2026年5月15日、岡山・児島発のデニムブランド「MOMOTARO JEANS(モモタロウジーンズ)」が、九州初となる直営店「MOMOTARO JEANS FUKUOKA」をオープン。アジアの玄関口として多様な文化と感性が交差する福岡市の中心部に新たなジャパンデニムの発信拠点が誕生した。
国産ジーンズの発祥地・岡山県児島のテキスタイルメーカーから始まった「MOMOTARO JEANS(モモタロウジーンズ)」。高品質の綿糸に、美しい経年変化が楽しめる染めを施し、さらに旧式力織機による織りやヴィンテージミシンによる縫製など、独自のモノづくりを貫いてきたブランドだ。2006年にオリジナルジーンズの製造を開始し、18年後の2024年にブランドを刷新。これまでのベーシックを再解釈した「STANDARD」、シルクやカシミヤを緯糸に用いた「EXCLUSIVE」、ホワイトの2本線がアイコニックな「CLASSIC」、半年以上をかけ手染めした糸を用いる「NATURAL INDIGO」という、4レーベルを新しく展開する。さらに桜や苔、竹炭などのボタニカルダイ(植物染料)で染めたコレクションなども発表し、デニムの可能性を広げている。
そんな同ブランドが、新たな表現の舞台として選んだのがアジアからのインバウンドでも賑わう福岡・大名だ。
壁面に欅の枝葉の影が揺らぐ、まるでアートピースのような店舗は、青木淳と品川雅俊による建築設計ユニット「AS」が設計を担当。MOMOTARO JEANSとのタッグは、リブランドのタイミングでオープンした「MOMOTARO JEANS KYOTO」に続き二度目となる。
京都店では古い町家を改修し、ブランドの哲学を歴史に重ねた空間を作り上げたASだが、福岡店について品川は、周囲環境のつぶさな観察からコンセプトを導いたと語る。
「店舗が面する国体道路には美しい欅の並木が続き、その木漏れ日が印象的でした。そこで外装に波板を採用し、欅の影を映すスクリーンとして外装を設計することに。一見、寡黙に見えるファサードですが、木漏れ日は時間とともに刻一刻と変化します」
その“秘密めいたファサード”から一歩中へ入ると、すぐに目に飛び込んでくるのが生命力溢れる蘇轍(そてつ)の坪庭だ。
「このブランドのルーツ、児島に構えるMOMOTARO JEANS KOJIMAは、国指定重要文化財である旧野崎邸の目の前にあります。蘇轍はその庭でも見られ、温暖な瀬戸内らしい風景を感じさせてくれるもの。そこで京都店に続き、福岡店にも取り入れました。この庭は車通りの多い外の喧騒と店内の静寂をつなぐバッファーとしても機能します」
店内は道路側から奥に進むほど幅が狭まる台形で、坪庭とアイテムが60度の角度で配置されている。また床は、かつてここにあった建物の土間を砥石で丁寧に磨き直したもので、児島とデニム、そして福岡がひとつの空間で緩やかに共鳴し合う。
シーズンアイテムが並ぶ2階。左手扉の奥がフィッティングルームになっている。
こうした視覚的なディテールに加え、品川は、ゲストが店に足を踏み入れ、商品を手に取り、試着をし、裾上げを完了するというMOMOTARO JEANSでの一連の体験を、より色濃く記憶できるような仕掛けを空間に落とし込むことも意識したという。
「例えば2階の試着室。ここは動線の最後に当たる場所ですが、フィッティングを単なる確認作業としてだけではなく、ブランドの世界観に深く潜り込める体験ができる場所としてデザインしました。自然光とライティングを組み合わせ、どんな時間、天候においても美しい藍色や素材の質感をリアルに観察できるような空間に仕立て、重厚感のある扉は、新しいアイテムに挑戦する高揚感、愛着を持つ気持ちを育てるフックに。また京都店での知見をアップデートしながら設置した1階中央の大型什器は、商品を格納するストックであると同時に、照明の元、デニムを広げ、素材とディーテルを吟味するためのカウンターです。この什器を中心にゲストとスタッフが商品を交えて自然とコミュニケーションが取れる、ショップの重心のような存在です」
「一歩足を踏み入れて、初めて出合える景色がある。隠されたストーリーを紐解くようなアプローチも、新しいブランドとつながる時間を豊かで印象的なものにしてくれるはずです」
いまを生きる人のライフスタイルに寄り添いながら、普遍的なウエアを追求し続けるMOMOTARO JEANS。経年変化を「人生の証」と捉えるブランドと、その世界観を表現したASによる新店舗は、今日もさまざまな欅の影を映し出しながら福岡の街に溶け込んでいる。
MOMOTARO JEANS FUKUOKA
住所: 福岡県福岡市中央区大名1-5-2
営業時間: 11時〜20時
TEL: 092-707-7701
