【草間彌生の巨大な石の南瓜】箱根に新公開、彫刻の森美術館で巡る初夏のアート旅

  • 文&写真:はろるど
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草間彌生『われは南瓜』 2013年 ©YAYOI KUSAMA, Courtesy of Ota Fine Arts 

草間彌生による数少ない石彫作品『われは南瓜』が、神奈川県箱根町の彫刻の森美術館にて新たに公開されている。緑豊かな屋外展示場に佇むその姿は、風景と美しく響き合いながら、草間作品ならではの強い存在感を放っている。『われは南瓜』を手がかりに、彫刻と自然が共存する彫刻の森美術館の見どころを巡りたい。

水玉のモザイクタイルが彩る、『われは南瓜』の新たな展示エリア

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彫刻の森美術館の屋外展示場。展覧会や常設作品は90〜120分ほどでも鑑賞できるが、屋外展示を歩き、カフェや足湯まで含めて味わうなら、半日ほどかけてゆっくり滞在したい。

箱根湯本駅から登山電車に揺られること約40分。山あいを縫うように走る列車が小涌谷を過ぎると、車窓の右手に、なだらかな丘に彫刻が点在する風景が現れる。1969年に開館した彫刻の森美術館は、日本初の野外美術館。約7万㎡におよぶ広大な屋外展示場には、オーギュスト・ロダン、ヘンリー・ムーア、ジョアン・ミロなど、近・現代美術を代表する作家たちの作品約120点が常設展示されている。

エントランスを抜け、円形広場へと歩みを進めれば、目前には箱根の山々の連なる雄大なパノラマが広がる。今回、新たに『われは南瓜』が展示されたのは、ピカソ館の手前、カフェ(The Hakone Open-Air Mueum Café、2階は丸太広場 キトキ)に隣接するエリア。足元には鮮やかな水玉のモザイクタイルが敷き詰められ、周辺の植栽やランドスケープも作品に呼応するように整えられた。---fadeinPager---

「愛はとこしえ」のメッセージを込めた、草間彌生初の石彫作品

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草間彌生『われは南瓜』 2013年 ©YAYOI KUSAMA, Courtesy of Ota Fine Arts 2025年まで彫刻の森芸術文化財団が監修する「丸の内ストリートギャラリー」(東京)にて展示されていた『われは南瓜』。彫刻の森美術館への新収蔵に伴って、丸の内のビル街から箱根の緑の中へと移された。

草間は1962年に布などで作られた「ソフト・スカルプチャー」を発表して以来、多様な素材で作品を手がけてきたが、本作は初めて石で作られた記念碑的な作品だ。私はかぼちゃとなぞらえた草間にとって、南瓜は単なるモチーフでなく、自らの分身ともいえる。それと同時に反戦や平和への願いとともに、「愛はとこしえ(永遠)」というメッセージも込められている。草間の石彫作品を国内で鑑賞できるのは、ここ彫刻の森美術館のみとなる。

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新たに作られたベンチエリア。左奥に『われは南瓜』が見える。右の建物の1階にカフェ「The Hakone Open-Air Mueum Café」、2階に「丸太広場 キトキ」がある。

この『われは南瓜』の展示エリアともに新設されたのが、作品を見下ろす位置に作られたベンチエリアだ。設計を担ったのは「丸太広場 キトキ」や「森の足湯」などを手がけたトラフ建築設計事務所。「草間作品とひとり静かに向き合う、囲われた秘密のガーデン」をコンセプトに、木漏れ日の中で、座ってゆったりと作品を眺められる空間を演出している。ベンチは地面にやや沈み込むように配置されているため、ランドスケープと一体化し、自然の中に身を預ける感覚を味わえるのも魅力だ。

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草間彌生『南瓜』 2017年 ©YAYOI KUSAMA, Courtesy of Ota Fine Arts

カフェと2階の「丸太広場 キトキ」もぜひ立ち寄りたい。関連企画として、草間作品のインスタレーション展示を期間限定(11月1日まで)にて実施。南瓜をモチーフとした赤と白のバルーンを中心に、草間作品を象徴するドットが空間いっぱいに広がり、まるで作品中へ入り込んだような気分を味わえる。なお「丸太広場 キトキ」には、箱根の間伐材を使用した彫刻のような家具が点在し、有機的な木のフォルムが草間の水玉と不思議な調和を見せている。---fadeinPager---

歩くたびに景色が変わる、彫刻の森美術館の屋外展示

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ニキ・ド・サン・ファール『ミス・ブラック・パワー』 1968年 FRPで作られた巨大な女性像のシリーズの「ナナ」。この作品もそのひとつ。画像提供:彫刻の森美術館

広大な屋外展示場では、箱根の地形や起伏を生かしたランドスケープの中に、多彩な彫刻作品が点在する。芝生を抜け、木立の間を歩くたびに視界がひらけ、作品と一体となった光景に出会えるのも、この場所だからこその醍醐味だ。

ニキ・ド・サン・ファールによる『ミス・ブラック・パワー』は、高さ5メートルにも及ぶ巨大な女性像。白や赤、黄など色鮮やかなドレスを着て、緑を背景に力強くそびえ立っている。一方でアントニー・ゴームリーの『密着 Ⅲ』は、両手両足を大きく広げた人物が、地面に伏せる様子を表した彫刻作品だ。身体の根源的な力強さを感じさせながら、無防備ともいえる姿にユーモラスな印象も与えられる。

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ジュリアーノ・ヴァンジ『偉大なる物語』 2004年 その左奥には流政之の『風の刻印』(1979年)が見える。

イタリアの彫刻家、ジュリアーノ・ヴァンジによる『偉大なる物語』は、青空にもよく映える白大理石の彫刻だ。洞窟で膝を抱えてかがむ男や、寄り添う恋人の顔などが刻まれ、人間の存在とその意味や人生の物語などを浮き上がらせている。---fadeinPager---

ピカソ館から体験型アート、足湯まで。箱根で味わうアートな休日

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ピカソ館とフェルナン・レジェの『歩く花』(1952年)

こうした屋外展示場の野外彫刻だけでなく、ピカソ館やアートホールといった室内展示場の作品も見逃せない。ピカソ館では現在、創作モチーフからピカソ像を読み解く「ピカソの原動力」を開催中。セラミックを中心に、平面やタピスリーなど約130点ものピカソ作品を鑑賞できる。またアートホールの「名作コレクション」では、モディリアーニやジャコメッティ、それに朝倉文夫や舟越保武など国内外の彫刻家の作品を紹介している。

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トラフ建築設計事務所と園田慎二建築設計事務所がデザインを担った「森の足湯」。より手軽に温泉を楽しめる「手湯(てゆ)」も併設している。

彫刻の森美術館を歩いていると印象的なのが、子どもたちの生き生きした姿だ。作品の中を登ったりして自由に遊べる「ネットの森」や、体験型作品を配した休憩エリアの「ポケっと。」など、身体を動かしながらアートに親しめる空間も充実している。そして館内を存分に巡った後は、2024年にリニューアルを果たした「森の足湯」へ。敷地内から湧く源泉に足を浸しながら、山並みをゆったりと眺める時間は、箱根の美術館ならではの贅沢な締めくくりとなる。

草間彌生『われは南瓜』


彫刻の森美術館
住所:神奈川県足柄下郡箱根町二ノ平1121
開館時間:9:00〜17:00(最終入館16時半まで) 
年中無休
入館料:大人2,000円 他
https://www.hakone-oam.or.jp/

はろるど

アートライター / ブロガー

千葉県在住。WEBメディアを中心に、アート系のコラムや展覧会のレポートを執筆。日々、美術館や博物館に足を運びながら、作品との出会いや発見をSNSにて発信している。趣味はアートや音楽鑑賞、軽いジョギング。そしてお酒を楽しむこと。

はろるど

アートライター / ブロガー

千葉県在住。WEBメディアを中心に、アート系のコラムや展覧会のレポートを執筆。日々、美術館や博物館に足を運びながら、作品との出会いや発見をSNSにて発信している。趣味はアートや音楽鑑賞、軽いジョギング。そしてお酒を楽しむこと。