
沈没から1世紀以上――いまだ語り継がれる悲劇の記憶が、“現物”として再び脚光を浴びている。
1912年に起きた豪華客船タイタニック号沈没事故で、生存者が実際に着用した救命胴衣がオークションに出品され、67万ポンド(約1億4400万円)で落札された。落札予想額は約5000万円から約7000万円とされていたが、それをはるかに上回る結果となり、歴史的遺品としては異例の高額落札となった。
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現存数はごくわずか 市場に出るのは史上初
この救命胴衣を身に着けていたのは、一等客のローラ・メイベル・フランカテッリさん。氷山衝突直後の混乱の中、彼女は救命ボート第1号に乗り込む際にこれを着用した。
さらに注目を集めていた理由は、この救命胴衣に刻まれた“証言”だ。同じボートに乗り合わせた生存者7人が署名を残している。
この品は長年、フランカテッリさんの家族によって大切に保管されてきたが、約20年前に個人コレクターの手に渡った。現存するタイタニックの救命胴衣は極めて少なく、市場に出るのは今回が初めてだという。
また、オークションを手がけるヘンリー・オルドリッジ・アンド・サン社によると、開催を前に世界中のコレクターや歴史愛好家から関心が集まっていたそうだ。
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物議を醸した当時の状況
当時22歳だったフランカテッリさんは、フランスからタイタニック号に乗船。著名デザイナーのルーシー・ダフ=ゴードンとその夫の秘書として旅をしていた。彼女は後に、「救命胴衣を着せられた時、“心配しないで”と言われた」と当時を振り返っている。
しかし、彼女が乗った救命ボート第1号は約40人の定員に対し、わずか12人で出航。報道によると、このボートが海に落ちた他の乗客の救助に戻らなかったことから、後に大きな議論を呼んだとされる。また、夫のコスモ・ダフ=ゴードンが乗組員に金銭を支払ったのではないかという疑惑も報じられ、物議を醸した。
生存者たちはその後、700人以上を救助した客船RMSカルパチア号によって救出された。クリーム色のキャンバス地にコルクを詰めたこの救命胴衣は、これまでアメリカやヨーロッパの博物館で展示されてきたが、市場に出るのは極めて異例だという。
「生存者が着用した救命胴衣で、現存するものはごくわずか。多くは博物館に収蔵されており、売買される機会はほとんどない」と、競売人のアンドルー・オルドリッジ氏は語る。
SNSでは「歴史の一部がそのまま残っているのがすごい」「博物館にあるべきでは」といった声のほか、「この値段でも欲しい人がいるのが驚き」といった驚きや疑問の声も見られている。