俳優の賀来賢人とMEGUMI。ともに近年は映画や映像作品の“つくる側”として存在感を強めているが、賀来とMEGUMIそれぞれがプロデューサーを務めた映画『Never After Dark/ネバーアフターダーク』と『FUJIKO』が6月5日に同日公開される。もともと旧知の中であったが対談は初めてだというふたりが、Penの独占インタビューに答えた。
ジャケット¥646,800、ニット¥224,400、Tシャツ¥95,700/すべてザ・ロウ(ザ・ロウ・ジャパン☎︎03-4400-2656)、ブローチ¥361,900、リング¥1,320,000/ともにカルティエ(カルティエ カスタマー サービスセンター☎︎0120-1847-00)、メガネは私物
ブラウス¥108,900、スカート¥179,850/ともにトーテム(トーテム クライアントサービス clientservices@toteme-studio.com)、ピアス¥18,150、リング〈左手〉¥19,360、〈右手〉¥21,450/すべてアフェクト(ラッキーアンドカンパニー affect-official.jp)
賀来は原案・企画・主演を務めたNetflixシリーズ「忍びの家 House of Ninjas」が空前のグローバルヒットを記録。そして「忍びの家」でタッグを組んだデイヴ・ボイル監督と2024年に映像製作会社「SIGNAL181」を立ち上げ、満を持して第1作目となる映画『Never After Dark/ネバーアフターダーク』がいよいよ公開。賀来はプロデューサーと出演を兼任している。
同じく6月5日に公開される映画『FUJIKO』で企画・プロデュース・出演を務めるMEGUMIは、ヤンキーを起用した異例の恋愛リアリティショーとして大ヒットしたNetflixの「ラヴ上等」の企画者でもあり、近年は映像プロデューサーとして多彩な活躍を見せている。
「忍びの家」「ラヴ上等」の世界的なヒットに加え、まもなく封切りとなる『Never After Dark/ネバーアフターダーク』『FUJIKO』は日本公開を前に各国の映画祭での受賞が相次いでおり、プロデューサーとしても注目を集めている両者。俳優として第一線を走りながら、映画を“生み出す側”へ踏み込んだふたりは、なぜプロデュースという領域へ向かったのか。コロナ禍をきっかけに始まった試行錯誤から、お互いに受けた刺激、企画のつくり方に至るまで――。初めてとなる対談で、いまの映画づくりについて語り合った。
孤独な挑戦のなかで見つけた、“同志”のような存在
MEGUMI 賀来くんと初めてお話ししたのは、柄本時生くんが企画・原案・プロデュースを務めたドラマ「錦糸町パラダイス~渋谷から一本~」の現場でした。ただ、お互い出演者でしたしセリフもたくさんあったため、そんなに話すことはできませんでした。
賀来 その後、MEGUMIさんが企画されたカンヌ国際映画祭での国際文化交流イベント「JAPAN NIGHT」にお誘いいただきましたよね。ただその時もがっつり話すことはできず、共通の友人に「MEGUMIさんともっと話したいんだよ」と伝えていました。だから今日、やっとしっかりお話しできてとても嬉しいです。
MEGUMI 私も同じ気持ちです。賀来くんの存在は本当に励みになっていました。Netflixでドラマをおやりになったと聞いたときは「うわ、素晴らしい!」とぶち上がりましたし、SIGNAL181を立ち上げられて、『Never After Dark/ネバーアフターダーク』をつくられて、アメリカのマネジメントと契約されて――とニュースが出るたびに「自分も頑張ろう」と思えるんです。この立場になると、同じ勢いとテンション、ペースの方にはなかなか出会えないため、とてもありがたい存在です。
賀来 僕は「MEGUMIさんって何人いるんだろう?」と思いながらご活躍を見ています。絶対になにかカラクリがあるぞ……と思ってしまうくらい驚異的な行動力とバイタリティをお持ちですし、僕にはない才能と努力にあふれた方だと思います。どうやってあれだけのボリュームを成立させているのか気になってしょうがないです。
MEGUMI 私は朝起きて洗濯物を干す時間からオンライン会議の時間まで、なにからなにまで細かく設定して乗り切っています。それくらいしないと、どうしてもこぼれてしまうんですよね。
賀来 そうなんですね! いつから計画するんですか?
MEGUMI 大体、木曜日に来週分のスケジュールを細かく詰めて確定させるようなイメージでしょうか。「ここで台本を読み込む」「ここでフィードバックを行う」といったように、とにかくずっと調整しながら生きていかないとパンクしてしまうほど追い詰められてはいるので。この生活をずっとは続けられないけど、あと5年ぐらいは頑張りたいです。
賀来 なるほど! この仕事って、やっぱり孤独じゃないですか。だからこそ、目に映る範囲にMEGUMIさんのような方がいらっしゃるのは本当にありがたいです。ちなみに僕がプロデューサーを始めたのは、コロナ禍で仕事がなくなってしまうんじゃないかという危機感からでした。俳優ってどうしても受け身の立場なので、どうしたらいいか……と悩んでいた時に洋画を観ていたら俳優がプロデューサーとして名を連ねていて、こういう方法があるんだ、と。MEGUMIさんも近いかたちだったと聞きました。
MEGUMI タイミングも動機もまったく同じです。仕事がなくなる恐怖心にいつまでも縛られている状態から抜け出すためには、自分で仕事をつくることのできる存在にならなくては、というのが発端でした。あと、この業界に長く身を置くなかで「もうちょっとこうだったらいいのにな」という部分もあったので、まず自分から動こうと思い立ちました。
賀来 当時はまだ、俳優がプロデューサーを兼任することが日本だとあまり多くなかったように感じます。でも、やるだけやってみるかと思い、自分がいまいちばん興味のあることはなんだろう……と考えて企画書を書き始めました。最初からプロデューサーをやりたいという意識ではなく、あくまで企画をつくることに気持ちが向いていて、そこから派生していまのかたちになりました。
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『Never After Dark/ネバーアフターダーク』と『FUJIKO』、“時代”を映す映画ができるまで
俳優として、そしてプロデューサーとして――。多角的に映像作品を享受するふたり。奇しくも同日公開を迎える『Never After Dark/ネバーアフターダーク』『FUJIKO』は、霊媒師を主人公にしたホラーとシングルマザーの奮闘記と、ジャンルやテイストこそ異なるものの、ともに“時代モノ”の要素を含んでおり、映像派の監督による作家性が如実に出た作品に仕上がった。賀来とMEGUMIは、お互いの最新作をどう見たのか?

MEGUMI 『FUJIKO』の企画に関しては完全に木村太一監督のお母様の話である、というところからスタートしています。1970~80年代のヘアメイクや美術の混沌とした感じと監督のテンポ感が組み合わさり、時代ものや親子劇ではあまりないテイストに仕上がりました。最初は怖さもあり、さまざまな点で話し合いましたが、彼のアイデンティティが発揮されつつ時代性と出合い、上手くまとまってよかったです。
賀来 『FUJIKO』を拝見しましたが、ファーストカットからとても素敵でした。各部署が本当にこだわって画をつくられているのが伝わってきましたし、音楽の使い方にも同じように感じました。
MEGUMI 嬉しいです。画作りでいうと、『Never After Dark/ネバーアフターダーク』には懐かしいアングルや音楽のテイスト、昔見たようなサスペンス感が入っていてとても面白かったです。
賀来 ありがとうございます。『Never After Dark/ネバーアフターダーク』の時代設定に関しては、アナログであればあるほど物語がドライブしやすいという理由が大きかったかもしれません。デイヴ(・ボイル監督)が相当アナログ好きなので、自分たちでできることはやった方がホラーとしては効き目があるのかな、と。
MEGUMI 物語においても、見事な伏線回収の効いた素晴らしいエンターテインメントでした。最初は「これってどういうことだろう」「この人はなんなんだろう」とわからない違和感があり、物語世界の中にどんどん引き込まれていくうちにいろいろと気づかされる快感がありました。そして最後に「そういうことなのか!」で終わるジェットコースター感があり、ホラーってすごいなと思わされました。
賀来 『FUJIKO』は、やはり主演の片山友希さんが圧倒的でしたね。途中からはお芝居をしているように見えなくて。まさに富士子として生きていらっしゃって、特にイッセー尾形さんとのシーンは「こういうつくり方ができるんだ!」と衝撃を受けました。僕もそうでしたが、ご覧になる方は自然と富士子を応援したくなるんじゃないかと思います。僕は俳優が生き生きと芝居をできるためには環境づくりがなにより重要だと思っていて、『Never After Dark/ネバーアフターダーク』ではお茶場(現場に設置される休憩所)をコンビニくらいまで充実させてみたのですが、MEGUMIさんはどんな工夫をされていますか?
MEGUMI お茶場のグレードアップは素晴らしいですね。俳優をやっていると、やっぱり気になる部分だと思います。私も、ひたすら差し入れをたくさんしたり、カフェカーを呼んだりしました。あとは打ち上げを多めに開催しましたね。撮影はどうしても追い込まれるものなので、みんながシリアスな気持ちになってしまいがちです。そこで大きいものから小さいものまで要所に打ち上げをして溜め込まないようには気を配りました。単純に私が打ち上げ好きなのもありますが、みんなで乾杯することでさまざまなものが溶けていく効果はやっぱりあるので、その時間をつくるようにしていました。
賀来 まだまだ課題はありますが、ひとつずつ改善していきたいと思っています。
MEGUMI 一つひとつが実験で、試行錯誤ですよね。映適(一般社団法人「日本映画制作適正化機構」の略称)ができて1日の撮影可能時間がルール化されたため、環境は大きく改善されてはいますが、もっと予算があればみんなに楽をさせてあげられるのになと思う瞬間は多くあります。だからこそ、海外にちゃんと売ることを達成しないといけない、どれくらいのお金が自分たちに戻ってくるかをきちんと把握して勝負しないといけないなど、ビジネス的な面から見て改善していきたいです。
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“面白い”をどう世界へ届けるか。二人が考える映画の未来
才能ある監督や俳優を見出す審美眼はさることながら、やはり目を引くのは両者が企画する作品群の斬新さ。賀来とMEGUMIはどのようにアイデアの取捨選択を行い、強度を上げているのか。対談の話題は両者の方法論に及んでいく。

賀来 僕はデイヴとパートナーとして組んでいるため、どの企画にGOを出すかはふたりの意見が完全一致するかどうかにもかかっていますが、まずは直感。自分がワクワクするかどうかで決めています。そこにプラスしてマーケット、そして時代性を考えていきます。
MEGUMI 私はいま5、6個企画を動かしていて全部成り立ちが異なるのですが、完全な自分企画に関しては賀来くんと同じです。直感的に「自分はこれをやりたい!このメッセージを言いたい!」が最初で、そこに「いまの時代にも絶対ハマる」と思えるものを吟味していくかたちです。
賀来 もちろん最も大きいのは現実的に可能かどうかですが、目標としてはフレッシュさです。構成やストーリー、キャラクターといった核となる部分に新鮮さを感じないと僕たちも楽しんでつくれませんから。
MEGUMI 本当にそう思います。出資者が集まらなければ制作できないため、私は本当にやりたいものとニーズに合わせたサブ的な企画の両方を用意するようにしています。たとえば日本食は世界的にとても引きが強く、出すととても受けがよいため、マストといえるかもしれません。最初の企画は監督や私たちだけのミニマムなチームで「これで大丈夫」と思えるような確固たるかたちにまで詰めておき、それ以降は割と柔軟にやっていった方がいいんじゃないかと『FUJIKO』をつくって感じました。賀来くんはデイヴ監督とおふたりで進めていけるのが強みですよね。
賀来 真逆の意見で企画を出し合うなどだいぶ違う脳みそを持ってはいますが、バチッとハマったときのケミストリーはあるように思います。また、僕らは映画の好みや嫌いなものがすごく似ていて、ふたりとも「エンターテインメントであること」に固執しています。そこを絶対に忘れずにお客さん至上主義を貫き、どう驚かせて笑わせるか、お客さんにどうワクワクしてもらうかを撮影時から編集段階まで合言葉にしていました。
MEGUMI これからもずっとデイヴ・ボイル監督とふたりでものをつくっていかれるのでしょうか。
賀来 いえ、別の監督を起用することもあります。ただ、基本的に企画は全部僕とデイヴが見るつもりで、こちらがコ・プロデューサー(制作におけるプロデューサー)として入ることもあるでしょうし、柔軟に対応していきたいと思っています。
『Never After Dark/ネバーアフターダーク』
監督/デイヴ・ボイル
出演/穂志もえか、稲垣来泉、賀来賢人、吉岡睦雄、正名僕蔵、木村多江ほか 2026年 日本映画
1時間45分 6月5日より全国公開
https://neverafterdark.toho-movie.jp/
『FUJIKO』
監督/木村太一
出演/片山友希、YOU、リリー・フランキー、MEGUMI、うじきつよし、竹下景子、イッセー尾形、岸本加世子ほか 2026年 日本映画
1時間35分 6月5日より全国公開
https://fujiko-movie.com/
