテッド デュシェス ローズ オードパルファム」は、ジョージ卿とブランシュ夫人の愛娘、ローズ公爵夫人をイメージした香りだ。パステルカラーを纏い、囁かれる招待状を携えた彼女は、ガーデンランチとギャラリーのオープニングの間を軽やかに泳いでゆく。その舞台はプリムローズ・ヒル。
彼女は魅力の塊だと言う者もいる。だが、真実を知る者は違う。夫が(あらゆる意味で)長く不在にしている間に、彼女は自らの手で人生を築く術を学んだ。その外聞を、非の打ち所なく保ちながら。それは、秘密を抱えた一輪のバラ。そして、悪戯の味を知るバラ。彼女の香りは、マンダリン、ソフトウッド、そしてムスクとともに羽ばたく。ウィンクを添えた、無垢な誘惑なのだ。
まずは核となる3名の人物を紹介した。いずれも表の顔と裏の顔。ひとすじ縄ではいかない、想像をかきたてるキャラクター。そんな人物像を体現するさまざまな香りを試してみたいならば、10周年を記念して発売する「ポートレート セント ライブラリー」もおすすめだ。全8種類がセットになった、いわば香りの図書館で、気分によって香りを変えながら、さまざまなキャラクターになりきってみるのもいいだろう。
「ポートレート セント ライブラリー」の全ラインナップを紹介すると、「ザ トラジェディ オブ ロード ジョージ オードパルファム」、「ザ リベンジ オブ レディ ブランシュ オードパルファム」、「 ザ コヴェテッド デュシェス ローズ オードパルファム」、「ザ ビーウィッチング ヤスミン オードパルファム(現在は日本での取り扱いなし)」、「ザ ワールド アコーディング トゥー アーサー オードパルファム」、「チェンジング コンスタンス オードパルファム」、「ザ ブレイジング ミスター サム オードパルファム」、「テリブル テディ オードパルファム」の8種類。単に香りを纏うだけでなく、さまざまなキャラクターになりきる感覚で物語の世界も楽しめる。
そんな奥行きのあるフレグランスコレクションが、ペンハリガンのポートレートなのである。
今回紹介しきれなかったキャラクターは、次回のVol.2で明らかになる。どのような表の顔、裏の顔を秘めているのか? 今から楽しみにしていてほしい。